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【政経】ストライキによる賃金アップは「世界の工場」としての成長余地を狭める(2014年5月25日)

【政経】ストライキによる賃金アップは「世界の工場」としての成長余地を狭める(2014年5月25日)

 最近、東莞の裕元製靴工場と日本企業である東洋陶器株式会社(TOTO)上海工場で発生したストライキ事件が国内外メディアの関心を呼んでいる。

 国際的な注目を浴びた高埗裕元製靴工場でのストライキは4月に発生した後2週間続き、参加者は一時(公称)4万人に達した。この事件は広東省上層部を大いに震撼させ、国務院台湾事務室(国台弁)や広東省台湾事務室がスタッフを派遣し、東莞市と共に解決に当たった。最終的に、裕元は従業員社会保障金の補填と5月1日より每人每月230元の生活手当を支払うことで合意し、2週間に及ぶ一大ストライキは終焉を迎えた。

 東莞のある事情通は、裕元従業員が社会保険と住宅公共積立金を名目として起こした4万人規模の一大ストライキは「きわめて異例」であり、政府側がどのような政策を打ち出すかが注目されると言う。この事情通によれば、工場側が社会保険を全額負担しないのは珠海デルタでは良く見られる手法であり、「国内事情を熟知した」多くの企業では賃金全額ではなく基本賃金を基数として社会保険額を算定している。もし各従業員に適切な社会保険をかけていれば、企業の人事コストは計り知れない大きさとなり、また従業員の社会保険加入意欲も低いことから、労使行政三方の「事なかれ」によりグレーゾーンに落ち着いていた。

 裕元製靴工場で働く陳さんは、従業員は普段社会保険についてそれほど注意を払っておらず、個人負担部分の納付に消極的であることから、企業の社会保険に対する責任を追及していない。むしろ帰郷や他省で働いた時に社会保険金を捻出するのが難しいと感じているので、従業員のストライキは社会保険や住宅公共積立金の不備によるものではなく「30%の賃金アップ」が目的なのだと語る。

 つまり、社会保険は企業の従業員管理の地雷原ではあるが、賃金アップこそが従業員の真に求めているものなのである。

 賃金アップの圧力に悩まされているのは裕元製靴工場だけではない。最近、長江デルタで発生したストライキがメディアで報道された。日本企業である東洋陶器株式会社(TOTO)上海工場の従業員が先週火曜日より4日間のストライキを行い、企業側が賃金アップに同意した後ようやく職場復帰したのである。

 近年来、中国従業員の賃金上昇幅は、実際に大きなものとなっている。珠海デルタ地区の末端加工業を例に取ると、2004年には平均1000元だった賃金が目下平均3000元にまで伸びている。今年4月21日までに、全国九つの省市で再び最低賃金が引き上げられたが、その平均上昇率は13%となっている。事情通は、末端加工業の利潤は一般的に10%から20%前後に過ぎない。基本賃金の上昇は社会保険負担の膨張を招き、企業にとって大きな負担となる。現在従業員はストライキによって賃金を要求しているが、これは「世界の工場」としての中国の成長の余地を縮めるものである。

 外資系企業は、二つの大きな選択肢に直面している。一つは他国及び中国内陸部への移転、もう一つは人事コスト上昇に伴う、オートメーション化を含む技術革新である。