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【判例】労働契約における合理的な試用期間とは?(2015年2月28日)

【判例】労働契約における合理的な試用期間とは?(2015年2月28日)

前言:

 試用期間の考察範囲は広く、労働契約において職責が明確にされていない状況下にあって、司法は現在普遍的に知られている試用期間について判断を下さなければならない。これについては、同業同職種の各職位における業務レベル及び慣例を参照とすることが多いようである。

案例:

 2008年4月1日、沈さんは某创意会社と労働契約を交わした。同契約には、沈さんが行政人事主管を担当すること、契約期間を2008年4月1日から2011年3月31日までとすること、うち2008年4月1日から2008年9月30日までを試用期間とすることが記されていた。試用期間の每月の賃金は3000元で手当が1800元、試用期間終了後の賃金は毎月3000元と手当が3180元であった。この契約は沈さんと会社側双方の権利義務関係も約定していた。契約締結後、沈さんは即同社での勤務を開始した。2008年6月25日、创意会社は試用期間の沈さんへ業務に堪えないことを理由として、2008年6月28日をもって解雇する旨を伝えた。2008年7月14日、沈さんは労働争議仲裁委員会へ仲裁を申立て、解雇の無効と労働者たる地位の確認及び解雇期間の賃金支払いを求めた。2008年9月16日、同委員会は沈さんの申立を退けた。沈さんはこれを不服として法院へ提訴し、同様の内容の判決を求めた。

沈さんは、労働契約は有効であり、创意会社が試用期間内にも関わらず解雇することは違法である、と主張した。会社側は、試用期間内に沈さんを解雇することは合法であると主張し、議事録及び業務計画、証言、同僚との話の記録、通知、試用期間内の評価など沈さんの解雇に関する証拠を提出したうえで、この解雇は労働組合へ通知しているとして、沈さんの請求に応じなかった。

争点:

 

 使用者が試用期間内に労働者を解雇する場合、どのような要件が必要か?試用期間内の解雇であっても、30日前の予告が必要か?

 

分析:

 試用期間は使用者と労働者の相互理解の為、6ヶ月を超えない期間で約定される考察期間である。労働契約締結時に約定される試用期間の目的は労働関係においてより一層相互理解を深める機会を与え、使用者が最低限のリスクで優秀な労働者を加えることを手助けし、労働者のリスク及び競争への認識を促進することで、最終的に労働者の総合的資質及び競争力を高め労使双方のリスクを最小限に抑える為のものである。ゆえに、使用者が労働者へ設定する試用期間の範囲は広範囲に渡るべきである。労働法には、労働者が使用者に雇用される際には試用期間を設けることができ、この試用期間は労働契約の期間に含まれるとしている。同一の使用者と労働者が一度だけ約定できるのが、試用期間である。一定の業務を完遂するまでの労働契約や契約期間が三ヶ月以内の労働契約については、試用期間を定める必要は無い。労働契約が試用期間のみを約定しているときは、試用期間は成立せず、試用期間満了日が労働契約満了日となる。フルタイムでない労働契約においては、試用期間を設けることはできない。つまり試用期間は双方による考察期間であり、また使用者は労働者の職業選択の自由を保障し試用期間内での労働者解雇を回避するために尽くさなければならない。「労働契約法」では、使用期間内の労働者は三日前までに通知すれば離職することができるが、使用者が試用期間内の労働者を解雇する為には労働者が職責に堪えない理由を証明する証拠をそろえなければならない。

本案件の当事者沈さんは创意公司に招聘された際に、試用期間を6ヶ月と定めている。この期間については双方の同意を得ており、また法定期限を越えるものではないから合法である。この期間内に、沈さん及び创意公司は互いに様子を見て労働契約を継続するか否かを決定することができる。

 

試用期間の間、创意公司は沈さんが人事行政主管の任に堪えられるか否かを見ている。確かに労働契約には沈さんの職位と職責について詳細な取り決めが無いけれども、人事行政主管は使用者の人事を司る高等なポジションである。同じような会社組織の人事行政主管業務の性質と慣例から見て、一般的に社内人事全体に対し責任を負わなければならないポジションであり、相応の業務能力及びコミュニケーション能力を具え使用者の人事ニーズを満たすものでなくてはならない。これらを総合して考えると、创意公司が提出した証拠である試用期間の評価、日常業務及び解雇通知の内容などについて、法院は沈さんが職責に堪えないことを証明するに足るものであると見るべきである。このことから、创意公司が試用期間内に沈さんとの労働契約を解除することに妥協の余地は無い。仲裁及び一審法院は試用期間に関する規定に基づき、沈さんの求める解雇無効と労働関係の確認及び賃金の支払いについて、これを退けている。なお一審判決後、双方共に控訴することはなかった。

試用期間内における解雇制限の問題については、「労働契約法」に明確な規定がある。まず、三十日前の解雇予告が必要な解雇については、(1)労働者が疾病及び業務に因らない負傷のために、法で定める医学的療養期間を過ぎた後も元の業務に従事することができず、また他業務への配置転換ができないとき(2)労働者が職責に堪えず、訓練及び配置転換を以てしても改善が見られないとき(3)労働契約成立時から客観的に見て重大な変化が生じ、労働契約の履行ができない状態で、労使の話し合いをもってしても合意に至らなかったときに、三十日前の通知か一か月分の賃金に相当する金員を支払うことで解雇できる。試用期間中の労働者が職責に堪えない場合は上述の範囲を外れているが、「労働契約法」では試用期間中の労働者について、三日前の予告により解雇できると定めている。ゆえに、创意公司が試用期間内に沈さんを解雇することは合法であり、同社の主張を認めた判決は正しいものであると言える。