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1月24日---2017年度「中智日企倶楽部・智櫻会回顧座談会」開催のご報告(2018年1月24日)

 2018年1月24日、「中智日本企業倶楽部・智櫻会回顧座談会」を中智研修室で開催しました。中智日本企業倶楽部・智櫻会会員企業60社余りから中日の中高層管理者の代表が一堂に会し、この一年間の成功経験、泣き所の交流、将来への発展の課題と展望について皆様と共有しました。


 座談会は、中智上海経済技術合作有限公司日本企業倶楽部部長の馮串紅が司会を務めました。

 
■冒頭、馮串紅部長より2017年度中智日本企業倶楽部・智櫻会の活動報告を行いました。


 2017年、中智日本企業倶楽部・智櫻会は30回の会員研修、2回のフォーラムを共催し、2期の課長塾を開催しました。日系企業の高層経営者やHRD中国人幹部人材28名に対するインタビュー、323回の情報発信、自作書籍7冊、上海外資企業青年協会及び上海市新経済組織高管研修班に日系企業の優秀人材20名の推薦を行いました。

 中智日本企業倶楽部・智櫻会は、研修、情報発信、書籍等の人力資源の有形サービスを基礎に、中智グループのプラットフォームを活用し、日本の政経機構との交流を通じて日系企業の為により高度な情報を提供し、上海市政府機構に会員企業の優秀人材を推薦することを通して、上海市の建設などに共同参加する方法で日系企業の上海政財界での地位と影響力を高めました。有形サービスと無形サービスを結合させる方法は、多くの会員企業に好評いただき、国内外の多くのメディアに注目され報道されました。



 
  続いて「中智日本企業倶楽部・智櫻会回顧座談会」のパートに移りました。座談会のゲストには、キヤノン(中国)有限公司上海分公司の栄副総経理、富士フイルム(中国)投資有限公司の姚部長、新日鉄住金軟件(上海)有限公司の鄭本部長、三菱電機機電(上海)有限公司の張課長、上海特殊陶業有限公司の厳部長、上海艾杰飛人力資源有限公司の馬総監、帝人商事(上海)有限公司の虞課長と片山部長、平田機工自動化設備(上海)有限公司の張副総経理等、有力日系企業の管理者の皆様に代表として登壇していただきました。   

 
■フォーラムテーマ1:今年最も成功した事例の共有

 
今年最も成功した事例について、あるゲストから最初に伝統的な日系企業が欧米の管理モデルを取り入れた話題が出されました。企業が「安定の10年」から「イノベーションの10年」に向かう節目にあたり、会社に4名の欧米経験のある高級管理者を迎え入れました。最初は、従業員と欧米式の管理モデルが非常に抵触し、日系企業の考え方と欧米企業の考え方に激しい衝突が生じました。しかし、新しいモデルの成果が徐々に現れるにつれ、従業員の意識は会社の新しい理念の下により良い方向に発展し、日系企業の長年の「落ち着いていて、平穏である雰囲気」を打破し、欧米式への融合も抵触から承認へと変化しました。過去10年は、日系企業の考え方を持つベテラン社員が墨守していたが、続く10年は欧米式の考え方を持つ若い人材がイノベーションを切り拓いてくれることを願っています。伝統的な日系企業が欧米人材を取り入れた話題は、会場のゲスト達も成功体験として共有しました。企業の競合先の50%が欧米企業であることから、欧米企業の従業員を多く採用しています。2019年には、会社の経営会議等の重要会議は英語を共通語として使用する予定です。人事管理と従業員研修は、異なる地域、異なる経歴の従業員を同じプラットフォームに入れ、開かれた精神で独自の企業文化を建設する必要があります。

 
今年最も成功した事例を共有する中で、異なる地域間の転勤も皆様の関心が非常に高いテーマでした。上海公司の幹部を成都に国内転勤させるだけでなく、シンガポール、マレーシア、インド等へ海外転勤させるなど、中国人従業員を居住地から離れて「重い腰を挙げ」させるのは、とても困難な事のようです。ゲスト代表の経験によると、はじめて成都公司へ派遣した際、自分の落下傘的な身分と地域の違い等を非常に心配していましたが、実際にチャレンジした結果は、予想外にうまく行き、非常に達成感がありました。いわゆる「転がる石には苔は生さない」と言うように、多くのジョブローテーションは、視野を広げるだけでなく、問題を考える視点の高さと融通性を高め、自分を平穏な倦怠から新鮮な活力へ変えることができます。




 人材の育成についての話題では、会場にいるゲストの多くがジョブローテーションに同意し、同時に所属する企業に特有の研修経験を共有しました。会社は2015年から、中国市場の急速な変革に対し、今後3年~5年のうちに外部環境の変化が惹き起こすであろう部門業務の変化の課題に対し、異なる階級の従業員に研修を行っています。研修最後の発表会では、十組のグループに分かれて各自に提案し、そのうち3つの提案が2018年にそれぞれ実施されます。この研修方式も本社から高い評価を得ています。   

