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【寄稿】中国の「労務請負」発展の歴史と問題(2014年6月25日)

【寄稿】中国の「労務請負」発展の歴史と問題(2014年6月25日)

 労務派遣社員比率制限によって、制限を越えた部分の派遣社員は労務請負(人的資源アウトソーシング)へと転換されていますが、では我が国の労務請負(人的資源アウトソーシング)の現状はどのようになっているでしょうか?そして、そこにはどのような問題があり、どのような解決方法が考えられるでしょうか?

 本文では、この点について検討していきたいと思います。

一、我が国の労務請負(人的資源アウトソーシング)の歴史と発展

 1980年代より、中国の大量の低コスト労働力を自社の成長に利用するため、先進国の製造業は「コスト主導」で労働力コストの安い国家へ移転を始めました。

 「三来一補」(来料加工、来件加工、来样加工、保証貿易)により、商品加工を主とする製造業が我が国に出現しはじめ、国土が広く、多数の安価な労働力を有する我が国の沿海地区にアメリカや日本の労働密集型企業が集結し、請負契約による実物貿易が行われていました。

 1990年代以降、製造請負は珠海デルタ、長江デルタから福建省、山東省、河北省、遼寧省などの地域へ移転し始め、伝統的な「三来一補」企業は「効率指向」「市場志向」へと向かい、共同生産へと方向転換しました。業務請負の過程において、請負企業も現有の土地、工場へ新たな投資を行うことで成果を上げてきました。21世紀に入り、企業の「イノベーション」志向により、労務請負は「製造請負」から「サービス請負」へと変化し、急速な成長を遂げて来ました。産業分布から見ると、我が国は長江デルタ(上海、杭州、寧波、南京、蘇州、無錫)、環渤海地区(北京、大連を中心とした地区)を振り出しに全世界的労務請負(人的資源アウトソーシング)サービス体系を形成したほか、中部地区や珠海デルタにおいても一部労務請負(人的資源アウトソーシング)業者を引寄せたのです。

二、我が国の労務請負(人的資源アウトソーシング)が直面する問題

1.曖昧な人的資源アウトソーシングの概念

 労務派遣への規制が進むにつれ、世の中ではいわゆる「偽装派遣」の問題が大きな関心を集め始めました。同時に、政策による選別を進め、「合法を装った違法行為」の排除に乗り出しました。

 法的角度から見ると、「労働契約法」において労務派遣の法的地位は既に明確になっています。しかし人的資源アウトソーシングには未だ明確な解釈が無く、ただ商務部や財政部などの関係部署の政策文書内に労務派遣とは別の法的地位であることが触れられているのみです。

 しかし「契約法」には請負の法的地位が明確に記されているので、ここから法的に見て請負と労務派遣は対等な法的概念を持つと言えます。実際には、請負とアウトソーシングは往々にして同一の概念として扱われます。一般的に、人々は「アウトソーシング」という記述を見て「請負」であると考えています。「労務請負」は既に「人的資源アウトソーシング」となっており、「人的資源アウトソーシング」は相応の法的地位を有しています。しかし「偽装派遣」論争により、労務請負(人的資源アウトソーシング)の正当な商業形態は労務請負規制において誤解を生み、それは偏見をも生み出しています。

2.管理能力の欠如

 請負(アウトソーシング)単位は生産やサービスの任を負う際、より大きな管理リスクを負っている可能性があります。例えば、生産性労務請負(人的資源アウトソーシング)において、直接的に管理活動に関わる生産ライン班長は主に請負企業の社員であり、一般的には、彼らの知識及び科学的管理能力は限られたものであることが多いです。

 業務を請負うという巨大な責務を負っている割に有効な管理をしているとは言い難く、労務請負(人的資源アウトソーシング)作業の速度や質に影響を及ぼしています。特に現在の労務請負(人的資源アウトソーシング)について、多くの請負(アウトソーシング)企業(主に人的資源公司)は、人的資源を多く有しているにも関わらず、その専門知識や管理経験の欠如により、一定レベルの欠陥を有している可能性があります。

3.困難なリスクコントロール

 労務請負(人的資源アウトソーシング)は経営活動の一つですが、請負(アウトソーシング)の実践においては様々なリスクに面することとなります。例えば、人的資源の供給量不足に対する有効な保障が無い中で、人材の招聘や慰留は請負(アウトソーシング)企業の核心的リスクとなっています

