ホーム > HRニュース > 中国HRニュース >【判例】配置転換に合理性は必要か?(2014年12月05日)

【判例】配置転換に合理性は必要か?(2014年12月05日)

配置転換に合理性は必要か?

案例:

 李さんは2008年7月、某機械工場の調理員として同工場と5年間のフルタイム労働契約を締結した。2011年5月、同工場は李さんを工場現場の清掃係へと配置転換することを李さんへ書面により通達し、同月25日までに回答するよう求めた。しかし李さんはこれに同意せず、双方の協議は物別れに終わった。同年8月、同工場は李さんが配置転換に応じなかったこと、幾度も書面により警告したものの新しい職位で働かなかったことを理由として李さんを解雇する決定を下した。李さんは当地労働争議仲裁委員会に仲裁を申立て、またその後の訴訟で工場側へ解雇の無効と損害賠償金の支払いを求めた。

分析:

 「労働契約法」第三十五条には、使用者と労働者は協商による一致をもって労働契約の内容を変更できるとある。李さんは元々調理員であり、工場側が配置転換した際、李さんとの話し合いによる意見の一致が十分に為されていなかった。また、工場側の配置転換については李さんの職位や業務環境、技能などに明らかなギャップがあり、合理性を欠き関連法規定に反していると言える。ゆえに、工場側が配置転換に対する不服を理由として解雇することは、法的根拠を欠き無効であり、工場側は労働者へ損害賠償金を支払わなければならない。

 実際の使用者による労働者の配置転換について、我々は以下二つの注意すべき問題があると見ている。

 まず配置転換には合理性があるべきである。使用者と労働者の協商による一致によって労働契約を変更できると「労働契約法」第35条に記してあるけれども、これによって使用者の自主的使用権を完全に否定しているわけではない。実務においては、使用者の使用権と労働者の生存権保護の均衡を保つべきである。自身の生産経営活動に必要な範囲で労働者の職位や報酬を決定できるが、労働者の権利を侵害することは許されないのである。具体的には、使用者が合法的に配置転換及び賃金調整をするためには、二つの要件を満たす必要がある。それは、労働契約及び就業規則の配置転換または賃金の項目に約定及び規定されていることと、配置転換に合理性があることである。もし双方間に争いが起こったときは、使用者は配置転換及び賃金調整の内容について合理性を証明する責任を負う。もし使用者主導で労働者の配置転換が行われたのならば、労働者の賃金、福利待遇、就業時間、就業環境などの労働条件を変更しないまたは改善した場合でも、労働者が無効を訴えれば無効となってしまうのである。

 次に、合理性を欠く配置転換の法的責任についてである。もし使用者の配置転換が法の求める合理性の原則に反し、労働者の辞職を招いたときは、「推定解雇」と見做され、使用者は辞職に追いやられた労働者に対し経済補償金を支払う義務を負うことになる。もし使用者が配置転換を利用して労働者を解雇したときは、「労働契約法」第八十七条の規定により、経済補償金の二倍の額を支払わなければならなくなるのである。


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部