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【判例】特殊な状況下で延長された労働契約が10年を超えた場合期間定めのない労働契約の締結(2015年2月11日)

【判例】特殊な状況下で延長された労働契約が10年を超えた場合でも、期間の定めのない労働契約を締結しなければならないか?(2015年2月11日)

案例:

 杜さんは2001年8月31日鋳造工場で電気メッキ業務に従事して以降、幾度も契約更新を重ねていた。最後の労働契約期限は2011年8月10日となっていた。2011年1月中旬、杜さんは動悸を感じたため、休暇を取って帰郷しそのまま春節を過ごした。しかし休暇期間中も症状が悪化したため、当地の病院で診療を受けたところ、医師は「両肺紋増加」との診断を下した。病院側は、職業的要素を考慮し、職業病の治療に定評のある医療期間での再検査を薦めた。春節が終わり、杜さんが病院で検査を受けたところ、医師は「疑似珪肺疑い」の診断を下し要医学的観察とした。観察期間が過ぎた後、病院側は当年11月23日に、杜さんに職業病の可能性は無いことを確認した。11月25日、会社側は杜さんとの労働契約を打ち切る意向を示したが、杜さんの反対に遭った。杜さんは、同社での連続した勤務年数は満10年を越えているので、会社側は期間の定めのない労働契約を締結すべきであると主張し、双方の間に争いが勃発した。

争点:

 労働契約期間が満了したにも関わらず、特殊な事情により勤続年数が10年を越えた場合、会社側は期間の定めのない労働契約を締結しなければならないか?

分析:

 

 労働者の特殊な状況下における利益を保護するために、「労働契約法」第四十五条では「労働契約期間満了時、本法第四十二条の規定する状況に該当するときは、労働契約はその状況が消失するまでの間延長されるものとする……」と定められている。また、「職業病の危害をもたらす作業に従事する労働者で離職前検査を行っていない者、又は職業病の診断を受けた、あるいは職業病の疑いにより医学的観察期間にある者」は、労働契約法第四十二条に挙げられている状況の一つである。本案件の杜さんは職業病の危害をもたらす作業に従事しており、実際に珪肺疑い(珪肺は職業病に属する)と診断され医学的観察期間を設けられているので、労働契約はその状況が消失する段階で終了すると考えるのが自然である。

 

 本案件の難しいところは、杜さんの求めている期間の定めの無い労働契約締結をどう判断するかである。一つの見方として、「労働契約法」第四十五条の規定する解雇制限による延長であっても、それは特殊な状況下にある労働者を保護するためのものであり、元の契約満了時間を法的に延長したものである。しかしこれが労働関係の自然な延長であるか否かについて、法律では明確に規定していない。なので、法的に明確な規定が無い状況においては、この種の労働契約延長と労働契約の履行期限を別のものとして捉え、随意な拡大解釈をすべきではなく、期間の定めのない労働契約締結にもこれを適用すべきである。ゆえに、法で定める解雇制限状況が消失した後、労働契約法第四十五条の規定に基づき労働契約が終了する、というものである。

もう一つは、「労働契約法」 第四十五条は確かに労働者の特殊な時期及び状況を示しているけれども、法律上の強制的延長規定は客観的な想法の労働契約延長を保証するもので、事実上連続する勤続年数が満10年に到達しているので、労働者には企業と無期限の労働契約を締結する権利がある、とするものである。

 

 我々は第一の視点に立つ。法に基づく労働契約の延長により連続して勤務する期間が10年を超えたか否かは、期間の定めのない労働契約を締結する理由による。上海市高級人民法院の「『労働契約法』適用における若干の問題に関する意見」中に明確な指摘がある。労働契約期間が満了すれば、契約は当然終了する。この場合契約期間延長の前提は特殊な状況下にある労働者の保護のためのものであって、契約を終了させられないのである。「労働契約法」第四十五条にも「労働契約期間が満了し、同法第四十二条に規定する状況に該当するときは、労働契約は相応の状況が消失するときに終了するものとする」と明確に規定されている。法律において終了する状況について特別な規定が無い中、法に反して労働契約終了に関する規定を拡大解釈してはならず、期間の定めのない労働契約締結においてもこれを適用すべきである。ゆえに、法定自由が消失した時に、労働契約も当然に終了する。


        寄稿 --- 中智HR 法律諮詢部