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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第2回

『大阪市政府上海事務所安井所長にインタビュー!』

取材日:2013年2月4日


大阪市政府上海事務所
所長 安井 良三氏

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

 本日はお忙しいところ、弊社メールマガジン掲載の人物インタビューを快くお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。

 1974年4月18日に、大阪市友好訪中団・大阪「日中友好の船」、両団体が上海市を訪問されて以来、大阪市・上海市友好都市提携が築かれてきました。それ以降、大阪市と上海市の間では様々な分野において良好な人的交流があると伺っております。そしてその長い交流の中で、現在、世界のビジネスシーンのなかで最も競争が激しい、ここ上海でご活躍なさっています大阪市政府上海事務所安井所長に日頃の激務や中国でのエピソード等をインタビューさせていただきたいと思っております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 大阪市と上海市は盛んな人的交流をなさっていると伺っております。教えていただけますか。

 

(安井所長)

 1992年から大阪市と上海市は人的交流を行っています。私が初代交流員として、上海に参りました。上海市の外事弁公室から派遣された職員が大阪に常駐しており、継続的交流の中で、非常に良い関係を築いています。上海市職員が大阪市役所で1年間働いた後、上海に戻り、外事弁公室等に勤務しており、今までの交流による相互信頼があるため、業務を円滑に進める上で大きく役立っております。最近は大学の先生、民政局、商務委員会の職員の方とも人的交流を行っています。

 

弊社

 安井所長と中国との出会いを教えてください。

(安井所長)

 出会いというような大げさなものではないですが、大学生の頃、先輩が中国語を勉強しており、その先輩に伴って中国の方を嵐山へご案内する機会がありました。それをきっかけに中国語を勉強するようになりました。嵐山には周恩来・元国務院総理が、留学中に作成したといわれる「雨中嵐山」の石碑があり、中国の要人が関西を訪問した際にこの碑を訪れる方が多く、現在も中国人観光客の訪問も多い場所です。

 

(弊社)

 中国語はどちらで勉強されましたか。

(安井所長)

 日中友好協会と市役所の中国語講座で学びました。1987年に北京外語大に1ヶ月の語学研修に、また、1992年に上海外国語学院で1年間中国語を学びました。そして大阪に戻った後、最初は中国とは関連性が少ない中央卸売市場の管理畑で経理を担当していました。その後、国際交流部門で四年間働いた後は秘書課での勤務が長く続きました。その中では様々な人との出会いもあり、また、勤務を通じて仕事の際は迅速且つ、真摯に対応するということを学びました。

 

(弊社)

 中国に来られた時の印象と現在の印象は変わられましたか?

(安井所長)

 20年前に最初に来た時の印象は、私にとって今も懐かしい良き思い出です。あくせくせずに、ある意味でのんびりしたところがあったように感じていました。時代は大きく変わり、この20年間で中国は拝金主義の風潮がかなり強くなったのではないでしょうか。今の中国は時代に追われているような感じがします。ビジネスの世界でも、非常に短い期間、例えば、事業に関して、半年以内に成果や利益を求めるなど、非常に短いスパンで考えます。中長期的計画に基づいて会社を運営する日系企業にはやりにくいと思います。

 

(弊社)

 大阪人と上海人はよく似ているといわれますが、いかがでしょうか。

(安井所長)

 最初に上海に来た時は大阪と上海は似ていると感じました。ところが最近はあまり、似ていると感じることが少なくなってきました。私の友人や中国人にもこの点は意見の分かれるところです。いわゆる大阪商人の『もうかりまっか』の商人文化が上海人とは非常に似ているという方もいます、そうではなくて、本質的に全く違うという人もいます。今の中国は人民政府が企業を牽引していて、バブル経済期の日本的行政指導と似ているかもしれません。政府が計画を立てて、それに向けて社会を強力に牽引していると言えば語弊があるかもしれませんが、中国では政府のパワーバランスが、今では日本より強いと感じます。

 

(弊社)

 大阪市と上海市の協定内容について教えてください。

(安井所長)

 現在、大阪市と上海市の間では、毎年協定を締結し、各種の交流事業を実施しています。直近では、両市にある動物園の動物交換と希少動物等の飼育繁殖技術の交流などを実施する動物交流事業を行っており、一方の動物園にはいない動物を交換するなど、両市の市民に楽しんで頂けるような事業も実施しています。

 その他にも友好交流項目はたくさんありますが、社会福祉項目については大阪市と上海市の民生担当者が高齢化社会に向けた情報交換や交流をしています。今後、中国も高齢化社会への発展スピードが急速に上がります。そんな中、交流により構築したネットワークを活用し、中国介護市場への進出を検討している日本の介護関連企業が中国へ視察される際には中国地方政府各機関をご紹介し、施設を見学するなど進出支援をさせていただいております。

