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「【寄稿】労務請負(人的資源アウトソーシング)という概念及び特徴、利点 (2014年4月25日)

「【寄稿】労務請負(人的資源アウトソーシング)という概念及び特徴、利点 (2014年4月25日)」

 「労務派遣暫定規定」の実施に伴い、各企業とも10%規定を超える余剰派遣社員の業務について真剣に考えなければならなくなりました。各企業に一致しているのは、規定を超える派遣社員について「5つの選択肢」があるということです。それは、継続使用、請負、正社員化、人事代理、リストラの5つを指します。継続使用は派遣社員の要件に該当する職位について、引き続きそのまま使用するというものです。請負(人的資源アウトソーシング)では、派遣社員を労務請負先とし、従来の関係を変えてしまうものです。正社員化は、優秀な従業員を直接雇用するものです。人事代理は直接雇用を基本として、具体的な人事労務管理代理を委託するものです。リストラは、人事整理やロボットの導入などで派遣社員数を減らすものです。これら「5つの手段」中、最も有効で、最も直接的な解決方法が「労務請負(人的資源アウトソーシング)です。

 一、労務請負(人的資源アウトソーシング)の概念

 労務請負とは企業の非主要業務における生産、経営活動を外部企業に委託することを言い、請負先企業は契約に基づいて内核、補助的技術、資本、土地、基礎設備などの生産材料を共同投入し、商品生産及びサービス提供完了に伴い相応の報酬を受け取る、一連の経済的活動を言います。このとき、双方の労働力、土地、技術など生産的要素の投入に対する約定、原材料の供給、生産工程及び商品管理基準、サービスの質など「ハード面」の指標だけでなく、双方の管理領域、協力方案、リスク管理など「ソフト面」の指標を、営業許可証や業務登記の範囲内で決定します。また、労務請負会社の規定がある工商営業証登録の業務範囲に、明確に記する必要があります。

 労務サービスとは労務請負の概念を基礎として、「組織―個人」ではなく「組織―組織」の関係を結ぶものを言います。すなわち、標準的な労務請負モデルにおいては、委託企業、請負先企業、労働者の三方が直接的に結ばれています。委托企業と請負企業の間には民事的契約関係があり、労働関係を持つのは請負企業であって、委托企業と具体的な業務を請負う労働者との間に「労働関係」は存在せず、また直接的な管理関係も存在しません。請負企業と労働者が労働契約を締結し、請負企業が労働者の出勤、交替、設備検査、安全検査等労働力の現場管理と問題解決に尽力し、その商品やサービスの質及び量を管理します。また、組織管理モデルと管理と生産性の向上を絶え間なく改善し、利益を得ます。労務請負は、委托企業、請負企業が請負契約を結びますが、この請負契約には、委托企業が請負企業に求める労務サービスのみならず、その実態的成果をも規定されています。労務提供は業務成果を出す為の手段に過ぎず、請負企業が委托された業務を完了させるためには、労務サービスを提供する必要があるだけでなく、その実際の成果が業務成果と符合していなければなりません。これで初めて、委托企業の需要を満たすことができるのです。委托企業はこの成果の完成過程と品質を監督します。この過程と結果の質を監督することこそ、請負企業が求められる成果を出せるか否かを分けるカギとなります。

 二、労務請負の特徴

 労務請負の運用モデルについて一言で言えば、人的資源を中心として市場競争と社会分業に参加する、ということです。これには、以下のような特徴があります。

 (一)請負先企業が唯一の雇用主である

 請負先企業と業務に従事する従業員との間には労働関係が成立するので、委託企業は請負先企業の従業員について何ら法的責任を負う必要がありません。

 (二)労務請負の核心は労務サービスである

 労務請負は人的資源を経営モデルの核心に据えています。労務請負の実践においては、請負企業は委託企業との間に信頼関係を持つのが一般的です。労務サービスに従事する従業員の専門スキルを養成することで、労務コストの抑制と効率化を実現することができ、双方に利益が出ることとなります。、

 (三)労務請負には生産的要素の投入が必要である

 請負企業は必要な生産的要素を投入しなければなりません。但しそれは人的資源管理、技術及びそれに関連する土地、施設、設備の賃貸料が主となります。請負業務の進行中に、更にプロジェクト管理要員、専門技術要員、管理システムツール、生産ツール、資本、基礎設備などの生産的要素を投入することは、労務請負プロジェクトの順調な実施を保証するものとなります。

 (四)労務請負における管理責任

 労務請負管理実践の視点から見ると、請負企業は委託企業の管理及び協調に対し全面的に責任を負い、委託業務に対し以下3つの責任を負わなくてはなりません。

 1.現場管理。出勤管理、班分け、班換え、安全検査、設備検査、班長会議、統計分析管理など。 2.労働者に対する人的資源管理。 3.勤務後保障管理。委托企業は請負契約に則り、その定める執行期間、請負部分について監督管理を行わなければならない。

