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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第10回

『上海高信国际物流有限公司 森川 哲也 董事・総経理インタビュー!』  2013年10月17日


上海高信国际物流有限公司
董事・総経理 森川 哲也 氏

  ●  「新生」上海高信が本腰で取り組む人事改革

  ●  自由貿易試験区の始動でサービス拡充に弾み

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

株式会社日新の上海現地法人で総合物流業を営む上海高信国際物流有限公司は、設立から20年を節目にした経営組織変更を受け、人事改革を始めとする経営刷新に取り組み始めました。折しも「上海自由貿易試験区」が始動。従来からの海上輸送、保税物流、エアカーゴ領域での実績に加え、同区の優遇政策を追い風に、さらなるサービス拡充を視野に入れています。同社の“改革”の現状と今後の展望について森川哲也 董事・総経理に語っていただきました。

 

◆◆◆    【新生組織で「ガラスの天井」を排除】  ◆◆◆

(弊社)

本日はお忙しい中、インタビューをお受けいただきまして有難うございます。さっそくですが、 御社、上海高信国際物流有限公司(以下、上海高信と略)は、昨年に会社設立20周年を迎え、経営組織の変更に着手されました。

 

(森川董事・総経理)

 従来の持分比率は株式会社日新が25%、資産運用を行う上海国際集団(SIG)が55%、残りの20%がデベロッパーの上海市外高橋聨合発展有限公司となっていましたが、このほど上海国際集団の持分を日新グループが買い取り、80%を有することになりました。

 ひとつハードルとなったのは「航空一類免許」でした。これはエアラインやスペース、運賃などの交渉や、エアラインの代理店としてB/Lの発行を行うライセンスです。しかし、独資企業がこれを無条件且つ永続的に更新できるかという点に覚束ない面がありました。

 そこでCEPA(中国本土と香港地区の経済貿易緊密化協定)の優遇を享受できる日新運輸倉庫(香港)有限公司がマジョリティーを握ることとなったのです。将来的には、規制緩和の際に外高橋連合が有する20%の持分についても譲り受けることを視野に入れています。

 

(弊社)

 森川総経理が就任されたことで、経営層の人事も一新しています。

 

(森川董事・総経理)

 たとえが適当でないかも知れませんが、鵜飼のごとくすべての従業員を自ら手綱で操ろうとするのは不可能であり、私はできるだけ経営判断について合議制をとることを心がけています。副総経理と総経理助理を2名ずつ置き、私も含めて総経理室を5名体制にしたのも、そんな改革の一環です。

 なお、副総経理、総経理助理各1名については、これまで経営層に入れなかった上海高信の人材を抜擢しています。いわゆる「ガラスの天井」を排除したわけです。

 また、社内イントラネットの活用のほか、工会委員の人たちと総経理室5名と第1回の交流会を始めました。会社としての事業発展のための橋渡しという役割を工会に担ってもらうべく、積極的に意見聴取をしていく姿勢を経営側が見せたのです。

 

 

◆◆◆    【CIの確立と人事改革への挑戦】  ◆◆◆

 

(弊社)

 オフィスビル内も模様替えし、企業ロゴも一新されたそうですね。

 

(森川董事・総経理)

 中国内の現地法人が共通して使えるロゴを一から制作しました。最終的にNissinの英文字に、飛行機の背部、龍の形をあつらえたデザインで落ち着き、これを名刺だけでなく、当社ビルのゲート、作業ユニフォームなどに使用しました。日新グループの上海現地法人に毎日通勤しているという意識を従業員一人ひとりに持ってもらいたいという意図があります。

 

(弊社)

 企業ブランディング、いわばCIの確立をされたということですね。評価制度については如何でしょうか。

 

(森川董事・総経理)

 これまでは業績や個人の評価、賃金支払の査定の仕方が明確ではなく、定性的なものにとどまっていた面がありました。そこで、等級にあわせた公平な賃金支給ができるように整備をしているほか、日新本社の連結子会社として内部統制の体制を確立するべく取り組んでいます。

 

(弊社)

 賃金支払については具体的にどんなメスを入れたのでしょうか。

 

(森川董事・総経理)

 弊社には毎月18日に支払う月間ボーナス制度がありましたが、いまこれを見なおしています。この制度は、エアカーゴ、海上輸送等、それぞれ部門ごとの業績によって割り当てられた点数にしたがい、部門長の権限で従業員の報酬を決める仕組みでした。

 しかし、従業員にとっては好き好みで所属する部門を選んでいるわけではありません。となると、外的環境から、業績がたまたま良くなる部門もあれば、その逆もあるというのは公平性を欠くと言わざるを得ません。生活基盤となる毎月の収入に影響がでてくるジョブローテーションも簡単に実施できなくなることでしょう。

 そうすることで、人事事務の簡素化も視野に入れてます。

 

 

◆◆◆    【労働コスト上昇より大きなハードル】  ◆◆◆

 

(弊社)

 中国では近年、労働コスト上昇が顕著になっています。

 

(森川董事・総経理)

 賃金コストの高騰より問題なのは、高度経済成長の時代が幕を閉じたものの、ふつうに働いていけば賃金は増えていくという常識が従業員のあいだに育ってしまったことにあるのではなないでしょうか。権利意識が高まってきたことで、従業員の側も不満を持ちやすくなっているといえます。

