ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】病気休暇を取るときは指定の病院で証明を受けなければならないか?(2017年6月28日)

【判例】病気休暇を取るときは指定の病院で証明を受けなければならないか?(2017年6月28日)

日常生活において病気にかかるのは避けられない。病気になれば休暇を申請しなければならないが、そのためには病院の証明が要る。それでは、会社側が指定の病院で病気であることの証明を受けるよう規定することはできるのだろうか?

病気による休暇は(会社)指定の病院で証明しなければならないか?  

 法院の判決によれば、労働者には、診療する病院を選択する権利がある。

 一部の企業では病気休暇証明の「濫用」を防ぐため、指定の病院で証明を受けた場合にのみ病気休暇を認めるよう規定している。しかし、このような方法は果たして合法なのだろうか?労働者が自主的に医者を選ぶ権利を侵害していないだろうか?近日、上海市第一中級人民法院は訴訟案件の中でその答えを出した。

趙女史はA社の従業員である。彼女は2015年2月より、多発的抑うつのため上海市精神衛生センターで診察を受け、同センターより2015年2月27日、3月27日、4月27日、5月26日にそれぞれ一ヶ月間の休暇を必要とする意見書を発行してもらった。  

趙女史が病気により休暇に入って以降、A社は彼女へ毎月3160元の傷病療養休暇手当を支払っていたが、同社は2015年5月16日より突然手当の支払いを停止し、趙女史へ華山医院を指定した上で、そこで再検査をするよう求めた。2015年6月23日、趙女史は会社側の要求通り華山病院で診察を受けたが、そこで医師より抑うつによる一週間の休暇を必要とする、との診断が下されたため、会社側は未払い分の手当を支払わなかった。

趙女史は自身の権利を侵害されたとして、浦東人保局へ申し立てを行い、会社側へ2015年5月16日から6月15日までの傷病療養休暇手当を支払うよう求めた。

浦東人保局は双方を調査した後、2015年9月29日にA社へ「改善命令通知書」を送達したが、A社に改善が見られなかったため、同年11月11日「行政処理決定書」をA社へ送達し、A社へ決定書を受け取った日から起算して15日以内に趙女史へ2015年6月の賃金(傷病療養休暇手当分)計3160元を支払うよう命じた。

A社はこの処分を不服として、浦東人保局を告訴し、法院へ同局の行政処分の取り消しを求めた。趙女史は第三者としてこの審議に加わった。

一審では、浦東人保局の行政処分は明確な事実に基づいており、法の適用も適切であるとして、A社の訴えを退けた。

A社はこれを不服として、上海一中院へ控訴した。 

上海一中院は審理後、「使用者は労働者の提出した傷病療養休暇の証明に異議を唱える権利を有するが、労働者にもまた病状や病院へのアクセスに応じ適切な病院で診療を受ける権利があり、使用者が傷病療養休暇中の労働者へ指定の病院で診断書及び証明書を出させることは法的根拠を欠く。更に、趙女史は2015年6月23日、A社の求めに応じて華山医院で既に診察を受けているが、同医院の診断は上海市精神衛生センターの意見書が虚偽である、または病状と合致しないことを証明するものではない。また、A社は趙女史が傷病療養期間中兼職を行っていたと主張しているが、これを証明する証拠を提出していない」とし、浦東人保局がA社に対し、趙女史へ賃金(傷病療養手当)を支払うよう命じた行政処分を合法と認め、一審を支持しA社の控訴を退けた。