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【寄稿】日本式人事管理モデルの中国における挑戦と変遷(5)(2013年10月23日)

【寄稿】日本式人事管理モデルの中国における挑戦と変遷(5)(2013年10月23日)

(三)文化的差異のもたらす課題

 日本企業は依然終身雇用を維持しているが、これは集団主義的空気や滅私奉公に基づく勤勉な勤務態度をその動力としている。もしこれらの「ソフト」が配備されていなければ、年功序列制度は計画経済下の中国における「鉄飯碗」「大鍋飯」と同じ弊害を引き起こし、従業員の怠惰な行為を誘発しただろう。同じアジア社会であっても、日本社会は集団主義的文化や儒家思想を中国社会よりもよりよく受け継いでいる。

 中国の十年に渡る動乱は人々の価値観を傷つけ、改革解放路線やグローバル化は新時代の価値観を築き上げた。現代中国の若者が体現しているのは西洋の個人主義的価値観であり、中国の伝統的な集団主義的価値観ではない。例えば、中国の従業員は個人の業績に応じた賞罰制度を受け入れており、収入格差を望んでいるものであって、賃金の均等主義は受け入れたがらない。日本では、業績の良し悪しはあれどその賞罰はあいまいであり、日本の業績考課は技能開発を目的とするものであると言える。ゆえに、中国の社会文化と価値観は日本企業の人事管理モデルへ課題を突きつけているのである。

 いかなる人事管理モデルの誕生と存続にも、必ず歴史的背景と社会的条件が関係している。中国の改革解放以来数十年、企業の外部環境は巨大な変化に見舞われている。商品市場の競争激化は、核心人材の重視と人材競争を生み出した。外部労働力市場の成熟は企業と人材双方に選択のためのプラットフォームを提供した。中国の高度経済成長は労働市場へ更に刺激を与え、求職者は労働市場を通じ自身の価値を高める機会を得ることが出来た。

 在中日本企業の人事管理モデルは、この環境下において明らかに不適合である。中国の環境に適応するために、日本企業は長期雇用の核心とも言える終身雇用、年功序列制度を打破し、市場動向と業績に応じた短期雇用モデルを追及すべきである。在中日本企業人事管理モデルの変遷は、グローバル経済下における人事管理モデル変化の研究に一つの視点を与えるだけでなく、中国企業がどのように内部及び外部の人材を配置した人事管理システムを構築するかという点において、参考に値するものである。更に深く見ていくと、在中日本企業人事管理モデルの変遷はグローバル化を背景とした其々の人事管理モデルの融合であることが分かる。

 我々は、在中日本企業の人事管理システムが常に西洋の業績主義、成果主義制度と技術を取り入れてきたことを知った。すなわち日本本土において、グローバリズムのもたらした衝撃は日本の伝統的人事管理モデルにゆるやかな変化をもたらしており、日本本土企業への変革の衝撃は在中日本企業より更に大きいのである。同時に、現在欧米企業の人事管理システムは精神的奨励性と長期雇用へ変化する傾向にあり、成果主義の硬直化と欠点を補おうとしている。特に近年、西洋国家で興った高生産的人事管理システムは、東アジアの文化である共生理念を十分に吸収したものであると言える。ゆえに、グローバル化を背景に、東アジア文化の人間主義的、共生的理念と西洋の人事管理制度、技術が段々と融合していると言う事が出来る。

 改革開放以降、日本式とアメリカ式の人事管理は中国企業にとって学習や模倣の対象であり、学者達もその優劣について論争を繰り返していた。日本的人事管理モデルの長所は共生を基とした企業文化や労使関係といった精神性にあり、アメリカ的人事管理モデルの長所は制度管理と成果に対する大きな奨励性にある。日本的人事管理モデルの理念とアメリカ的人事管理モデルの制度技術の融合した姿こそが、新時代の人事管理モデルになりつつある。中国企業から見ると、人事管理システムは企業文化や企業と従業員との共生理念を重視し、同時に現代の人事管理制度と技術を用いて企業管理の制度化と規範化を念頭に置いて、確立すべきものであると言える。