ホーム > クローズアップ > 聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第51回

聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第51回

『富士フイルム(中国)投資有限公司 武冨 博信 総裁 インタビュー!』2018/4/28


 

富士フイルム(中国)投資有限公司
武冨 博信 総裁


  ●  長寿企業-イノベーションこそ生命力

  ●  グローバル企業に求められる人材とは-英語力は必須

 

(弊社インタビュアー)(以下中智)

日本企業というと、まず長寿企業が多いというイメージがあります。「経営」を「継栄」とするには、時代に合った製品やサービスを創りだすイノベーション力が不可欠です。富士フイルムの84年間の歴史は、イノベーションの歴史であり、“Value from Innovation” をスローガンに、本業消滅の危機を乗り越え、革新的な「技術」「製品」「サービス」を生み出し続けています。その富士フイルム(中国)でトップを務める武冨 博信 総裁にインタビューしました。

 

◆◆◆  本業消滅の危機を「第二の創業」で乗り越える   ◆◆◆

(中智)

富士フイルムグループの沿革についてお聞かせ下さい。

(武冨総裁)

当社は写真フイルムの国産化を目指して1934年に設立され、今年で創業84周年になります。設立当時から一貫して、変化する時代の先を読み、幅広い技術を蓄積・進化させ、イノベーティブな製品・サービスを提供してきました。
ご存じの通り90年代後半から進展したデジタル化の波が会社を襲いました。2000年をピークに、主力商品であるカラーフィルムの需要が急速に減少し始め、「第二の創業」と言われた社運をかけた大規模な事業構造の転換がスタートしました。

(中智)

主力事業がほぼ消えてしまうというのは、特に御社の様な世界的な大企業にとっては、絶望的な状況に思えます。どの様に「第二の創業」を乗り越え、再び成長軌道に乗ることができたのでしょうか。

(武冨総裁)

写真事業を中心に工場や流通パートナー等の再編が行われましたが、それと同時にこれまで写真事業で培った技術の棚卸し・整理を行い、それらを活用できる新たな事業領域を模索し続けて来ました。そうしたプロセスを経て写真事業に代わるいくつかの新規事業を立ち上げ今日に至っています。新規ビジネスは人材確保も含めて苦労の多いプロセスだと痛感しております。現在写真フイルムの売上げはピーク時の1%にまで低下しています。

(中智)

確かに、今では富士フイルムと聞いて、何をメイン事業とする会社かイメージが湧きにくいですが、現在ではどの様な事業を行っていますか。

(武冨総裁)

従来からのイメージングソリューション事業のほか、現在は「ヘルスケア」「高機能材料」分野のインフォメーションソリューション事業と、「ドキュメント」ソリューションの3つの事業分野を軸に、成長戦略を推進しています。
「ヘルスケア」の分野では、人々の健康に関わる「予防」「診断」「治療」の3つの領域において放射線機器、内視鏡、医薬、再生医療等のビジネスを展開しています。「高機能材料」の分野では、長年にわたり写真フィルムで培った技術を展開し、液晶ディスプレイやさまざまな製品に付加価値を与える産業用途の材料を供給しています。そして「ドキュメント」の分野では、子会社の富士ゼロックスを通してオフィス向けのデジタル複合機、プリンターの提供や高速・高画質のデジタル印刷システム及び関連サービスなどを提供しています。

(中智)

本業消滅という危機を乗り越え、現在では世界有数の企業へと変貌を遂げました。

(武冨総裁)

そうは言っても、写真事業は、今でも私たちのルーツであり「祖業写真」であると思っています。デジタル化にともない、枚数を気にすることなく写真を気軽に撮ることができるようになりましたが、膨大な写真データからベストショットを選び出す手間がかかり、写真データがパソコンやクラウドに保存されたままになっているケースが多いと思います。せっかくの思い出の写真をそのままにしておくのはもったいない。そこで膨大な写真データから人工知能を使いベストショットの写真を選び出し、フォトアルバムを作成するサービスを行っています。そのほか、世界中でリバイバル需要の旺盛なインスタントカメラ「チェキ」、デジタルカメラ「Xシリーズ」や交換レンズ、テレビカメラ用レンズを販売しており、世界で初めて4Kカメラ対応の放送用ズームレンズを商品化しました。

