ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】 労働者の配置転換拒否を理由として使用者が労働契約を解除した場合、使用者は損害賠償金を支払わなければならないか?(2017年10月31日)

【判例】 労働者の配置転換拒否を理由として使用者が労働契約を解除した場合、使用者は損害賠償金を支払わなければならないか?(2017年10月31日)

案例:

2005年5月、李氏はA公司へ入社し労働契約を締結した。李氏は入社後製造部のエンボス加工に従事していたが、受注数が減少したことから、A公司は2013年7月に李氏を製造部複合樹脂加工現場へと配置転換した。

その後、李氏は2013年8月と2013年12月の二回、職場を勝手に離れたことにより警告処分を受けていた。

李氏はその事実を認め、その理由として現場ではベンゼンや樹脂、オゾンを用いるにも関わらず、労働安全衛生上必要な物品が支給されなかったことにより健康に大きな害を受け、扁桃腺炎や咽頭炎を患うようになったためだと説明した。A公司は2014年1月李氏へ書簡を送り、社内規定を厳守するよう求めたが、2014年2月21日、李氏は再び職場を勝手に離れ、厳重警告処分を受けた。

その後李氏は、原因不明の臭覚麻痺を理由として配置転換を申し出た。双方は配置転換に向け話し合ったが、合意を見ることはなかった。同じ頃、李氏は当地安全生産監督管理局へ、A公司の複合樹脂加工現場はオゾン及び樹脂濃度が法的基準を超えており、人体に有害だと訴えていた。しかし、安全生産監督管理局は現場で監査を行った結果「A公司の複合樹脂加工現場では2013年5月以降オゾンを使用しておらず、使用している樹脂も全てポリマー樹脂であり、非危険科学薬品に属する。職業危害要素目録に該当する事実は無く、労働上の安全衛生を脅かす要素は見受けられない、と結論付けた。

その後A公司は、李氏がベテラン従業員であることを考慮し、話し合いの末李氏を総務部所属の搬送業務へ配置転換すると共に、李氏へもしこれに同意しない場合は元の職位のままでいても構わない、と伝えたが、李氏は自身の疾病を理由として業務に従事することを拒否した。李氏は元の職位に戻らず、また新たな職位に就こうともせず、職責の履行を拒否したため、数時間の間機器が動かせない事態となった。

A公司は社内規定に基づき工会で意見を求めた後、李氏との労働契約を解除する決定を下した。

李氏はA公司が違法な労働契約解除を行ったとして仲裁を申し立て、A公司へ違法な労働契約解除における損害賠償金の支払いを求めた。

裁決:

仲裁庭は、李氏の請求を棄却した。

分析:  

この事実を見るに、A公司の規定制度は法に基づいた手続きを踏んで(工会の意見を求めて)制定されており、内容も法律上の強制規定に違反したところはなく、審議において根拠となりうるものである。

李氏は、その職位に労働安全衛生上危険な要素が見られないにも関わらず、三回に渡り社内の規定制度に反し職場を勝手に離れている。李氏の業務拒否は「中華人民共和国職業病防治法」に規定する「労働者が、職業病の危険性がある業務に従事することを拒否する権利を有する」場合には該当せず、A公司による二度の警告処分と一度の厳重警告処分は妥当であると言える。

李氏は複合樹脂加工現場での業務に従事する前の2012年10月、すでに健康診断で慢性的咽頭炎を指摘されていた。また、李氏は「臭覚麻痺」を理由として配置転換を申し出、A公司は話し合いの末李氏を生産現場から異臭のしない搬送業務へと転換し、これに同意しなくても元の職位で業務に従事できるとしたにも関わらず、李氏は身体の疾病を理由として業務への従事を拒否し、彼が職責を果たさなかったために生産機器が数時間に渡って停止する事態となった。

これら一連の李氏の行動は労働紀律に反するばかりでなく、重大な規定制度違反となる。A公司は自社の規定制度を示し、これに基づいて労働者を解雇した事実を示せば良い。A公司に損害賠償金を支払う必要は全く無いと言えるだろう。