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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第63回

『サイボウズ株式会社 青野 慶久 代表取締役社長 インタビュー!』2019/8/30

<strong><font style="font-size:19px">サイボウズ流イノベーションを生み出す人事制度 </font></strong>

サイボウズ流イノベーションを生み出す人事制度

<strong><font style="font-size:19px">——サイボウズ株式会社 青野 慶久 氏</font></strong>

——サイボウズ株式会社 青野 慶久 氏


 

サイボウズ株式会社

青野 慶久 代表取締役社長

 

1971年生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工を経て1997年にサイボウズを設立する。2005年4月代表取締役社長に就任、18年1月からは代表取締役社長兼チームワーク総研所長に就任、社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを歴任し、CSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。

終身雇用の崩壊、少子高齢化、人生100年時代など、社会環境が急速に変化を続ける中、仕事の在り方・働き方も変化させなければならないという考えから、サイボウズ上海の主催で「CHANGE」をテーマとしたフォーラムが8月2日に上海で開かれました。中智日本企業倶楽部の会員企業代表も多く参加されたこのイベントで、基調講演を行ったサイボウズ株式会社代表取締役社長の青野 慶久氏にインタビューしました。



 

◆◆◆ 情報共有がチームワークの風土を強化する ◆◆◆

サイボウズ株式会社は、グループウェアの開発、販売、運用を主要事業とするIT企業で、1997年に26歳でパナソニックを退職した青野氏が仲間と3人で創業した。百年企業が珍しくない日本企業の中では、比較的若い企業といえる。

優れた商品とサービスが多くの企業に支持され急成長を続ける同社だが、先進的でユニークな人事制度でも注目を集めている。同社は毎年、チームワークをテーマにした「Cybozu Days」というイベントを上海で開催している。今年は、「CHANGE」をテーマに、中国での働き方の変化を「社会」「マネジメント」「人材」の3つの観点から中国で活躍する企業の代表者を招いた講演やパネルディスカッションが盛大に行われ、中智上海公司から日本企業倶楽部の馮串紅部長がゲストのひとりとして講演を行った。

開催に先立ち「Cybozu Days」の基調講演を行った青野社長が社員間の情報共有の重要性を強調していたのが印象的だった。

情報を共有するメリットについて、「社内の誰もが経営者と同じレベルの情報に自由にアクセスできるようになれば、一人ひとりが経営者の視点に立って、主体的に物事を考えられるようになります。経営メンバーが議論している事業戦略は、意思決定前の段階から公開されているので、一般社員からフィードバックをもらうこともあります。それは戦略の精度を高めることにつながっています。」と青野社長は言う。


 

◆◆◆ 「100人いたら100通りの働き方」があってよい ◆◆◆

現在、同社の離職率は約5%とIT業界にあって、非常に低い水準を実現している。しかし、改革前は離職率の高さに悩んでおり、2005年には離職率が28%まで上昇した。「長時間労働の問題、勤務場所の問題、給与の問題など、様々な原因があったと思います。その時、人それぞれ違う問題意識を把握し、それぞれ個別に対応していく必要性を感じました。」と青野社長は当時を振り返る。

現状に危機感を覚えた青野社長は、これまで採用していた日本の伝統的な人事制度の改革に乗り出した。「従来の人事制度が時代に合わなくなっていると感じました。工業製品を大量生産して稼ぐ時代では、均質的な労働者を均質的に働かせることが競争優位に働いたと思います。しかし、新興国の近代化が進む中で、日本は多様な個性を重視した人事制度が必要になっています。」

そこで「100人いたら100通りの働き方」の実現を目指し、人事制度改革に着手する。社員からの要望があれば、その都度、可能な限り人事制度に取り入れ、働く時間や場所の選択、副業の自由化、育児休暇の最大6年間の取得など、社員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を選択できる人事制度を作り上げてきた。「働く時間や場所を選べるだけでなく、複業(副業)も自由にできます。社員が複業にチャレンジすることで、新しい知識を身に付け、人脈を獲得し、自立心を養うことにつながっていると感じます。」と青野社長は言う。働き方を尊重する人事制度は、離職率の低下だけではなく生産性の向上やイノベーションの創出にもつながっている。

同社は海外にも積極的に展開しており、中国のほか米国とベトナムに現地法人を設立している。当初は、国ごとに法律や制度、文化の違いがあるため、制度を使い分けていたという。しかし今後は、「働き方の多様化」や「チームワーク」をより意識する、という大きな方針で統一していく予定だ。



  

インタビューの最後に、同社のビジネスの展望について尋ねた。「情報共有の文化を広げ、世界中のチームワークを高めていきたいと思います。中国でも必ず成功させ、より多くの人たちが楽しく働ける社会を創りたいですね。」



  

【中智からのコメント】

中国でも、在宅勤務やモバイルワーク等、柔軟な働き方へのニーズが、特に若い世代において高まってきています。また中国は日本と比べ、女性の社会進出が進んでいると言われていますが、しかし多くの家庭において実際の子育てを両親に頼っているのが現状です。晩婚化と定年退職年齢の延長が進めば、これまでの様な両親に頼る子育てが難しくなることが予想され、企業として子育てをしながら働く女性をどうサポートするかが大きな課題となってくるでしょう。そのような状況下においてサイボウズ社の「100人いたら100通りの働き方」の発想は、非常に参考になるものと感じました。