ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】総合労働時間制の周期内に労働契約が解除された場合、その期間の時間外手当はどのように算定されるか?(2020年03月30日)

【判例】総合労働時間制の周期内に労働契約が解除された場合、その期間の時間外手当はどのように算定されるか?(2020年03月30日)

案例

夏氏は某物業会社と労働契約を締結し、総合労働時間制で保安業務に就いていた。当地の人社局は会社側による保安職位での総合労働時間計算制採用を認めており、その算定期間は2016年12月13日から2017年12月12日とされていた。この期間は労使双方の労働契約期間内であり、会社側は夏氏の労働時間を管理していた。2017年4月1日、夏氏は退職し、双方間の労働契約は解除された。その後夏氏は法定標準労働時間を根拠として会社側へ2017年3月までの時間外手当を請求したが、ついに訴訟に発展した。

判決

一審は、労働部「不定時労働時間制及び総合労働時間制実施企業の批准に関する辯法」第5条から、「総合労働時間制は週、月、四半期、年などの一定周期における労働時間を総合して算定するものだが、一日及び一週間の平均労働時間基準は標準労働時間制と同一である。すなわち、総合労働時間計算周期内において、もしある周期における労働者の実際の総労働時間が法定労働時間を超えたときは、その超えた部分について労働時間が延長されたと見なし「中華人民共和国労働法」第四十四条一項に基づき賃金を支払わなければならない」とし、夏氏の請求を認めた。

分析

業務の性質が特殊であったり、生産時期にムラがあるため従業員を集中して使用し、また集中して休ませる必要がある職位について、使用単位は労働行政部で総合労働時間制の適用を申請することにより、時間外手当などのコストを減らすことができる。

総合労働時間制は勤務時間を一日単位で算定するのではなく、週、月、四半期、年などの一定の周期を定めて勤務時間を算定するものである。総合労働時間計算制の周期内は、一日の勤務時間が8時間を超えても良いが、その周期内の平均労働時間は法定労働時間基準を超えてはらならない。例えば、使用単位が年単位の総合労働時間制を採用している場合、一年のうちある一日の労働時間が8時間を超えることは認められる。ただし、一年間の総労働時間が2000時間(8時間×勤務日数250日=2000時間)を超えてはならないのである。

総合労働時間制における時間外手当の支払いに際しては次の点に注意が必要である。

1、ある企業が総合労働時間制を採用するときは、「労働契約法」第四条に定める民主的手続きに則り、まず従業員の意見を聞き、その批准を経て公示する(あるいは労働者へ告知する)必要がある。労働契約を履行している間に労働時間制度に変化があったときは、使用単位は法に基づき労働契約を変更しなければならない。

2、総合労働時間制の有効期間を超えたときまたは総合労働時間制を採用している職位に変化が生じたときは、再度批准を得なければならない。批准を受けていていなければ、標準労働時間に反する法的リスクを負うことになる。

3、総合労働時間制に該当する従業員に対しては、「労働法」や「国務院職工労働時間に関する規定」に基づき、集中勤務や集中休暇、輪番制や調整休を適切に按配し、従業員の休息休暇を得る権利を確保した上で、業務を達成させるようにしなければならない。また、調整休をうまく活用し時間外手当のコストを抑制することも重要である。

4、総合労働時間制の周期内に法定労働時間を超えて労働した場合は、その期間において日給及び時間給基準の150%を下回らない時間外手当を支払わなければならない。総合労働時間制の周期内で法定祝日に労働したときは、その期間において日給及び時間給基準の300%を下回らない時間外手当を支払わなければならない。

もし総合労働時間制の周期内に労働者との契約が終了し、または労働契約が解除されたときは、その期間における時間外手当はどのように算定すべきか?

この問題における時間外手当の算定方式は、実は各地方によって異なっている。例えば、「北京市企業不定時労働時間制及び総合労働時間制実施辯法の通知」によれば、使用単位と従業員との労働契約が終了、解除され、なお総合労働時間制の周期が残っているときは、労働者が実際に労働した時間で法定労働時間を超える部分について、使用単位は労働者本人の日給または時間給の200%を下回らない範囲で時間外手当を支払わなければならない」と定めている。