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報酬におけるコミュニケーションと従業員の報酬満足度(2013年2月15日)

2013年2月15日

 

 企業がより業績を高め良い人材を残したいならば、合理的な賃金体系の設計は必須である。これにより、従業員の公平感と満足度をより強めることができる。その程度は、従業員の報酬満足度の方が報酬公平感に比べ広範囲に渡り、深いものである。

 一般的に、賃金体系の設計には4つの基本原則がある。外部競争性、内部一致性、業務奨励性及び管理性である。最後の一項目を除き、前3者は従業員の心理にも影響が及ぶ。外部競争性とは従業員報酬満足度の底辺に当たるもので、企業全体の外部に対する給与水準は従業員全体の感触に関わる。

 また報酬の内部一致性は他従業員と比較したときの公平感に関わり、業務激励性は業務に対する評価による個人の心理に影響する。企業が設計した給与体系が従業員の業績を上げ人材を確保し、従業員の報酬に対する満足度を上げられるか否かは、賃金体系の設計が合理的かどうかのみならず、報酬設計の過程及び執行の際従業員と有効なコミュニケーション、報酬に関するコミュニケーションが取れているか否かが重要なのである。

 

 良い賃金体系とは従業員が納得ずくのものを指し、それだけでその効果を発揮する。まさに「良い酒は五臓六腑に染み渡る」のである。同時に企業は賃金体系の設計において、従業員の理解と納得を得なければならず、また人材招聘時の大きなアピールポイントとしなければならない。それが人材の引き留めと優秀な人材の招聘成功という目的を達成させるのである。資料では、報酬に関するコミュニケーションがオープンであるほど従業員の帰属意識が増し、逆に秘密主義であれば従業員に猜疑心が生まれ、結果離職という結果を招いてしまうのである。

 有効な報酬に関するコミュニケーションを実現し、従業員の満足度を上げるにはどうすればよいか?
調査によれば、90%以上の企業で以下の問題が起こっている。まず賃金体系設計の大規模改修を巡り、それが個々人の収入に大きく影響するため従業員達はそれに神経を尖らせ、上は高級経理から下は平社員、果ては掃除のおばちゃんに至るまで多くの人の注目を集めることである。

 もし従業員と有効かつ適切なコミュニケーションが取れず、幹部や人事部のみで賃金体系を制定、実施してしまうと、従業員が誰も意見できず納得できない環境下においてどれほどそれを行き渡らせても、従業員は「全ては上が決めることで、私たちは無力だ」という感覚に陥ってしまうのである。当然、従業員の満足は十分に得られない。なぜなら従業員は賃金体系設計に参加しておらず、彼らは尊重も重要視もされておらず、情報も与えられていないので、彼らは真っ先に不満を覚えるのである。

 例を挙げると、ある企業の幹部がコンサルタントに従業員の科学的評価を依頼し、企業の成長戦略をもとに研究開発部を一級部、人事部を二級部、生産管理、商務、品質管理を三級部、販売、物流、財務、庶務を四級部と戦略的に分類した。目的は成長の重点を区別することにあり、基本賃金が級毎に200元ずつ違っていただけだったが、この時従業員どころか中韓管理層も抜きにして話が進んでいたため、部門全体が不満を覚える事態となり、設計者の予想に反する結果となった。その後釈明やコミュニケーションを行うも効果は薄く、元の状態に戻さざるを得なくなった。

 

 次に報酬評価と支払いの過程におけるコミュニケーションも非常に重要である。多くの企業が毎年賃金評定を行い、全員の賃金を調整する。いわゆる一括調整は、毎年従業員個々を一括して評価し、誰の賃金をどの程度上げるかを評定するものである。この制度を制定するためには透明性が必須であり、企業は従業員とコミュニケーションを取り、従業員に賃金が上がるか否か、どの程度上がるか、それに至った状況と理由を知らしめなければならない。そうすれば、従業員は正確に賃金に関する予測ができるだろう。

 賃金の一括調整においては注意すべき点がある。一括調整は決して全員の賃金を毎年上げるものではないが、従業員全員をこの制度に組み込まなければならない。評定においてある従業員については賃金アップが認められないかも知れないが、それは評定が間違っている訳ではない。

 この問題についてもう一つ例を挙げると、例えば毎月5日や10日など、賃金は一般的に支払日が来れば「必ず」支払われるべきものだと想われている。もし支払日や支払先が明示されていなければ、毎月の賃金を楽しみにしている「サラリー族」は不満を覚えるだろう。

 もし偶然支払日が遅れれば――業績不振などで毎月12日に定められた支払日に未払いや遅延が起こったら、例え従業員に毎月一部でも支払いがあったとしても、従業員の満足度は非常に低いものとなり、その安定にも影響が出るだろう。ゆえに、企業の離職率が非常に高いのは、単純に実際の賃金水準の低さが原因なのではなく、以上に挙げた小さな事柄が原因であるかもしれないのである。

 結論として、報酬に関するコミュニケーションは企業の賃金体系設計において重要視すべきものである。その理由はただ一つ、従業員の報酬満足度を高める為である。

中智日企事業部
陳潔瑋