ホーム > HRニュース > 中国HRニュース> 【判例】試用期間にある妊娠中の労働者が4回遅刻したことを理由とした労働契約解除は合法となるか?(2020年10月31日)

【判例】試用期間にある妊娠中の労働者が4回遅刻したことを理由とした労働契約解除は合法となるか?(2020年10月31日)

案例:

関氏は2016年7月11日、広州市にあるアパレル会社へ入社し、商品主管職に就いた。労働契約期間は2016年7月11日から2019年7月11日までとされ、そのうち2016年7月11日から2017年1月10日までを試用期間としていた。

労使双方は「試用期間採用条件説明書」を交わしていたが、この説明書には「関氏が以下の情況の一つに該当するときは、会社側は採用条件を満たさないものとみなし関氏との労働契約を解除する権利を有する……(10)試用期間内に、法に定める理由を除き2日以上欠勤した、もしくは3回以上の遅刻があったとき、または無断欠勤があったとき……」との記載があった。

2016年12月6日、会社側は関氏に対して「試用期間終了証明書」を交付し、試用期間内の勤怠情況と資料の真実性を調査した結果、関氏が採用条件を満たさなかったことから、関氏との労働契約を2016年12月6日をもって正式に終了すると通知した。会社側は労働関係の終了を通知したとき、関氏は妊娠していた。

2016年12月8日、関氏は広州市労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ労働契約を引き続き履行すること、職務や業務内容、賃金待遇(7500元/月)を回復することを求めた。

2017年1月16日、広州市労働人事争議仲裁委員会が関氏の申立を棄却したため、関氏はこれを不服として法院へ提訴した。

関氏は、「懐妊を会社側に事前に伝えていた状態にあって、会社側が2016年12月6日に突然試用期間に採用条件を満たせなかったことを理由として本採用を見送ったことは、『労働法』及び『女職工労働特別規定』第五条に反する。遅刻はほんの数分間であった上に業務上のミスも犯さなかったのだから、会社側は遅刻に対する相応の処罰を下すべきである。また会社側は何度も、より長い時間遅刻した同僚は解雇しておらず、公平の原則に反する」と主張した。

判決:

一審は、「関氏は『試用期間採用条件説明書』を確認した上で署名しているため、不採用条件についての約定は会社側の管理の根拠となる。関氏は『試用期間採用条件説明書』第(10)項目に示された要件に符合しており、3回以上の遅刻があったことは法院でも認められる事実であるから、当該労働契約の解除は『中華人民共和国労働法契約法』第三十九条の規定に反しない。

関氏の求める労働契約の継続履行及び賃金の支払いについては、事実の根拠及び法的根拠を欠くことから、これを支持しない。また本案件は30日前の書面による労働契約の解除予告が必要なケースではなく、また労働契約の解除理由も関氏の妊娠及び出産を理由としたものではないから、『中華人民共和国労働法』第二十六条及び『女職工労働特别規定』第五条に反するものではない」とし、関氏の訴えを退けた。

一審判決後、関氏はこれを不服として、広州市中院へ控訴した。

広州市中院は、「『中華人民共和国労働法契約法』第四十二条には、『使用単位は、妊娠期、出産期、授乳期にある女性の労働者について、本法第四十条、第四十一条の規定に基づく労働契約を解除してはならない』と定められている。また、同第三十九条には、『試用期間中に採用条件に合致していないことが証明されたときは、試用単位は当該労働者との労働契約を解除できる』とある。ゆえに、本案件の争点は会社側の採用条件を満たさなかったことによる関氏との労働契約解除が合法か否かという点であり、労働契約の解除時に会社側が関氏の懐妊を知り得たか否かは本案件の争点とはならない。

会社側の勤怠記録から、関氏は2016年9月10日以前に4回遅刻しており、会社側の採用条件を満たさないことから、会社側の労働契約解除を法律の規定に反しない」として、関氏の控訴を棄却した。

分析:

この案件のように、わずか4回遅刻しただけで労働契約を解除するのはあまりにも厳し過ぎると言えるが、その内容を見ていくと会社側は決して違法行為を行っていないことが分かる。

「労働契約法」第三十九条は、「試用単位は、労働者に下記の状況のいずれかがあるときは、労働契約を解除することができる。(1) 試用期間中に採用条件に合致していないことが証明されたとき…」と規定されている。すなわち、労働者が採用条件を満たさない場合、会社側は労働契約を解除できると法で定めているのである。

このことから、労働者と事前に採用条件を定めておくことの重要性が分かる。道理は至極簡単で、採用条件が無ければ当然に不採用条件も存在し得ないからである。

試用期間に採用条件を満たさなかったことを理由として労働契約を解除するときは、以下の点に注意が必要である。

1、約定した試用期間が合法か否か。試用期間は、「労働契約の期間が三ヶ月以上一年未満のときは一ヶ月、労働契約の期間が一年以上三年未満のときは二ヶ月、労働契約の期間が三年以上または期間の定めがないときは六ヶ月」を超えてはならないのである。

2、試用期間満了後の労働者が採用基準を満たしているか否か。労働者は試用期間のうちに採用条件を満たす必要があるが、労働者が不採用となる情況としては以下のものが挙げられる。

(1)労働者が誠実信用の原則に反し、修了証書や身分証、パスポートなど個人を証明する書類などを偽造し、労働契約の履行に影響を与える自身の基本的情報について隠蔽または詐称したとき。または履歴、知識、技能、業績、健康状態などが実際と大きく異なるとき。

(2)試用期間に業務上の失敗があったとき。失敗の基準は労働法における関連法規や使用単位の規定制度、双方間の労働契約によって判断される。

(3)労働者が双方間で約定した使用単位側の採用条件を満たせないその他の情況にあるとき。

3、労働者が採用条件を満たせなかったことを証明するのは使用単位であること。実践においては、使用単位が採用条件を約定したか、労働者が試用期間内に採用条件を満たせなかったことを証明する客観的な記録や評価が存在するか、が問われる。

本案件においては、労使双方で約定した「試用期間採用条件説明書」において、「試用期間内に、法に定める理由を除き2日以上欠勤した、もしくは3回以上の遅刻があったときは、採用条件を満たさないものとみなす」と約定されていたため、会社側の労働契約解除は有効と見なされたのである。