 (五)労務請負は業務量で価値が決まる

 労務請負の価格設定は最終的な業務量によります。請負契約の約定または明確に定められた求められる業務成果の品質及び数量に基づく請負企業の業務成果である商品及びサービス、これを売買しているのです。

 三、労務請負の種類

 (一)成果属性による分類

 労務請負により提供される最終的成果の属性は、その殆どが製造請負とサービス請負に分けられます。

 1.製造請負—製造請負の対象は部品加工、中間商品生産活動、中間商品及び最終商品の包装や梱包となります。加工貿易が典型的な例で、被服、自動車及び電子機器製造においてよく用いられます。製造請負においては、請負企業が相応の労働力を投入し、自身の資源及び賃貸施設をもって商品を生産し、これを委託企業へ引き渡すところまでが一連の流れとなります。

 2.サービス請負---サービス提供過程における特定の件について、委托企業が正式及び非正式な「サービス水準協約」に則り請負企業へ業務を委託するものです。サービス請負は、達成すべき機能的活動をプロジェクト形式で委託するもので、請負企業は自身の有する人的資源基礎施設、設備及び技術など生産的要素を組み合わせて労働力を科学的に管理し、労働者の效率と労働生産性を高めてサービスを行い、利益を得ます

 (二)バリューチェーンによる分別

 企業内部の組織機構と職能システムは複雑に絡み合っていますが、企業内部のどんな職能も他部署との協調の上に成り立って初めてバリューチェーンが順調に流れていくものであり、特定の職能を完全に割り出すことはとても難しいものです。しかしバリューチェーンという視点から見ると、職能は直接的なものと補助的なものに大別されています。労務請負においては、人的資源と具体的職能に照らし合わせて、労務請負を直接的職能労務請負と間接的職能労務請負に分けることができます。

 1.直接的職能労務請負

 直接的職能労務請負主要是主たる業務について、顧客企業へ技術開発サービス、販売・卸売サービス、アフターサービス、その他一連の過程で必要となるサービス等を提供します。

 2. 間接的職能労務請負

 間接的職能労務請負においては、人的資源管理、商品流通、財務管理等主たる業務以外の業務及び保安、衛生管理、飲食など補助的業務を委託し、指定する業務過程をコントロール、管理させます。

 四、労務請負導入の利点

 (一)管理コストの削減

 一般的に、委托企業は主たる業務でないものついてのみ業務委託するものですが、請負企業に言わせれば、全てが人的資源を核心としているものであり、また時間と労力を経営業務に費やし、かつ良好な投資成果を得ることは、委托企業から見ると間接的なコスト削減であるということです。また、請負企業が相応の設備、技術、労働力などの生産的要素を投入することで、委托企業の相応の固定コストや後々までの管理コストを削減しているといえるでしょう。

 (二)経営リスクの減少

 労務請負においては、委托企業が請負協議を経て請負企業に業務を委託することで成立しますが、一定の程度ならば現在の産業チェーンを延ばし、自身や外部の影響を有効に緩和することで、企業の生産サイクルへの柔軟性を高めることが出来ます。同様に、請負企業は一般的に労働力資源の絶対量について圧倒的な優勢を誇っています。これはまさに人的資源の貯水池であり、必要な時に必要なだけ貯水池内の労働力資源を調整でき、また生産的要素と結合することで委托企業の業務を調整できます。ついには企業内部の経営リスクを直接分解し、重複的業務活動による資本の消耗を避け、非システム的リスクを分散させることができます。

 (三) 運営効率の改善

 熾烈な競争環境下にあって、伝統的な「生産に必要なものが全て揃っている」独立企業は往々にして不適応な資源配置を行い、有利な競争環境や核心的競争力の確立に不利となりがちです。しかし労務請負によって、委托企業は労働力不足にあっても、経営效率の低い非核心業務を請負企業に委託することで、自身の持つ内部資源を再配置し コスト効率と自身の専業的能力を高め、特定業務範囲内の組織管理をも効率化せしめます。請負企業は自身の労働力資源をもとに、その他の資源や生産的要素を特定の業務プロジェクト向けに配置することで運営効率を高め、より大きな利益を早く得ることができます。

 (四)連帯責任の回避

 委托業務進行中、委托企業はその業務を実際に進行する責任者に対し何ら法的関係は無く、ただ相応の費用を支払うだけです。請負企業は完全に独立して委托業務完成における労働者使用の法的リスクを負うこととなり、連帯責任を負う必要がなくなります。

 労務請負は派遣社員の比率を下げる有効な手段です。委托企業及び請負企業は、このことを留意おくと良いでしょう。

 本文では労務請負の概念、特徴及び利点について理論的検討を行いました。次回は、国外労務請負の成長及び実践と、我が国の労務請負成長の歴史と問題点についてより深く検討していこうと思います。中国の特徴的な労務請負の経営商品を具現化すべく、我々も日々努力していかなければなりません。


中国労働学会労働経済、労働派遣専門委員会副会長 範本鶴