 また、大阪市事務所ではインバウンド業務、アウトバウンド業務、都市間交流事業を実施しており、インバウンド事業では中国企業・政府機関等の誘致、観光客誘致(観光プロモーション)、客船誘致(ポートセールス)、海外見本市場の誘致、関西空港プロモーション、アウトバウンド事業では在阪企業の中国進出支援、在阪企業の海外ビジネス支援、海外見本市等の出展支援、都市間交流事業では友好交流事業、ビジネスパートナー都市(香港、天津)、MOU提携都市(南京、深セン)との交流を行っています。要は、やれることは何でもやるということです。

 

(弊社)

 上海で仕事をする際に一番ご苦労されたことは何ですか。

(安井所長)

 私個人としてはここ上海で仕事を広げていきたいと考えています。ですが、少数のマンパワーを有効に活用しながら、仕事を進めていかなければならない現実もあります。その調整をしながら仕事を進めなければならないことが最近の課題です。私としては上海でちょっとでも仕事が広がる可能性があるとそれに向かって猛進していきたい気持ちがある一方で、少数のマンパワーで多くの業務をこなしていかなくてはいけないという気苦労もあります。

 一方、大阪市が事務所を設置している限り、常に「成果」というものを目に見える形で上げていかなければなりません。「努力した。」という過程よりも成果・利益が求められています。そういう意味では、上海での仕事内容を大阪のほうで理解してもらうことが難しいという一面があります。

 それから、時間外は業務の一環として、どんどん外へ出て行って日本人というよりも、中国の方たちとの人脈造りのために飲みニケーションをすることが良くあります。そういうことで人脈を広げていったら、仕事ってうまく進んでいくんですね。お酒や食事を一緒にとるとその人の人と成りも分かってくると思います。

 

(弊社)

 そうですね、同感です。少々、突っ込んだご質問をさせていただきますが、中国の方とのお付き合いのなかでは、日本を好きではない方もいらっしゃると思いますが、その際はどのようにご対応なさいますか。

(安井所長)

 確かにその通り日本が嫌いな方もいらっしゃると思います。その際私は「日本のことは嫌いでも構いません。でも、大阪のことは、そして、私のことは好きになってくださいとアピールさせていただいております。(一同笑)」

 

(弊社)

 さすがですね、大阪人はタダでは転びませんね。それでは次に中国で記憶に残っているおもしろいエピソード等ございましたら、お話ください。

(安井所長)

 そう言われると、なかなか思いいたらないものなんですよね。今日もいろいろ思い起こしてみたんですが・・・。

 

(弊社)

 それでは私からご質問させていただきますが、少々物騒なお話かもしれませんが、中国では怖い思いをされた経験はございますか。

(安井所長)

 おもしろい話ではありませんが、中国と日本では交通事情が違い、例えば、上海の公共バスの運転手が大阪で同じ運転をしたとしたら、まちがいなく職を失うことになると思います。飲みニケーション後の帰宅途中、私の太くて短い足の股の間に後からバイクのタイヤがあやうく入りそうになったことはあります。中国でのバイクは皆さんご存知だと思いますが、電動ですので音がしません。近くまでバイクが来ていても、気づかないことが多々あります。その時は本当に私も肝が冷えてしまいました。

 

(弊社)

 日頃の業務の際に中国語はお使いになられますか。

(安井所長)

 業務上、中国の方と中国語で会話をすることが必要な際は、中国語を使います。相手も私が中国語で話すと喜ばれますし、上海人には、最初の挨拶一言だけでも上海語で会話をするとさらに喜ばれます。当然のことながら、中国語で話すと親密感が出て、相手との距離を縮めることができると思います。やはり、郷に入りては郷に従うことが大切だと思い、若い頃、必死に中国語を覚えたことが、少しは役に立っているのかなと思っています。

 

(弊社)

 それでは最後に大阪のアピールをしていただけませんでしょうか。

(安井所長)

 大阪は物価も安く、安心安全な町なので、観光するにも、起業してお金を稼ぐにも、そして、生活面でも人情味がありますので、心落ち着いて暮らせます。大阪に一歩足を踏み入れるとそこはもうパラダイスです。少し言い過ぎましたが。(笑)

 大阪人の人情味につきましてはうっとうしいと感じる方がおられるかもしれませんが、慣れてくるとそれが人懐こくて、そこがいいところだと感じてきます。その人懐こさが、大阪特有の人間関係のボーダレス化に繋がり、大阪弁で言えば「そこがおもろくて、ええとこや」と思います。

 是非、観光したい方、美味しいものを安く食べたい方、ビジネスしたい方も大阪にお越し下さい。ワンストップ・フルレンジ体制でお迎えいたします。

 

(弊社)

 本日は貴重なお話をお伺いすることができ、たいへん有意義でした。
大阪市政府上海事務所様の益々のご発展を心からお祈りしております。
本日はありがとうございました。