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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第19回

『上海川辺日港精密塑料有限公司  古俣 学 董事・総経理インタビュー!』2014/6/30


 
上海川辺日港精密塑料有限公司
董事・総経理 古俣 学 氏

  ● 部門間の情報共有と「6S」推進で進化続ける「現場力」

  ● 土台固めした「ものづくり」で次のステージへ

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

「品質第一」をモットーに、金型製作から射出成形生産までを一括管理した事業展開を行う川辺製作所。その上海拠点である上海川辺日港精密塑料有限公司では、複合機ほかOA機器に使われるギヤ(歯車)の成形生産を中心に好調に業績を積み重ねています。労働コスト上昇などの経営圧力には、たゆまない「カイゼン」で克服。昨今では家電、水回りや介護用品など新たなジャンルへの市場開拓に挑みはじめています。「ものづくり」への矜持を胸に、さらなる組織の「進化」を目指す上海川辺日港。弱冠30代にして陣頭指揮に立つ古俣総経理をインタビューしました。

 

◆◆◆  【「ものづくり」 の土台を支える金型・成形業界】  ◆◆◆

(弊社)

御社グループでは、金型製作から射出成形生産までの一括管理を売りにしています。

(古俣 学 董事・総経理)

川辺製作所が設立以来、主に関わってきたのは、さまざまな機器に組み込む「歯車」の金型製作や成形です。かつてはミシン市場でカム製品では8割のシェアを占めていた時期もあります。現在は、プリンターやコピー機、あるいは複合機に使われる「歯車」の金型製作・成形に携わっています。

(弊社)

「金型・成形」と聞くと、メイドインジャパンを支えてきた業界というイメージがあります。

(古俣 学 董事・総経理)

川辺製作所の技術の根幹はむろん日本本社から発信されているものです。ただ、部品調達が日本に限定される小ロットのものや、お客様の判断で技術流出を回避したいものを除くと、香港/東莞、上海のいずれの拠点でも大概のニーズには対応できるというのが実情です。むしろ生産現場に従事する人にとっては、量産に対応できる中国工場のほうが日本工場よりも仕事を覚えやすい環境にあるといえそうです。

なお、私たち上海川辺が担当しているのは、金型に合わせた「成形」が主要事業となります。他のローカル企業では対応できない高品質、高精度な製品が売りであり、お客様の困っていることにじっくり耳を傾け、一緒に苦労し、成長と進化を続けていくことを目指しています。

 

◆◆◆  【初期稼働のたしかな見極めで「高品質」を実現】  ◆◆◆

(弊社)

業績は好調に伸張していると伺っておりますが、経営信条はなんでしょうか

(古俣 学 董事・総経理)

KAWABEグループには、3つの方針があります。「作業≠仕事」「最も優先すべきは時間」「川辺の技術・技術の川辺」が根本にあり、上海川辺日港では「技術改革」「改善共有」「失敗共有」をスローガンに挙げています。失敗を奨励するといったら語弊があるかも知れませんが、「失敗を開陳する」 ことをルール化しています。すなわち、失敗を「カイゼン」につなげるための「事例報告」の機会とするのです。

もちろん、トラブルの再発は防止しなければなりませんが、失敗事例にも良い部分があればそれを指摘し、社内の掲示板にレポートとして張り出しているのです。

各部門間の責任者の間でも、隠しごとをすることなく公明正大に情報交流しようという空気が行き渡っています。ひとたび問題が起きれば、部門長が集まって対策会議をすぐに開くことを習慣づけているのです。

また、年に一回開催される「KAWABE改善発表会」では、日本本社、上海拠点から選抜されたメンバーが参加し、お互いの事例発表をとおして情報共有と成果の確認を行っています。そして、参加者は各拠点に報告内容を持ち帰って、改めて総括を行うのです。

(弊社)

グループ一体で「カイゼン」に取り組んでいるのですね。

(古俣 学 董事・総経理)