 たしかに、マンパワーが少なくなっても、慣れれば業務を回すことが可能というのが組織の常です。それゆえ、いっそ100名ぐらい人員整理するのも選択肢として考えられることでしょう。しかし、私はやがて日本に帰任する身です。実際に大規模なリストラ策などを講じて大きな労務トラブルに直面した企業の報道を見ると、テンポラリーでアウェイの地にやって来た者が大鉈を振るうのは得策でないと考えます。理想論とは思いますが、顧客満足を実践し、従業員満足に結び付けてゆく行動を継続する方法を選びます。

 

(弊社)

 そのほか制度の見直しにあたって検討課題となっているものはありますか。

 

(森川董事・総経理)

 頭を悩ましているのは福利厚生制度でしょうか。もともと国営のバックグラウンドをもつ会社ですと消費カード等が従業員に配られますが、これらは現金化することができます。すると、従業員によっては福利厚生と認識せず、生活収入の一部とみなす人がでてきます。

 会社としては、従業員に対して、収入と業績、そして福利厚生は全く別のものであることをきっちりと再認識させることが必要でしょう。また、今後景気が横ばい、あるいは下降していくことも想定されるとしたら、賃金が必ずしも上がっていくわけではないという意識づけも大事になってくるかと思われます。

 

 

◆◆◆    【自由貿易試験区のインパクト】  ◆◆◆

 

(弊社)

 上海自由貿易試験区が始動しましたが、どのように受け止められていますか。

 

(森川董事・総経理)

 現在は、自由貿易試験区の動きに乗り遅れないように、関連セミナーに頻繁に参加するなどして、情報収集に努めているところです。

 自由貿易試験区の始動は、これまで外高橋保税区から内陸部の物流園区に移っていた業務を外高橋に取り戻し、ここを再び活性化させようという試みでもあるといえます。弊社は自由貿易区に所在することで、優遇政策をいち早く享受できるというアドバンテージがあります。24カ国に置かれる日新グループの拠点ネットワーク、中国25拠点のアセットを使い、海上航空、保税物流、国内物流事業をバランスよく運用し、より多くのお客様に弊社を利用してもらえたらと思っています。

 

(弊社)

 人事政策面ではなにか恩恵がありますか?

 

(森川董事・総経理)

 自由貿易試験区に属する企業としてクローズアップされれば、人材募集がしやすくなるというメリットはあるかと思います。これまでは交通が不便というのが外高橋の第一印象でしたが、ステータスを感じてくれる人が増えていくとすれば有難いことです。ただ、不動産価格と同様に人件費だけが高騰してゆくのであればいただけません。

 

 

◆◆◆    【アウェイの戦いで配慮すべきこと】  ◆◆◆

(弊社)

 上海ほか大連での駐在を含めると、森川総経理の中国ビジネス歴は20年近くの長きにわたります。

 

(森川董事・総経理)

 90年代は仕事がすべてに渡ってスムーズに進まなかったのが印象的です。たとえば、揚子江の南ですと冬期になってもスチーム(暖気)の供給がありません。すると、役所の多くではネスカフェの瓶に熱湯を入れて暖をとっている従業員ばかりで作業がはかどりません。また、いまでこそ当たり前となっているGPSも当時はなく、ドライバーが地図を読めないばかりにクライアントに迷惑をかけることもありました。

 大連支店長を務めていた頃に感じたのは、大連に駐在員として赴任されていた人たちの目は穏やかそのものだったことです。当日の午後の時点で飲み会に誘うことも可能で、「中国埋没会」といったサークルをつくったこともありました(笑)。

 対して、上海の駐在員は総じて目がきつくなっている人が多い感じがします。どの業界も上海の現法は内外から注目されやすい分、駐在員のプレシャーも大きく、業務の絶対量が多いことからストレスがたまりやすいといえそうです。私も、里見浩太郎のような眉毛を毎日しております。(笑)。

 

(弊社)

 最後に中国で経営を営むうえでモットーとしていることがあればお願いします。

 

(森川董事・総経理)

 日新グループの場合、中国拠点に赴任している駐在員はベテラン勢ばかりです。しかし、これからはむしろ、「チャイナ・スクール」に頼るのではなく、先進国で普通に経験を積んだ人が責任者として中国に入ってくるべき時代にさしかかっているといえます。難しいことをいわず簡単な言葉で事業を実践していくことが求められているといえるでしょう。

 日本人にとって中国ビジネスは、アウェイでの戦いです。「人材こそ財産」であり、地元に根ざした企業を目指していくことを肝に銘じておく必要があると思います。

 

(弊社)

 本日は、20年以上に渡る中国事業経験、海外物流業界での営業経験に踏まえた貴重なお話をお伺いしました。お忙しい中、大変有難うございました。

 

 

 【森川哲也(もりかわ・てつや)氏のプロフィール】

 上海高信国際物流有限公司董事・総マ~理。愛知県出身。1988年、株式会社日新に入社。91年より中国事業に関わり、航空事業など主に営業畑を歩む。上海、大連に延べ18年にわたる駐在を経験。2010年中外運日新大連支店長、2011年上海高信副総経理。資本構成変更に伴い、2013年6月より現職。

 

 【上海高信国際物流有限公司  様 会社情報】

上海高信国際物流有限公司 
上海浦東外高橋保税区富特北路288号(200131)
Tel.021-5866-0700  Fax:021-5866-0400
URL:http://www.gaosin.com.cn/

上海高信国際物流有限公司様
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