 

◆◆◆  グローバルビジネスには英語力が不可欠  ◆◆◆

(中智)

中国現地法人の沿革と事業内容についてお聞かせ下さい。

(武冨総裁)

中国への進出は、比較的早く1984年に北京で駐在員事務所を開設したのが最初です。本格的な事業展開は、94年で蘇州に工場を設立し、カメラ、レンズ、複合機等の生産を開始しました。01年には現在の投資公司を設立し、本格的に中国国内市場の開拓に力を入れるようになりました。現在、中国(台湾・香港含む)には10の工場を含め、29の子会社を持ち、グループ全体の社員数は約1万6650名となっています。(2016年12月末時点)

(中智)

中国での発展にともない、御社でも多くのグループ企業を中国に設立しています。この様な日系企業では最近、各グループ会社が独自で行っていた業務を統合していく流れが見られます。御社ではどの様なマネジメントを行っていますか。

(武冨総裁)

事業や構造にもよると思いますが、弊社の場合、販売、マーケティングは統括販売会社が一括統合管理、生産や開発子会社はグローバル市場を対象としているので本社事業部が直接マネージする方法を取っています。ただし、法務関係や教育など統括会社がまとめて行った方が効率的な業務については、統括会社しています。

(中智)

中国ではどの様な製品を製造販売していますか。

(武冨総裁)

本社の事業はほぼ全事業、中国市場に進出しています。カメラやTV局レンズ、写真用印画紙、医療用フイルム、医療用機器、産業材料、オフセット印刷用プレート、デジタル印刷機、記録メディアなど多岐にわたり、販売する製品の半数は中国で生産しています。中国の売上げは、グループ全体売り上げの10%を占め、国別ではアメリカに次いで大きな市場となっています。

(中智)

富士フイルム(中国)では、グローバル人材の育成にも取り組んでいるそうですが。

(武冨総裁)

今後は世界中どの国や地域に行っても課題を具体化し周囲を巻込み実行責任を負う自立した事業運営ができる人材が必要とされると思います。例えば、アメリカ人社員が中国に駐在したり、中国人社員がアメリカに駐在したりしてもいいわけです。そのために、中国法人でもできるだけ英語化すべく取り組んでいます。コミュニケーションツールとしての英語は必要性が益々高まると思います。
将来的に、幹部クラスは日本人も含めてボーダーレスが進むと思います。英語を基本とし主体性を持った幹部クラスの育成が課題です。

 

◆◆◆  駐在員の役割は本社とのブリッジング  ◆◆◆

(中智)

現地化への取り組みを進めるなかで、日本人駐在員の役割についてどの様に考えますか。

(武冨総裁)

中国人社員が自分で課題を発見し、解決策を考えて実行できる会社にしないと、本当の現地化は実現できません。当社の場合、まだ日本人が牽引する状態から脱皮しつつありきれていないのが現状です。全事業の牽引役である事業長を中国人幹部社員に任せることを目指しています。
駐在員の役割はどこにあるのかというと、本社とのブリッジング役だと思います。中国人社員が前線に立って事業を牽引するようになっても、全ての事業が中国にある訳ではなく、事業の方向性など本社との橋渡しが必要不可欠です。中国でやりたい事業を本社に伝え、必要な支援を取り付けることが日本人駐在員の役割だと考えます。
本社指示が先行する組織は、真のグローバル化を果たし得ないと思います。現地社員に活気があり、中国のお客様はこうなんだと、日本とは違う点を積極的に本社に発信する。本社と海外現法が活発に議論しお互いの責任を果たす形を作っていきたいと思います。

(中智)

武冨総裁は、海外でも特に欧米での勤務経験が豊富です。欧米人と中国人または日本人を比べ、仕事に対する考え方や取り組み方にどの様な違いを感じますか。

(武冨総裁)