弊社の売りは量産トラブルが非常に少ないことです。それを可能にしているのは、過剰な品質管理ではなく、量産化に入る前の立ち上げ、いわば初期稼働でたしかな見極めをしていることによります。そこに「KAWABE」独自のノウハウがあり、工程内不良の減少、量産時のばらつきの抑制、歩留まりの改善につながっています。

(弊社)

品質向上にはライバル企業も努力しています。競争は激しくありませんか。

(古俣 学 董事・総経理)

ローカル企業が力をつけていくことに、いちいち動揺してはならないと思っています。つねに備えをして、自分たちはもっと高みを目指していくべきでしょう。

おかげさまでお客様から高い評価をいただき、表彰も受けています。工場見学を申し込まれることもあります。そうすると、従業員の一部には渋い顔をする人がでてくるんです。自分たちのノウハウが持っていかれるんじゃないかと。そこで、「君たち、簡単に真似られるぐらいの仕事しかやっていないとしたら恥ずかしいじゃないか。もっと堂々と構えてくれよ」と発破をかけることにしています(笑)。

 

◆◆◆  【「現場力」の向上と強い組織づくりのために】  ◆◆◆

(弊社)

熟練工の育成など悩みをかかえる製造業の方も少なくありません。御社ではいかがでしょうか。

(古俣 学 董事・総経理)

おっしゃるように、技術職の人材が仕事を覚え、一人前になった頃、給与の大幅アップがなければ離職したいという意向を伝えてくるケースがあります。しかし、一人の人材の要求をのむことは、経営全体に関わってくるため、給与面への不満が離職理由ならそれはやむを得ないと割り切るようにしています。

それでも、弊社の人材定着率は高いほうです。離職率はざっと2%程度。勤続10年の従業員も数名います。決して給与水準は高くありませんが、福利面で従業員の要望にできるだけ応えるように努めていますし、「ものづくり」の醍醐味を従業員に知ってもらうための環境整備にも心がけています。

人事制度については、08年に労働契約書、企業規則を見直し、法律で明確になっていなかった細かい部分を従業員と共にクリアにいたしました。しかし「カイゼン」の余地はまだあり、毎年のように従業員と協議をし、制度の改定を行っています。永年勤続に対する制度の設定や健康診断の実施、特別休暇の設定などの仕組みづくり、あるいは慰労会や忘年会、社員旅行の実施、高温手当の支給などです。

(弊社)

労働コストは上昇していきそうですね。

(古俣 学 董事・総経理)

労働コストの比較でいうと、東莞を1とすると上海が1.3です。この差は今後どんどん縮まっていくのかも知れません。しかし、さらに生産活動を効率化していくことは可能です。これまでも、ざっと年間50万元におよぶ労働コストの上昇分を「カイゼン」で抑制してきました。

原料を少なく、残業を少なくするという工夫以外にも、技術力を向上するために新たな発想が求められます。それは、先輩に教えられる指導を受けることで得られる場合もありますし、逆に、教える側が情報を発信することで学べるものもあるはずです。従業員それぞれが力をつけ、強い「人財」になっていくことが求められます。

 

◆◆◆  【無限の発展空間をすべての社員に】  ◆◆◆

(弊社)

「ものづくり」と聞くと、「職人」芸のようなイメージもあります。実際はどうなのでしょうか。

(古俣 学 董事・総経理)

製造業というのはまさしく機械を相手にした仕事になりますが、「機械も生きもの」であることを実感するケースは少なくありません。日々の点検や管理、扱い方をおろそかにし、たとえば機械が十分に温まらないうちに稼働させて、トラブルにつながることもあります。その微妙な勘所は担当の技術者でないとわからないものもあるでしょう。

気をつけなければならないのは、ものづくりで不良品を出したら、それが連鎖的に広がってしまうことです。生産計画や時間のロス、想定外の残業、購入品の増加、突発事故の発生など社内に混乱をもたらすのみならず、顧客やグループ会社、そのほか提携先や関連会社に大変な迷惑をかけてしまうのです。私たちの事業活動は自社の利益追求だけのものであってはならず、社会全体に影響を与えていることをわきまえなければいけないでしょう。

