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【判例】無期限労働契約を締結すべき従業員との、「年間労働契約」を終了させることができるか(2014年8月27日)」

【判例】無期限労働契約を締結すべき従業員との、「年間労働契約」を終了させることができるか(2014年8月27日)」

案情:

 2011年11月16日、王さんは労働仲裁委員会へ仲裁を申し立てた。その内容は、2001年より被告A社で業務に従事し、満10年となる今年も、A社は例年通り11月に王さんと一年間の労働契約を締結した。2010年11月、王さんは期間の定めのない労働契約締結要件を満たしたので、会社側へ期間の定めのない労働契約を締結するよう申し出たが。会社側は期間の定めのない労働契約を結ばず、一年の有期労働契約を継続した。その期間は2010年11月20日から2011年11月19日までであった。

 この契約が満了する直前、A社は2011年10月31日、王さんへ「労働契約終了通知書」を手渡し、労働契約を終了させようとした。そこで王さんは被告A社へ、違法な労働契約終了による損害賠償95927元、期間の定めのない労働契約未締結期間の二倍賃金である28068元の支払いを求めた。

 被告人A社は、以下のように反論した。A社は2011年11月12日、王さんより10日以内に期間の定めのない労働契約を締結するよう求める文書を受け取った。王さんの求めによれば、A社は管理者層の会議を経て期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。しかしA社は2011年11月19 日に王さんの訴状を受け取っている。王さんの申し立てを受けてA社は通知を暫く中止した。Aとしては王さんとの労働契約を維持し、期間の定めのない労働契約を締結した上で、今までと変わらない待遇と職位で業務に当たってもらいたいと考えている。

争点:

 1.双方の署名した最後の期間の定めのある労働契約は合法か?

 2.労働契約の終了は違法か?

分析:

 この案件の検討には、異なる学説が見られる。

 まず、「労働契約法」第十四条には「労働者が有期労働契約の締結を望んだ場合を除き、労働者が使用者において連続満十年在籍したときは、使用者は期間の定めのない労働契約を締結しなければならない」とある。ゆえに使用者には労働者が有期労働契約を望んだことを証明しなければならない。さもなくば双方で合意した有期労働契約の無効により、使用者の有期労働契約終了もまた違法となり、使用者に賃金二倍払いの義務が生じるほか、期間の定めのない労働契約を結ぶべき期間において有期労働契約を締結していた期間についても賃金二倍払いの義務が発生する。

 二つ目の視点は、労働契約は当事者間の合意に基づくものであり、最後の有期労働契約が双方の合意により締結されたものであるだけでなく、王さんは期間の定めのない労働契約締結の意思を伝えていないため、最後の有期労働契約は合法であり、A社は王さんへ期間の定めのない労働契約を締結しなかったことによる賃金二倍払いを免れ、1年につき1か月分の経済補償金の支払いで事足りるというものである。

 実際の調停では、王さんは期間の定めのない労働契約締結要件を満たすが、王さんが2010年に締結した、2010年11月20日から2011年11月19日までの労働契約については双方の合意により有期労働契約を締結したものとみなし、最後の有期労働契約は合法であるから、被告は期間の定めのない労働契約を締結しなかった期間について賃金二倍払いの義務を負わない、との結論が出ている。

 A社は2011年10月31日王さんへ労働契約終了を通知しているが、原告の王さんが期間の定めのない労働契約を要求していない状況下にあって労働契約が終了することは、別に違法であるとは言えない。但し「労働契約法」第十四条には、労働者は期間の定めのない労働契約締結要件を満たせば、労働契約を締結するか否かを選択することができる、とある。本案件において、王さんはA社からの労働契約終了通知を受け取った後すぐにA社へ10日以内に期間の定めのない労働契約を締結するよう速達で通知しているので、A社は法に基づき王さんと期間の定めのない労働契約を締結しなくてはならないのである。

 但し、返答期限が来ないままに王さんが労働仲裁を申し立てており、会社側は王さんの書簡を受け取ったあと期間の定めのない労働契約に同意したことを考慮しなければならない。。ゆえに、A社主観では期間の定めのない労働契約を結ばないず、労働契約を終了させるという善意でない行為を行うことはできないため、王某の求める違法な労働契約解除への損害賠償金及び期間の定めのない労働契約身締結期間の二倍賃金払いは却下されたのである。

 最後に、この件について労働人事争議仲裁委員会は「中華人民共和国労働契約法」第三条、第十四条、第四十四条、第八十七条の規定に基づき、「A社は王さんと15日以内に期間の定めのない労働契約を締結せよ。王さんのその他の請求は棄却する」との裁決を出している。


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部