仕事に対する考え方では、欧米人だから、中国人だからどうだという違いは思い浮かびません。主体性を持ち、自分で課題を見つけ、解決策を考え、自ら実践するサイクルをきちんと回せる人は、どこの国にもいて、その様な人材が、リーダーになっていきます。
生活スタイルは異なるかもしれません。欧米人は夜遅くまでオフィスで働く様なことはしません。夕方は早く帰り、子供をお風呂に入れ、奥さんと会話を楽しみ、家族の義務を果たしてから、夜の9時頃から自宅で仕事を再開します。欧米人は早く帰って楽だろうと羨むなんてとんでもない。彼らは家族との義務をきちんと果たしたうえで夜中まで働いています。中国人も家族と仕事を両立していると感じます。その点、日本では、仕事だといえば何でも許される文化が我々世代にはまだ残っており、遅くまでオフィスで残業し、子供の世話は奥さん任せになっています。(笑)

 

◆◆◆  人を豊かにする仕事それ自体が社会貢献  ◆◆◆

(中智)

御社は、CSR活動に積極的に取り組んでおられるそうですが、取り組みについてご紹介ください。

(武冨総裁)

当社では、企業活動とCSR活動は同一であるという考えから、それぞれの事業が、どういう側面で社会に貢献しているのかという事を常に考えています。人を豊かにする仕事それ自体が社会貢献になることが理想です。通常の企業活動がSustainableな社会の実現に貢献することという考えです。加えて中国においては、内モンゴルでの植林緑化事業、貧困地区の児童へのデジタルカメラの寄贈や写真を通じた文化教育活動、無料の乳がん検査活動など、様々な活動に取り組んでいます。

(中智)

日本には古くから、売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方よし」という言葉があります。これは、売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるという意味ですが、御社は「三方よし」を実践されている会社だと感じました。

(中智)

最後になりますが、将来の在中ビジネスにおける展望をお聞かせください。

(武冨総裁)

中長期において持続発展する会社にすることです。そのためには、ローカル幹部が主体性を持ち、経営のサイクルを回せる組織にしなければなりません。それと同時に、本社にも、もっと目を向けてもらえるよう中国側から積極的に情報を発信し、グローバルオペレーションの中での位置付けを明確にさせていくこと、そして事業のポートフォリオを管理し、中国においても新規事業をどんどん起していくことが、私の課題だと考えています。

(中智)

長時間ありがとうございました。武冨総裁は、昨年中国に赴任し、中智で経営異文化研修を受け、中国人社員育成に関わるすべての活動やイベントに、熱心に参加していただいています。早く中国人社員のことを理解し、現地化グローバル化の推進を積極的に進められ、中国赴任10ヶ月で、中国事業の大きな発展に貢献されていると思います。
さる4月12日、中国医学映像AI産学CAIMIに、富士フイルムは理事企業として参加されました。お話しを聞いて、実は長寿企業だからこそ、イノベーション力が強いのだと感じました。これからも変化の激しい時代に、「技術」「製品」「サービス」のリーディングカンパニーであり続けることを期待します。

 

------------------------------------------------------------------------------------

 【武冨 博信(たけとみ ひろのぶ) 氏のプロフィール】

慶応大学卒業後、86年に富士フイルム株式会社に入社。富士山の麓にある富士宮工場を皮切りに、32年間の富士フイルムでのキャリアを歩み始める。 94年に米国で使い捨てカメラ「写ルンです」のシェアを拡大するため米国駐在を命じられ渡米。当時、製品は日本からの供給で、リードタイムが長く、パッケージデザインも米国人の好みにあわせて細かく変える必要があると判断し、現地生産が決定され現地工場の生産管理を任された。生産の現地化により米国でのシェアを倍増する事に成功。2002年に日本に帰任するも、再び米国、英国と駐在し、2017年6月から現職に就任し現在に至る。32年間の社会人生活のうち、およそ半分は海外で勤務している。

 

武冨 博信 総裁1
小林 重夫 総裁1

武冨 博信 総裁2
小林 重夫 総裁2

  
 武富総裁が中智「経営異文化研修」での発表風景
武富総裁が中智「経営異文化研修」での発表風景

インタビュー現場風景
インタビュー現場風景