(弊社)

そういえば、御社のスローガンは「会社は公器」でした。

(古俣 学 董事・総経理)

大きなトラブルの発生を防ぐためには、 「現場力」を向上させ、強い組織づくりを目指していくことが肝要になってきます。管理面でも、個の力だけでは対処できないことは皆で協力しあい、さまざまな要求をクリアし一歩でも上に進む努力をしていくべきでしょう。

弊社には5つの部門がありますが、部門間の横のつながりを重視しています。各部門責任者が日々の情報交換をこころがけ、リーダーシップを発揮し、率先して従業員を指導していくのです。人事評価制度についていえば、一年に一回、査定を行っていますが、一人の社員に対して複数の管理者の意見を取り入れるなど公平な評価を心がけています。男女の別なく、誰もがトップを目指せる風土が上海川辺日港に浸透しているのです。 

なお、総経理である私にも大きなプレッシャーが科されます。周囲からは会社のこと、経営のことなら何でも知っていると思われ、質問を受ける立場におかれがちです。それゆえこちらも必死になって勉強します。一方で、どうすれば皆が楽しく働くことができ、人員が安定し、定着率が上がるのか、業績をあげ想定外のことが起きたとしても即対処できる組織にするにはどうすればよいのか等々、常に考えを巡らしています。

 

◆◆◆  【「会社は公器」をモットーに】  ◆◆◆

(弊社)

清掃ボランティアの取り組みを計画されているそうですね。

(古俣 学 董事・総経理)

弊社では、「6S」【(整理(Seiri)、 整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(しつけ:Shitsuke)、安全(Safety)】を推進しています。1カ月に1度、部門長と管理職、出向者で工場周辺を巡回し、率先してゴミを拾うなどしています。

もっとも、この延長上での発想というよりは、むしろ「会社は公器」であるというモットーから、これとは別にCSR活動への取り組みを計画しています。たとえば老人ホームに出向いて掃除を行うなど、どんな関わりかたができるのか、いま地域政府と協議中です。

かりに生産活動が閑散期に入った場合でも、従業員に無意味な時間を過ごさせるのではなく、むしろ残業代や休日出勤手当を支払ってでも地域への貢献してもらえたらというのが、こちらの意図です。

(弊社)

ユニークな発想ですね。チャイナ+1のトレンドが色濃くなっていますが、むしろ中国事業はさらに拡大されていく計画でしょうか。

(古俣 学 董事・総経理)

競合企業がタイやベトナムへと生産シフトしていったことで、逆に需要の隙間を埋めるべく、弊社に発注していただいたケースもありました。中国市場にはまだまだ発展空間があると思われ、新たな試作品、たとえば金属を樹脂に変更したいといったニーズや、あるいは主要ターゲットとしてきたOA以外への展開も考えられるでしょう。水回りや介護ベッド、家電など、弊社にとっては市場の裾野が広がっているという実感さえあります。

川辺製作所設立から今年で60周年を迎えました。「MADE IN KAWABE」への矜持をもちつつ、自己満足ではなく顧客満足を目指したものづくりに向けて、今後も挑戦を続けたいと思います。 (了)

 

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 【古俣 学(こまた・まなぶ) 氏のプロフィール】

 上海川辺日港精密塑料有限公司 董事・総経理。東京都大田区出身。
1995年、株式会社川辺製作所に入社。東京本社の勤務を経て、2000年にKAWABE SUNPORT CO.,LTD香港/東莞に勤務、現地で営業技術などに携わる。06年にいったん帰任、同年9月より1年半、長野事業所の勤務となるが、08年より香港・東莞拠点に復帰。2010年からは上海に駐在。4月より現職。

 

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 【上海川辺日港精密塑料有限公司 様 会社情報】

上海川辺日港精密塑料有限公司
中国上海市嘉定工業区葉城路1630号 第7棟
Tel:(86)21-6952-4399
Fax:(86)21−6952-0668
http://www.kawabe-ss.com/

 

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