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【判例】週休一日制の8時間労働を定める労働契約は合法か?(2016年12月1日)

案例:

 2015年12月3日、労働保障観察機構は、労働者韓氏より上海市内にあるA社が2015年11月以降時間外労働賃金を支払っていないとの通報を受けた。通報を受け、労働保障監察機構は通報を受理しこの会社に対し監査に入った。

 調査中、A社人事部責任者は韓氏へ時間外手当を支払っているとして、2015年11月の韓氏の出勤簿と給与明細を提出した。2015年11月1日から30日の間、韓氏は25日間出勤していた。韓氏の賃金は2500元で、時間外手当は459.77元、社会保険費の天引き分294.5元を除くと、手取り額は2665.27元であった。人事部責任者は更に韓氏との労働契約書のコピーを提出し、週休一日制(土曜出勤)の8時間労働、給与2500元で約定していると説明した。この人事部責任者は、韓氏は2015年11月4日間残業し、休日も残業したが、双方で締結した労働契約によると韓氏は週休一日であり、韓氏の時間外手当はその職位の賃金を基数として算定される。韓氏の賃金2500元には既に休日一日分の時間外手当が含まれているので、会社側は(2500元の他に発生する)休日出勤分の1倍(※休日出勤の場合、時間外手当は賃金の2倍を払う必要があるが、会社側によれば賃金の中に時間外手当が含まれているので、更にこれと同じ額を支払う必要がある)の時間外手当459.77元(2500/21.75×4)を支払った、と説明した。

これに対し監察員はA社人事部責任者に対し、その月の土曜日が何日あろうと、双方の約定した2500元の賃金は時間内労働分がいくら、残業分がいくら、と表示しなければならず、全額をひっくるめて提示してはならない、と通知した上で、会社側の言い分通り韓氏の賃金に時間外手当が含まれているとすれば、会社側の時間外手当を含む2500元に更に1倍の額を支払う方法も妥当ではない、と指摘した。

会社側の主張によれば別に支払われた休日の時間外手当は459.77元だから、2500元の賃金のうち459.77元が時間外手当分ということになる。これを除いた本当の賃金は2040.23元で、ここから社会保険費294.5元を差し引くと残りは本市の最低賃金である2020元を下回る。本市の最低賃金である2020元を基数として11月の韓氏の時間外手当を算定すると、会社側は742.99元を支払わなければならない。既に支払った459.77元を除いた残り283.22元も時間外手当として賃金2500元に含まれるならば、そこから社会保険費を控除した手取り額もやはり本市最低賃金の2020元を下回る。また、本市の最低賃金規定に照らせば、時間外手当や社会保険費、公共住宅積立金は最低賃金に含まれず、会社側が労働者へ最低賃金以下の賃金を支払う行為は違法であると言える。賃金は最低賃金基準に反し、違法である。

これにより労働保障監察機構は改正通知令を出し、会社側へ韓氏に最低賃金を支払うよう命じた。会社側はこれを受けて規定を改正し、韓氏へ本市の最低賃金を基準として差額分の賃金を支払った。

争点: 

週休一日、8時間労働を約定する労働契約は合法か?

分析: 

本案件の争点は週休一日を約定する労働契約が合法であるか、またどのように時間外手当を支払うべきか、という点である。

観点の一つは、労働契約で週休一日制と8時間労働を定めているとはいえ、賃金の支払いは労働法に規定する時間外手当の算定や本市の最低賃金規定などを順守しなければならないというものである。

もう一つは、労働者が詐欺、強迫を受けていない状況下で労働契約を締結した場合は、契約に基づいて処理するというものである。労働契約で週休一日制を締結したのならば、その賃金には休日の時間外手当分(2倍の半分、つまり一倍)が含まれており、時間外労働の際には使用者は労働者に対し残りの一倍の時間外手当を払えばよいとする考え方である。

現在多くの企業が週休一日制を実施し、労働契約において8時間労働及びこれに類する労働時間や賃金を約定している。そしてその場合、週休一日制が労働法違反であると知っている労働者は少なくない。我が国では一日8時間、週40時間労働を定めており、使用者は労働者へ毎週少なくとも1日の休日を保証しなければならない。筆者は、一週間のうちの何曜日であっても、労働者へ1日の休みを保証し、同時に週の労働時間が40時間を超えないのは、時間外労働が存在しない場合のみの話であると考える。もし特殊な要因により労働時間を延長する場合は、労働者の心身の健康を保障する前提で一日3時間、月36時間を超えないようにしなければならない。また、この場合使用者は時間外手当を支払わなければならず、その額は地域の法律で定める最低賃金規基準を下回ってはならない。

経営活動の都合上週休一日制を採用している使用者は、時間外労働を厳しく管理しなければならない。「労働者の心身の健康を保障する前提で一日3時間、月36時間を超えないように」、労働者の業務と時間外勤務を案配するのである。また、法に基づいた時間外手当を支払う上で、賃金に時間外手当を含めるやり方はあまりお勧めしない。何故ならどこまでが賃金でどこからが時間外手当なのかがあいまいになってしまうからである。時間外手当は、各人の職位に対応する基数をもとに、算定する必要があるのである。