 ゲストのIT企業の代表からも、最も印象深かった話題を共有していただきました。変革の少ない伝統的な日系企業として、全ての新入社員の採用面接と従業員の離職面談は人事部長が自ら行う必要があります。しかもIT業界は従業員の流動率が高いことから、人事業務に大きな負担を生じています。資産が少なく人材の価値が重いIT業界について言えば、人材の安定性の維持が重要な課題となります。より良く人材を定着させるため、会社では継続的に6つの事業部門の責任者に中国人を任命し、加えて会社内部の従業員が起業できる「孵化器」プロジェクトを推進し、従業員が民営企業に流失したり自ら起業したりすることを防止しています。日系企業の新世代IT従業員の流出と惹きつける力の話題には、会場のIT企業やゲストの皆様も共感を示していました。高い離職率、新卒生の採用難、低賃金が指摘され、ある代表は、オタクやITマニアの男性は、好みが特殊でイベントやある種のピンポイントな福利を提供すると、IT新世代従業員を企業に惹きつける有効な方法になると指摘しました。もともとの日系企業の賃金テーブルを打ち破り、90年代生まれの価値観に合った一連の就業制度を制定することが、日系IT業界にとって人材争奪の課題となっています。   

 人材離職の話題では、ゲストの皆様の目が真剣になり、将来の離職と失業の問題について深く議論しました。将来、個人の離職の増加問題から、部門ひいては企業の「構造的失業」問題へと転じてゆくでしょう。類似のケースでは支付宝の普及により、支払い時にお釣りを待つ間に買うガムの販売が大幅に減少したり、出前ソフトを使用して外出せずに食事が出来るようになったことで、インスタントラーメンの消費が大幅に減少したなど、将来、類似のケースがますます増加することでしょう。我々を打ち負かすのは、同業のライバル企業ではなく、思いもよらないハイテク企業である可能性が十分にあります。それゆえに、企業の高層管理は日常業務において権限を適切に委譲し、企業管理の規範プロセスを制定し、「人治」から「法治」へ向かわなければなりません。この様に高級管理者を煩雑な管理業務から一部の時間を開放し、業界と会社の戦略的な方向性を考える事に用いることで、全体の方向性から企業の発展を護ることが可能になります。   




 
■フォーラムテーマ2&3:在中日系企業中国人管理者層が最も関心を寄せる課題&理想の駐在員像

 「構造的失業」の話題が、ゲストの皆様の「危機」意識を呼び覚ましました。あるゲストは、会社が現在に至るまでペーパーレス化を実現できておらず、多くの業務過程で紙の資料を決済しなければならないと述べていました。市場の変化について行かなければならないのに、冗長なプロセスを踏まなければならないことこそ、彼女が最も危機感を抱いている点です。   

 日系企業における内部決済の煩雑さについては、参加者達が次々とその悩みを打ち明けていました。日本人駐在員を代表したゲストの発言では、日本本社で勤務していた時には、その煩雑さや遅さをあまり感じていなかったが、中国に来ると、決済を待って進める日系企業の業務プロセスに対し、中国の効率的な「迅速」決済は脅威だと感じました。中国で新たな商機を見出し、日本本社へ申請した際、社内で決済が下りるまで一年かかると言われた事もあるそうです。市場は刻一刻と変化し、商機が瞬時に消えてしまう中、多くの在中日系企業従業員が中国と日本のスピードの違いに苦悩しています。あるゲストは、この問題を解決する為には、中国に赴任する駐在員は本社でも職級が高く発言権がある管理者でなければならない。中国支社の決定権を大きく認めるか、もしくは本社の決済を迅速に行う必要がある。また、もし中国支社の営業総額がグループ内で大きな割合を占めるのならば、現地での決定権と本社での発言権を大きく強めるべきだ、との見方を示していました。   

 日系企業の駐在員と言えば、まじめで辛抱強く礼儀正しいが画一的だ、というのが彼らの持つ第一印象です。参加者らは、各自に理想の駐在員像を思い描きました。現地従業員とのギャップを埋め彼らに溶け込める者、その身をもって人事業務と企業文化の確立を体現できる者、部下の行為に責任を持ち部下たちの信任を得る者、業界の視点と長期的視野を持つ者、中国現地の状況を本社へ反映させ現地化を推進できる者……駐在員は、2-3年の短期間で頻繁に入れ替わるのではなく長期的に滞在すること、また現地企業を本社の人材育成の場として使うのではなく、中国での問題を真に解決することを求められています。   