 また、特に現在の「人材難」の影響下、繁忙期外における人的資源配置の最適化及び人的資源の質の向上もまた重要なリスクの一つです。同時に、請負(アウトソーシング)企業と委託企業との間には労働関係が無く、もし労災などの問題が発生した場合は、請負(アウトソーシング)企業が責任を負うこととなります。

 この他、以前我が国の労務請負の主要な形式であった「出来高制」の賃金支払い方式の場合は、「ライン工」に求められる技能レベルがより高くなります。これらの問題の処理を誤ると、利益の損失を生み出すこととなります。

4.業務の質の改善

 かつて、労務請負(人的資源アウトソーシング)市場はとても大きいものでしたが、委託企業は人材の質を特に求めず、また何ら規制も為されなかったので、労務請負を受けるに値しない企業が低コストのみを武器に生産やサービスを請け負い、労務請負(アウトソーシング)企業従業員の賃金や福利待遇に深刻な影響を与えるという事態を招きました。また、某労務請負(アウトソーシング)企業は発生した労災に対し賠償能力を有しておらず、従業員の合法的権益が保障されなかった事もあります。結果、労働争議や労働紛争の発生率上昇を引き起こしています。

三、我が国の労務請負(人的資源アウトソーシング)規制への建議

1.労務請負(人的資源アウトソーシング)と労務派遣の関係性の正確な認識

 労務請負(人的資源アウトソーシング)は企業の市場経営活動の一種であり、合法的なものです。しかし、その前の段階で「偽装派遣」の問題が話題を呼んだことから、特に一部労務請負(人的資源アウトソーシング)が派遣の転換であるとの認識を受けました。これが社会的誤解を引き起こし、労務派遣規制という形で返って来ました。ゆえに我々は労務請負(人的資源アウトソーシング)と労務派遣の関係性を正しく認識し、二者を其々成長させなければなりません。

 労務請負(人的資源アウトソーシング)と労務派遣はどちらも法的に許可されたものであり、人的資源サービスの核心携帯の一つとして、労働力を以て価値を創造するものです。また、二者には明確な区別があり(具体的区別についてはバックナンバーを参照)、その運用に改善が求められます。この二者については、政府文書内に明確な区分があるので、見ておくべきでしょう。

2.法制度による労務請負(人的資源アウトソーシング)の規範化

 労務請負(人的資源アウトソーシング)と労務派遣はそれぞれ「契約法」と「労働契約法」が適用されます。特に労務請負(人的資源アウトソーシング)への認識が不足している現代社会にあっては、関連政策制定において、関連法律を根拠とし、労務請負(人的資源アウトソーシング)が国家の発展、社会の進歩に重要な役割を果たします。可能な限り市場の経営活動への干渉、介入を避け、合法的労務請負(人的資源アウトソーシング)業務を段階的に成長させるべきです。特にアウトソーシングサービス(IPO、BPO、KPO、HRO)が飛躍的に成長している今日、我々は伝統的製造業、建築業の労務請負モデルを脱し、新たな形の労務請負(人的資源アウトソーシング)の定義、位置づけ、政策的支持を得る必要があります。

3.積極的導入と促進

 労務請負(人的資源アウトソーシング)の規範的発展について、労務請負(人的資源アウトソーシング)と労務派遣はまったく別の法的地位を持つ商業的活動でありながら、両者の経営においては共通する人的資源を用いているため、その業態がよく混同されます。

 多くの人的資源サービス企業が実際の経営において、この二つを同時に取り扱っていますが、これは決して労務派遣の法的規制を掻い潜ろうとした結果ではなく、企業の市場ニーズと自身の資源と能力をすり合わせた、市場から来る合法的経営の結果なのです。ゆえに、この関連政策においては簡単に「白か黒か」で労務請負(人的資源アウトソーシング)か労務派遣かを分けるのではなく、手助け、サービスという角度から労務請負(人的資源アウトソーシング)を導入または促進すべきです。労務請負(人的資源アウトソーシング)の経営モデルを法律の枠組みの元で発展させ、多元的なサービスを提供し、企業の健全な成長を後押しすることを、ここに提起します。


        寄稿 --- 範本鶴