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【寄稿】世界経済が依然低成長を見せる中、中国は積極的経済介入のシグナルを強める(2016年9月28日)

 第三四半期に突入した2016年だが、世界経済は依然として低成長を続け、疲弊した状態にある。最新のデータを見ると、2016年以降、世界経済は8ヶ月連続で2015年の(平均)最低成長率を下回る成長となった。国家及び地域別の最近の経済成長を見てみると、アメリカ、中国、ユーロ圏、イギリス、ロシア、インドで伸びが見られるものの、その他多くの国々で経済成長が減速している。注目に値するのは、イギリス経済が力強い回復を見せていることと、インド経済の成長速度が三年ぶりの最高水準に達したことである。しかし同時に、ブラジル経済はサービス業の減少により引き続き低迷しており、日本経済も製造業の新規受注数及び輸出額が振るわず、生産量こそ回復したものの、過去半年のうち5ヶ月でボーダーラインのやや下付近をうろついている。現在の世界経済が成長力に乏しく、動力を欠き困難に直面している背景にあって、先日閉幕したG20では、マクロ的経済政策への意見交換と協力体制をベースとして受け継ぐとした上で、主要な経済主体はマクロ的経済政策において協調し、協力体制の促進を以て「経済成長の理念と政策の刷新、抜本的対策、総合的施策」を行わなければならないこと、併せて財政改革、貨幣改革、構造改革政策を相互に組み合わせ、経済、労働、就業及び社会的政策を統一し、需要管理と供給改革を並行して行うこと、短期的政策と中長期的政策を交えて経済社会の発展と環境保護を共に推し進め、世界経済へ成長の方向性とビジョン、方法をはっきり指し示すこと等が協議された。

 最新の先行指標によると、2016年8月の中国製造業購買担当者景気指数は50.4ポイントで前月を0.5ポイント上回り、今年最も高い上昇を見せた。中国非製造業商務活動指数は53.5ポイントで前月より0.4ポイント下回ったものの、6ヶ月連続して53ポイント以上の安定した数字をたたき出している。経済データからは、中国が積極的な経済介入のシグナルを強めていることが見て取れる。

 最近の中国経済の主な特徴は以下の通りである。

一、需要の改善と物価の持続的上昇。8月の中国製造業新受注数は明確に回復しており、回復幅も今年3月に次ぐものとなった。新規輸出受注数及び輸入購買価格指数も回復しており、国内外需要の均等な回復を反映したものとなっているほか、市場価格もこれに連動して回復し、その回復幅も拡大している。一年の後半を見てみると、9月と10月は「金九銀十」と呼ばれるほど市場が活発に動く上、国家改革委員会による、2800億元以上の投資規模を有する12の基本施設建設プロジェクトへの回答を含む、国による政策措置が近日中に採られる予定となっており、市場の需給は安定した成長を維持するものと思われる。

二、企業の信用力強化と業績予測の上方修正。8月下旬、中国は「実体経済における企業コスト削減方案」を打ち出し、その中で「1年から2年間の時間をかけて、実体経済における企業のコスト削減の第一歩を踏み出し、3年前後で企業のコスト全般を合理的に引き下げ、収益能力を明確に強める」とはっきり明記している。中国製造業企業の生産活動予測は再度上昇しており、生産の拡大と購買意欲も強まっている。企業に対する信用もまた、明らかに高まっている。

三、サービス業の新規受注の回復と市場需要の好転。非製造業を見ると、8月は建築業の新規受注指数が比較的大きく落ち込んだものの、サービス業の新規受注指数が回復し、今年4月以来段階的成長を見せており、非製造業の新規受注指数を安定させている。需要の好転と連動して、販売価格指数や従業員数もそれぞれに回復している。需要が価格と就業を押し上げており、これは積極的な財政介入のシグナル強化をある程度反映させたものだと言える。また注目に値するのは、金融業、情報業及び旅行業で従業員数の上昇が見られた点である。

四、一部の一線級、二線級都市で不動産価格が高く成長しているが、不動産業そのものの成長力は依然弱い。不動産業の商務活動指数及び新規受注指数は5ヶ月連続してボーダーラインを下回っており、不動産業の成長力の弱さを浮き彫りにしている。中国国家統計局のデータによると、1~7月に販売された不動産の総面積は75760万平方メートルで、昨年度より26.4%伸びているものの、7月の成長率は1~6月に比べ1.5ポイント減少している。また、不動産の販売価格指数は依然高い水準を保っている。在庫削減の中にあって、一部の一線級、二線級都市での不動産価格の高い成長が不動産業全体の販売指数の平均を押し上げる形となっている。現在一部の一線級、二線級都市では次々と販売制限、融資制限、価格制限などの政策措置が為されており、今後も政策が不動産市場に与える影響には注目しておかなければならない。

 先日、習近平主席は G20会議での演説において、「我々には中度及び高度の経済成長を維持する能力があるものと確信しており、中国経済の安定成長が既に高次の目標となっていることを示していく」と表明した。また、習近平主席はG20 会議においてマクロ的経済政策を刷新し、財政政策と構造改革を有効に組み合わせ、今後財政政策をより強め、安定成長政策下で経済を安定させることを提唱している。最新のデータによると、8 月の中国製造業の回復は企業の購買意欲を活性化させており、消費活動も好調をキープしている。また、市場も依然安定した体制を崩しておらず、需要の回復により中国の実体経済は改善の兆しを見せており、第四四半期における中国の実体経済は、引き続き安定した成長を続けると思われる。

 撰稿:何愉

 データ元:JPモルガン・チェース、中国国家統計局