 夫々の発言を受けて、日本貿易振興機構上海代表処高級顧問である王淅女史は、「本日のフォーラムを通じて、中智が日系企業現地化推進の重要な触媒だと認識しました。目下、中国側の管理者層へピンポイントの研修サービスを提供するとともに、中国の国有企業としての振る舞いと努力をもって、中国側の人材を日系企業の中堅レベルにまで引き上げているのです。日系企業の現地化が難しいとしても、問題解決の鍵を握るのは日本本社の組織設計、特に決定権の付与と迅速な決済にあります。とはいえ、成熟した海外の人材は現地化にとって必要であり、また現地化のきっかけともなります。『千里の道も一歩から』、中智が引き続き日系企業の皆様に多大な支持を得られることを望んでやみません。私たちも不断の努力を続けて参ります」との言葉を述べていました。   


 話題となった「日系企業のスピード」の問題について、中智日本企業倶楽部・智櫻会特約講師の李偉先生は別の角度からの見方を示しました。李先生は、決済速度の高低はそれぞれにメリット、デメリットがあるとしています。例えば国内民間企業が数名の株主による迅速な決済を行ったとしても、短期間で出せる決済がすべて正確である保証は何もありません。完璧な人間は存在し得ないのです。2018年、日系企業は国内民間企業と同じく「変化」のなかにありますが、この「変化」を如何に安定して行えるかもまた非常に重要な課題なのです。   


 最後に、中智日本企業倶楽部・智櫻会の馮串紅部長は、「日系企業は安全航行を行う巨大船舶のように、安全と安定を最も尊ぶ経営を行っています。一方で、日系企業は中国の成長に歩調を合わせ、正確な判断を下し、適時調整を加えなければなりません。優秀な従業員は前途の見えない企業を出ていくでしょうし、また変化に対応できない従業員は企業から淘汰されていくでしょう。HRは自社の本業を熟知して初めて、真の意味で会社の急速な成長と並行したサポートを提供できるのです」と会を締めくくりました。   


 
■日系企業のベテラン幹部へ退職セレモニー

 中智日本企業倶楽部・智櫻会会員企業である帝人商事(上海)有限公司人事課長の虞金香女史は今年定年退職し、19年間に渡る日系企業でのキャリアにピリオドを打つこととなりました。

 人事の仕事とは孤独なものです。総経理と従業員双方の圧力を受けながら、多くの予測できない補佐的業務に向かわなければならないのです。虞課長は席上、「会計業務から人事業務まで、従業員数が50人から160人になるまで、会社の成長を見届けてきました。私自身、19年間地道にこつこつとキャリアを重ねたこの会社に、深い感情を抱いています。今日私は会社を離れ、若い人へ活躍の舞台を譲ることとなりました。帝人公司の今後の発展を心から願っています」と、感情豊かに話されました。



 セレモニーに参加した中智創新研発中心責任者の龍燕梅は虞課長へ深い敬意を表し、キャリア管理の講師として、虞課長のキャリア管理は完璧なお手本となるものであったと称えました。一つの会社を守り抜いた19年間は、会社の価値観、使命感への賛同と深い愛情に満たされたものであったでしょう。新世代の従業員は自己価値の実現を渇望していますが、価値とは仕事をもって初めて体現されるものです。企業と従業員が雇用被雇用関係を打破し、スクラムを組んで従業員の職業的価値の実現と企業の成長を共に成し遂げていく、これこそがキャリア管理の理念なのです。この理念は、今年以降企業の人事管理に生かされていくことでしょう。


 今回のフォーラムでは、三井金属、イオン、ダイキン(中国) 、KDDI、アルプス、クレハ(中国)等60社余りの会員企業が中智に集い、4時間余りの交流を経て、座談会の熱気冷めやらぬ中フォーラムは無事終了の時を迎えました。参加者達は惜しみなく自身の成功体験とボトルネックについて語り、交流を通じて相互に学び、解決への道筋を整理し、さまざまな角度から問題をフォーカスしていました。問題を高度に、かつ深く検討できたのは日系企業中国側管理者の職業的素養や業務遂行能力の高さを如実に示したものであると言えるでしょう。





 
2018年は日中友好条約締結から40周年の年であり、在中日系企業の成長にとっては引き続き良好な環境にあると言えます。中智日本企業倶楽部・智櫻会はこれまで同様、会員企業の皆様へ高品質の包括的人的資源サービスを提供して参ります。

 
市場も、日中関係も、雇用形態も変化の真っただ中にある中で……2018年「変化」の環境下にあって、中智日本企業倶楽部・智櫻会は引き続き研修、コンサルティング、交流事業を誠心誠意行って参ります。初心を忘れず、会員企業の皆様が中国で再び成長していくために助力していく次第です。