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【寄稿】上海自由貿易試験区の人的資源サービス課題とチャンス(2013年10月24日)

 中国(上海)自由貿易区の「方案」及び「マイナスリスト」公布以降、各業界は其々に調査を始め、新たなビジネスチャンスを探り、課題を分析し、対策措置を施しています。筆者は専門家に意見を求め、上海自由貿易区の上海現有ヒューマンリソース産業に対する好機と課題について聞きました。

1、「自由貿易区」と「区外」の政策比較

 ①行政審査 「自由貿易区」では「商工業登録制」が採用されていますが、事前審査を重視する姿勢から審査中、審査後を重視する姿勢に変わっています。窓口の一本化、総合的審査と効率的なサービス提供によって、各部署間で共同管理体制をとっています。「区外」は現在でも行政許可、制限、資格証書、事前審査など一連の「行政審査制」を採っています。

 判断:人材仲介機構新設については、「自由貿易区」の方が有利です。

 ②資本金 「自由貿易区」の外資による人材仲介機構の資本金は、30万ドルから12.5万ドルへと値下がりし、また期日までの払込が可能です。本市「区外」政策規定では、派遣公司は50万元から200万元を、一括して資本金としなければなりません。

 判断:外資、中外合資及び新設人材派遣会社は、「自由貿易区」の方が有利である。

 ③税收政策 税金の徴収管理政策は、税率で言うと「自由貿易区」と区外で差異はなく一律営業税5.5%、所得税25%です。この点で、「区外」と税率は一致しています。

 判断:「自由貿易区」と「区外」で差はありません。しかし、「自由貿易区」創設初期の税制優遇(「自由貿易区」内で条件を満たした企業は、15%の企業所得税を免除する)を受けている場合は、その後の経過に注意が必要です。

 ④サービスモデル 「自由貿易区」の人的資源サービスは「マイナスリスト」にある最低ライン遵守を要求されず、派遣業務においても制限を受けません。但し、「区外」の人的資源サービスにおいては各業務項目の制限を受けます。

 判断:「区外」の場合は経営プロジェクトの開拓や運営などで、「自由貿易区」に比べて明らかに制限されます。

 ⑤外資比率 「自由貿易区」では外資比率が70%を超えることはできませんが、香港、マカオ、台湾資本である場合は100%出資でも問題ありません。「区外」の人事部2006年浦東新区政策を参照にすると、やはり外資比率が70%を超えることはできなくなっています。

 判断:現時点で「自由貿易区」と「区外」の浦東新区及び「上海の人的資源サービス産業園区」等の政策は一致していますが、もし「自由貿易区」が外資規制を開放し独資による人的資源公司の設立を認められるようになった場合、「自由貿易区」の方が優位になります。

 ⑥職業訓練サービス 「自由貿易区」では中外合同の経営教育及び経営技能養成が認められていますが、「区外」の場合は制限があり、厳格な検査を受ける必要があります。

 判断:「自由貿易区」の方が優位です。

 ⑦「マイナスリスト」管理 「自由貿易区」の重要な制度の一つは新たに導入された「マイナスリスト」管理システムで、投資における「禁じられていない事は全て許される」原則を体現したものです。リスト外の業種、企業に対しては投資に制限がなく、政府による事前審査もありません。「マイナスリスト」は事実上政府と市場の境目を消し、政府の為すべきことを明確にした上で、政府の「権利移譲」「職能変革」方針を推し進めるものであり、企業にとって寛大なものです。「区外」では依然として厳しい審査が行なわれています。

 判断:「自由貿易区」の行政拘束力は低く、透明性があり効率が良いです。「区外」では行政の規制が多く不透明で、効率があまり良くありません。「区外」に対する行政機能を改善し、効率を高め、制度刷新とよりよい行政サービスの提供を行なうことは、政府の課題です。

2、「自由貿易区」へ「区外」発展がもたらすビジネスチャンスと課題

 専門家の研究分析によると、現在公布されている「自由貿易区」全体の方案は各方面の利益を集めた「妥協」の結果であり、人材仲介市場、職業技能訓練等の方面にも及ぶ改革開放は、想像だにできないほどの力を持っています。ゆえに、総合的に判断して、「自由貿易区」の設立は「区外」の発展から見ると、課題よりもチャンスの方が大きくなると思われます。短期的にみれば課題はそれほど大きくなく「区外」企業への影響も少ないが、中、長期的視点で見ると、新設企業の影響は大きくなる可能性があります。いかにチャンスを捉えるかが、今後のカギとなりそうです。

