ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】使用者は、労働者が会社に内密で家族をサプライヤーとし、私利を営んだ行為を理由として労働契約を解除できるか?(2018年12月24日)

【判例】使用者は、労働者が会社に内密で家族をサプライヤーとし、私利を営んだ行為を理由として労働契約を解除できるか?(2018年12月24日)

案例:

陶氏は2000年11月某コンピュータ会社へ入社した後、設計士から技術者、事業経理、上級事業経理、部門総監など、多くの職種を歴任してきた。

2010年11月、会社側は陶氏と期間の定めのない労働契約を締結した。陶氏は、2015年1月よりモバイルPCの設計総監に就任し、賃金は月9万元に及んだ。

陶氏の母である劉氏は2003年3月にPCのネームプレートを生産する会社を立ち上げ、劉氏はそのまま会社の法定代表者となった。その後2003年9月より、劉氏の会社は某コンピュータ会社のサプライヤーとしてネームプレートの生産を始めた。陶氏は2012年1月に部門総監に就任した後、部門内で定められた「商品設計企画書」に「(自社のPCには)一級サプライヤーの提供するネームプレートを使用する」旨の記載があることを理由として、劉氏の会社へ独占的にネームプレートの生産を行わせていた。

2017年1月、会社側は陶氏がこの利害関係を明かさず、また直接的及び間接的に職務上の立場を利用して母親の会社に有利な決定を下したことが、会社との「利益相反」禁止規定に該当するとして、陶氏との労働契約を解除した。

陶氏は労働契約の解除を不服として労働争議仲裁を申し立て、違法な労働契約解除に対する損害賠償の支払いを求めた。

仲裁委は審理の結果、「陶氏は会社側から高額の労働報酬を受け取る一方、職務上の立場を利用して、会社側の人的資源を取り仕切り利益を外部へ供与することで会社側の利益を損ね、私利を得た。この会社の規定制度における禁止事項に明らかに抵触している事実を、長期に渡り会社側へ報告しなかったことが、誠実信用の原則に反するのは明白であり、また職場における基本的社会通念にも抵触していることから、陶氏の請求を棄却する」との判断を下した。

分析

「恩を仇で返す」ように、私利を営み不正に会社の利益を搾取してはならない。

労働契約法第三十九条第(三)項には、「労働者が重大な職務怠慢や私営行為によって使用単位に対し重大な損害を与えたときは、使用単位は(当該労働者との)労働契約を解除できる」とある。

本案件において、陶氏は会社の規定制度に反し、利益相反であることを知りながら故意にこれを報告せず、職権を利用して他社との正当な競争を排除し、会社側の利益を明らかに害した。このような「恩を仇で返す」は法で禁じられているだけでなく、職業道徳にも反する行為であるから、会社の労働契約解除は合法であると言える。