ホーム > HRニュース > 中国HRニュース >【判例】産前産後女性を業績考課で降格減給させることができるか?

【判例】産前産後の女性を、業績考課によって降格及び減給させることができるか?(2015年6月2日)

【判例】産前産後の女性を、業績考課で降格及び減給させることができるか?(2015年6月2日)

案情:

 2002年10月、呉さんはA社と労働契約を締結し、秘書として働いていた。2009年12月20日、呉さんは子供を出産し、「独生子女父母光栄証」を受け取った。しかし2009年度の業績考課により、呉さんは2010年1月より三職等三級から二級へと降格し、基本給は1207.8元から1148.4元にダウンした。2010年4月1日、呉さんは産休を終え復職したものの、同年7月、A社は一方的に呉さんとの契約を解除した。

 2010年9月、呉さんは労働仲裁を申請し、会社側へ不当に引き下げられた賃金と経済補償金の支払いを求めた。仲裁庭はこれを認めたが、A社は業績考課により賃金額を決定するのは同社の経営権であるとして、法院へ提訴した。

焦点:

  産休中の女性を業績考課により降格させることができるか?

判决:

  一審は、使用者は自社で賃金の分配方法や賃金額を決めることができるとして、A社の産休中の女性に対する業績考課による賃金額の決定を認め、呉さんの訴えを退けた。

  しかし二審では、2009年3月から2010年6月までの間、呉さんは産前産後にあった。この期間、A社は「女性職工労働保護特別規定」等の法律法規を遵守しなければならず、よって賃金を引き下げることは許されない。A社が2009年下半期の業績考課の結果として、2010年1月より呉さんを降格し賃金を減額したことはこれらの法律法規に反するとして、呉さんの訴えを認めた。

 

分析:

  「労働法」第四十七条には、「使用者は生産経営における特徴及び公益を根拠として、自主的に賃金の分配方法及び賃金水準を決定することができる」とあり、「女性職工労働保護規定」第四条には「女性職工の産休産後においては、その基本的賃金を減額し、または労働契約を解除してはならない」とあるが、両者は決して矛盾していない。使用者が職位考課、賞罰を規定する際には、産前産後の女性の法的権利を保障し、また産前産後の女性がこれを享受できるよう明文化、制度化しなければならないのである。

   本案件において、使用者は業績考課を行う際、業務指標の完成状況だけを見ており、労働者が産前産後という特殊な状況にあることを鑑みていない。基本賃金には手当や補助などの福利待遇が含まれているから、使用者は労働者の福利待遇を不利益変更することはできないのである。突き詰めれば、今回の争議の原因は、使用者に産前産後の女性に対する管理規定が無かったため呉さんへの保護が及ばなかった点と、呉さんが自身の身体的状況報告や、また負担の軽い職位への配置転換や業務量の軽減を求める声が不十分であったため、職責に堪えうるか否かのみが考課基準となった点にあると言える。