 ①「自由貿易区」は「区外」の発展のチャンスである

 「区外」の管理体制改革及びサービスシステム刷新の後押し

 「自由貿易区」の建設主旨は内需の開放拡大であり、自由貿易区の設立は「区外」企業の発展において効率性を上げる開放ムードを提供します。「自由貿易区」政策をより一層模倣、比較し、区外人的資源サービス業の管理体制改革と刷新に新しい風を吹き込むものです。

 「区外」機構のビジネス市場開拓

 データによれば、現在「自由貿易区」では毎日300社以上の企業が出入しており、人的資源サービス業行N的特点分析:「自由貿易区」始動後、2013年から2014年にかけて上海及び国内就業市場は穏かに回復する見通しである。随之人材及びサービス需要は大幅に増加し、特に国際的業務を行なう人材仲介機構にとって、「区外」の人的資源サービス会社に商機を提供すると思われます。

 「自由貿易区」とのバランス政策形成における優位性

 「自由貿易区」は「区外」の産業を不利に落とし込む可能性があるため、「自由貿易区」内外政策の+Rは、バランスを考慮しながら「区外」の政策を緩める可能性が考えられます。

 「区外」発展における運営モデル刷新の促進 

 「自由貿易区」の優位性を笠に、「区外」企業は積極的に「自由貿易区」に接し、「自由貿易区」内に支社や営業所(金融、物流、航空運輸等)を設立することができます。同時に業務開拓と営業双方で利益が出る局面を作り出せます。

 ②「自由貿易区」の「区外」発展にもたらす課題

 新設会社が「区外」に会社を構えようとする意思と数量に悪影響

 専門家の分析によると、現在の「自由貿易区」方案では、新設企業が「区外」に会社を構える可能性は低く、特に新設の人的資源サービス業公司や重点成長産業であるオフショアサービスのアウトソーシング業を営む業者は「自由貿易区」内に会社を設立し、「区外」企業の成長全体に影響が出る可能性があります。

 「区外」の政策的優勢の減少及び解消

 現在、「区外」の人的資源公司における外資出資企業比率は70%を超えており、もし「自由貿易区」が外資比率を開放し、外資独資の人的資源公司が設立されれば、一部現存企業が「自由貿易区」へ移転することも考えられます。

 「区外」の労務派遣需要の大きな会社の「隠れ蓑」に

 労働法の規定では、労務派遣労働者び数量は総労働者数の10%を超えてはならない」とあり、もし「自由貿易区」内でこの法的規制が停止されれば、大量の労務派遣を必要とする企業が「自由貿易区」へ移転する現象が起こりえます。

 新規人的資源サービス業の「区外」開業に影響 

 「自由貿易区」の専門的サービス業開放において、最初に設立を許されたのは外資系信用調査会社であり、これは人的資源サービス業のテリトリーに入ります。これら新興産業会社は必然的に「自由貿易区」に設立されることになります。

  

 まとめると、「自由貿易区」の設立は「区外」の人的資源サービス業発展にとって危機ではなく好機である側面が強く、いかにチャンスをものにし、マイナスの影響を抑え最大限の利益を出すかが、「区外」発展の重要な課題と言えるでしょう。

  

3.対策と提起

 ①行政審査制度改革の推進と、「区外」行政效率のアップ 

 前述の「自由貿易区」と「区外」の関連政策比較から、「区外」の試行方法を先取りし、「自由貿易区」の開放措置の模倣、参考にするのが良いと思われます。政府機能の改革、審査の効率化を行い、「自由貿易区」との差を出来る限り縮めなければなりません。考え方を変え、効率が良く透明性と利便性がある行政サービスをもって投資を引き入れる必要があります。

 ②「マイナスリスト」の分析管理を適時追跡調査する。

 外資の投資に関する法規と「自由貿易区」の発展ニーズから、現在の「自由貿易区」の「マイナスリスト」は半年から一年毎に一度調整を行う必要があるでしょう。「リスト外の項目は全て投資対象」である原則を十分に把握した上で、専門家を組織してリスト項目が適切であるか否かを追跡調査し、その動向を常に把握して、政策への対応を怠らないようにすべきです。

 ③中智日企自由貿易区支社の利用

 会社のリーダーが、「自由貿易区」管理委員会へ積極的にコンタクトを取るのも良い方法です。具体的には、「中智日企」の「自由貿易区」支社及び営業所に実現可能性のある構想や方案を相談し、「自由貿易区」に有益なサービスを紹介してもらった上で、「自由貿易区」での人材アウトソーシングを利用するのも手です。

 ④人的資源サービス業の開放に対しアンテナを張っておく

 専門チームを組織し、「自由貿易区」の動向や人的資源サービス業への開放措置が「区外」にもたらす影響などを積極的に分析調査し、新たなビジネスチャンスを追うことが大切です。