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【判例】従業員が業務外で罪を犯した時、会社側は彼らを更に処罰することが出来るか?(2017年5月25日)

先日、外国人の乗客が地下鉄の中でテーブル広げ食事を始めたというニュースが、写真とともにweb 上を賑わせた。

 外国人乗客数名は地下鉄内でテーブルを広げ、皆で酒を飲み食事を楽しむ光景は、背景の雑踏がなければまるでピクニックにでも来たかのようであった。

 このニュースはWeb上で大きな注目を浴び、上海地鉄公安はこの後、彼ら外国人の乗客が勤務する会社へこの事実を伝えた。この乗客たちは指導を受けた後、自身の過ちを認め書面で謝罪文を出した。

 外国人の乗客数名によるこの行為は、当然なすべきものではない。公共の場である地下鉄内で食事をするだけでも非常識なのに、更に机を広げて飲食を行うのは、多くの乗客に迷惑をかける行為である。しかし、(公安の)管理部門が会社側へ自身に代わって謝罪をさせるやり方は、一定の論争を呼んだ。

会社側への談判が直接的な処罰より有用なのか? 

労働者が公共の場で過ちを犯した場合、企業がこれを処罰することに合理性はあるのだろうか?

労働者が公共の場所で不適切な行為を行った場合、企業側が処罰できるか否かについては、状況を分けて考えることが必要である。

もし当該労働者が、出張中など労働時間内において公共の場で不当な行為を行った場合。企業側は就業規則に基づいて当該労働者を処罰することができる。労働者が就業時間外に行った不当行為については、行政処罰を受けることになる。

今回のようなケースでは、企業側は一般的に労働者へ処罰をしない傾向にある。労働者の不当行為により企業イメージや名誉に著しい負の影響を与えて初めて、企業側は労働者に対し就業規則に基づき相応の処罰を与えることができるのである。

企業側は、労働時間及び労働場所外での労働者の行為に対し規定を設けることができるか? 

これは以前から常に議論され続けている問題だが、総じて企業側の管理権はどこを境界線としているのだろうか?

労働者と使用者は労働契約を締結し、労働関係を確立させる。就業時間内はこの契約を通じて労働力と引き換えに報酬を手にするものである。

労働関係には財産権や人格権、平等権や使役権といった特性がある。

労働関係の人格権や使用権をもとに使用者は労働者を管理しているため、使用者の管理権は制限されて然るものである。よって、使用者の管理権は就業時間内に、就業場所で、業務に関連した事項に限られるべきである。

一般的に、使用者は労働者の余暇について干渉する権利はない。しかし、労働者が余暇に犯した不当行為が使用者に影響を与えた場合、使用者はこれについて処理する権利を有する。

同様に、行政処罰を受けた場合、例えば交通違反で罰金を受けた場合に、使用者はこれに干渉する権限を持たない。しかし、労働者が何らかの行為で行政的拘留を受け、就業規則に拘留に関する規定の記載がある場合、使用者側は労働者を処罰することができる。

何のためにこの区分けがされているのか?それは後者の行為——「治安管理処罰法」への重大な違反行為は、使用者の労働者管理に実態的な影響を及ぼすからである。

労働者が拘留により出勤できないとき、使用者は無断欠勤として処罰を科すことができる。

これに対しては、無断欠勤とは労働者が出勤できる状態にも関わらず自身の意思で出勤しなかったことを言い、労働者が行政的拘留などにより客観的に出勤できない状態にある場合には、自身の意思で出勤しなかったとは言えない、とする見方がある。

我々は、労働者は「治安管理処罰法」に違反する行為を行った時点で既に、拘留による無断欠勤があり得ると予見しているが、その後のどのような結果が発生するかは成り行きによるものである(関係はない)、と見ている。ゆえに、労働者が拘留により出勤できなかった事実は客観的要因によるものではない、と言える。

ただし、使用者は、自己の管轄内で有効に従業員の管理を行えているならば、管理の範囲をむやみに広げるべきではないであろう。

外国人従業員が自己の権益を損ねた場合、これをどうやって守るべきか?

外国人が中国国内で就業するには就業証の所得手続きを行わなければならないが、実際には就業手続きをせず中国国内で就業している外国人も存在している。

「最高人民法院労働争議案件審理への適用法規に関する若干問題についての解釈(四)」第十四条には、「外国人、無国籍人が法に基づいた就業証を取得せず、中国国内及び香港特別行政区、アモイ特別行政区、台湾地区の使用単位と労働契約を締結した場合で、当事者が使用者との労働関係の確認を求めたときは、人民法院はこれを支持しない」とある。

「外国専家証」「外国人専家来華工作許可証」を取得した外国人が、中国国内で使用者と使役関係を締結したのならば、これは労働関係と認められる。ゆえに、就業証の手続きを終えた外国人と中国国内の使用単位の間では労働関係と見なされるが、就業証の手続きを行っていない外国人と国内使用単位との間に労働関係は成立しないのである。

もし、労働関係の存在する外国人が労働上の権益を損ねた場合は、労働仲裁を申し立てることで、自身の合法的権益を守ることができるのである。