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「昇給ガイドライン」は強制力を持たず、一部企業の対応もおざなり

2010年10月5日

 「上海市2010年企業昇給ガイドライン」が先ごろ正式に発表された。それによると基準ラインは11%、上限16%、下限4%と定められた。このガイドラインを参照して、企業による昇給基準制度を構築し、賃金集団協議(工資集体協商)制度の導入による昇給率及び職務による昇給幅を確定することができる。しかし、新たに発表された昇給ガイドラインに対する企業の反応はまちまちであり、企業によってはおざなりにしたり、戸惑ったり、相対的に実施を規範化するなど、実効性を伴わない空文と見なしている企業があることが記者の取材でわかった。

 昇給に対して帰氏は特に感慨深かった。3年前、大学を卒業した帰氏は前後で4社の民営企業に勤務したことがある。かつて自分が勤めた会社は小規模で収益状況が悪かったり、創業初期段階にあったりで、社長一人で社員の給与を決めてしまい、会社は政府が発表した昇給ガイドラインに対して知らないふりをした。「毎月、契約で約定された給与が支払われ、いつ昇給するのか、また昇給幅はいくらなのかについて、4社との契約のいずれにおいても明記されなかった」と帰氏は話す。

 また、帰氏は記者の取材に対して、「自分が唯一、昇給を受けた背景には、勤めた会社が倒産し、社長が新会社を設立し、元の社員を引き止めたかったという理由があった」と述べた。帰氏のように大学を卒業して間もない新人社員はあまり給与を重要視しておらず、暫く昇給がなくても追求しないが、一部生え抜きの社員は長期にわたって昇給してもらえなかったことを理由に退職してしまった。

 一部民営企業によるおざなりな対応に対して、新たに発表された昇給ガイドラインに当惑する外資系企業も少なくない。「このごろ、社員達はよく私のところに給与相談に来る」と、浦東にあるバイオ医薬の研究?開発に携わる外資系企業の人事部マネージャー、Tracy氏は記者に対して語る。会社の慣例に従い、社員の給与調整は既に今年の3月で完了したが、新たに発表された昇給ガイドラインに照らして、一部の社員は自分の昇給幅が低いと感じた。

 当該会社の昇給基準は、社内等級に基づくだけでなく、主に前四半期の個人業績評価を参照する。このほか、更なる客観的な昇給制度の実現を図るため、労働市場の報酬調査報告、ヘッドハンティング会社の意見、及び最近のCPI動向なども重要な参照指標だという。「社員による昇給幅を比較することは当然なことであり、会社は政府が発表したガイドラインに参考するが、会社自身で制定した昇給基準も十分な説得力があり、社員は概ね理解を示している」とTracy氏は指摘する。

  国有企業は昇給ガイドラインの実施を相対的に規範化し、ある国有企業の人事部責任者は、会社は間もなく社員の給与調整を行い、昇給ガイドラインは給与総額管理の実現において重要な手段となるとの見解を示した。 このように、企業によって異なる対応に対して、上海市総工会(労働組合)の専門家は、市場経済において、業界や企業ごとの給与基準参照が不足しており、昇給ガイドラインは収入分配制度改革における優れた措置となるが、強制力を有しておらず、具体的な取り組みは各企業の収益状況に左右されるため、企業の反応もまちまちであると指摘した。

  昇給ガイドラインに対して業界の専門家は異なった見方を示している。中智人力資源諮詢有限公司の主席コンサルタントである楊氷氏は、昇給ガイドラインの実施を規範化した国有企業及び外資系企業に対して、民営の中小企業は明らかにあまり重視しておらず、関連部門は業種や職種に基づいて、タイムリーで参考価値の高い給与及び昇給基準を制定するほか、ガイドラインの実行を保障するために強力な措置を実施すべきであるとの見解を示した。