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【判例】従業員の「内緒の」転職が、転職先へ1万元の損害賠償をもたらす(2013年9月22日)

案件:

 転職は本来至って普通の出来事であるが、もし転職者が機密保持契約を交わしていたときは、それを厳格に守らなければならない。さもなくば、訴訟がその身につきまとう可能性がある。

 饒(じょう)某は2009 年2 月東莞市の某映像会社に営業として入社し、2009 年3 月1 日より2010 年2 月28 日まで1年間の労働契約を結んだ。双方で合意した待遇には基本賃金の他に、機密保持手当、競合避止手当、時間外手当が含まれていた。

 約8 ヶ月後、双方間にすれ違いが生じてきた。会社側によれば、会社の部門経理が怒って饒さんへ辞職を迫り、饒某は辞表を出さなかったものの2009 年12 月24 日前後より出勤しなくなった。

 饒某側は、会社側が決められた額の賃金を支払わず、2009 年12 月7 日に辞表を提出したが会社側が受理せず、賃金も支払わなかったと主張した。

 また、会社側は、饒某が労働契約を解除していない状態で、光学検査設備の生産販売を行なっている深3Wの某科学技術会社へ入社し同様の業務に従事していることは、契約に約定した競業避止義務に違反すると主張した。

 結局、会社側は饒某と深3Wの某科学技術会社へ、競業避止補償金480元と損害賠償金48480 元及びその他費用を連帯して支払うよう求めた。しかし饒某と深3Wの某科学技術会社は共に、双方間に労働関係が存在せず、損害賠償責任を負う必要は無いとの認識を示した。

判決:

 一審判決は、東莞の某映像会社と饒某との労働関係を解除し、饒某は映像会社へ違約金 1 万元の支払いを命じる判断を下した。判決後、双方共に控訴した。

 市中等法院は、饒某は東莞の某映像会社と機密保持協定を締結しており、そこに約されている機密保持と競業避止を履行する義務があるとした。ゆえに、饒某は東莞の某映像会社へ違約金を支払わなければならないとした。饒某が毎月受け取っていた機密保持手当30元と競業避止手当30元、報酬の20倍の補償金については、労働契約中約定された保障基準が明らかに公平性を欠くとして、法院は違約金計1万元の支払いを命ずるに留めた。

分析:

 饒某が深3Wの某科学技術会社と労働契約を締結していないことは、双方間に労働関係が成立していないこととイコールではない。また、同社は饒某を招聘する際、饒某が他企業と労働関係を結んでいたか否かを合理的にチェックする義務を果たしていない。ゆえに、「中華人民共和国労働契約法」第九十一条規定により、深3Wの某科学技術会社は饒某の違約行為について連帯責任を負わなければならない。

 使用者は招聘前に、新人の「潔白」を調査しなければならないのである。

  

 この案件についての問題は、使用者と労働者にある警鐘を鳴らしている。

 まず、現在の使用者について、もし労働者との間に穏便かつ有効な機密保持協定を結びたければ、労働者と法的手続に則った方法で協定に署名する必要があり、その内容も合理的かつ公平なものでなくてはならない。さもなくば紛糾が生じた際、法院によって違約金の金額を調整されてしまう事になる。また使用者は新たに人を雇用する際、特に競業避止義務について、招聘する労働者が他の使用者と労働契約を結んでいないか、「身の潔白」を厳格に審査しておかなければならない。さもなくば、訴えを起こされる可能性が出てくる。 次に、労働者は使用者との機密保持義務を道義的に遵守しなければならない。さもなくば、使用者と締結した機密保持協定違反により懲罰を受けることとなり、また、使用者に違約金を超える損害を与えたとき、使用者は実際の損害額の賠償を労働者に請求することを選択する可能性が出てくるのである。