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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第17回

『永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司
    岩本 隆雄 董事長兼総公司総経理インタビュー!』  2014年5月19日


 
永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司
董事長兼総公司総経理 岩本 隆雄 氏

  ● イオンのDNA浸透にらみ制度改革に着手”を

  ● 人材育成にはグループ連携で取り組む

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

アジアで積極投資を続けるイオングループにおける機能会社として、中国で数々のプライベートブランドの商品開発に取り組むトップバリュチャイナ(永旺特慧優国際貿易上海有限公司)。買収合併や経営統合を受けた企業体名称の変更や、雇用体系の見直しなどが社員のマインドに与える影響をいかにプラスのベクトルに変えていくべきか、人事マネジメントでも余念のない取り組みをしています。同社・岩本隆雄董事長兼総公司総経理に伺いました。

 

◆◆◆  【40年かけて築いたプライベートブランドの座】  ◆◆◆

(弊社)

イオングループの快進撃が続いていますが、御社はグループにおいてどんなポジショニングにあるのでしょうか。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

弊社、イオントップバリュチャイナの前身は、イオングループにおいて商社機能を果たしてきた「アイク」(※1)の中国拠点となります。昨年9月の経営統合を受け、現在の称号へと変更されました。

グループにおける機能性会社として、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」(TOPVALU)シリーズ(※2)の開発を行うことが弊社のミッションとなっています。商品開発のスキームそのものはイオンチャイナがつくり、それを受けて弊社が開発に当たり、イオンモールやマックスバリュ、コンビニ(ミニストップ)などの店舗に供給していくという流れです。

なお、商品は日本のマーケットに投入されるものもあれば、中国にある店舗(5月23日現在でGMS43店舗、ミニストップ50店舗、マックスバリュ6店舗)で販売されるものもあります。

 

(弊社)

プライベートブランドというとお値打ち感のある商品というイメージがあります。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

そうですね。NB(ナショナルブランド)と比べて、目安としては3割くらい安く価格設定がされています。

もともとプライベートブランドには、「安全・安心」はもとより、トレードオフという考えが基本にあります。消費者の立場に立ち、過剰な包装やデザイン、機能を省き、買い得感を消費者の方に持っていただこうというわけです。

じつはイオングループがその取り組みを始めたのは40年も前に遡ります。

ちょうどオイルショックを背景に「狂乱物価」が問題になっていた時期でした。NB商品の値上げが相次ぐなかで、カップ麺「ジェーカップ」がイオン(当時ジャスコ)のプライベートブランド第1号となったのです。

当時のカップ麺にはフォークの付属が当たり前でしたが、消費者をヒアリングしたところ、家庭では付属のフォークがほとんど使用されていないことがわかりました。そこで、これを省いて低価格を実現したところ、見事に当たったというわけです。

なお、過去の事例では、再生専用のビデオデッキも、シンプルな機能に割り切ることでヒット商品となった「トレードオフ」の成功例だといえるでしょう。

 

(弊社)

中国で売れ筋のアイテムというとどんなものがありますか。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

たとえば、レモンチップスなどのシリーズが人気でしょうか。ライバル社のプライベートブランドの同類スナックと比べても2割近く安く、また美味しく品質が高いと消費者からも評判が良いようです。

そのほか、ドロップシップといって、日本向けだったのを中国向けに販売している商品のなかにもニーズが高いものがあります。

ただ、NBが歓迎される中国市場においては、プライベートブランドはまだまだ発展途上にあるといえそうです。また、油や醤油などを扱ってみたいと思っても、あいにく価格競争力をもちづらいというハードルがあります。

もっとも、プライベートブランドが普及するのに日本でも40年かかっています。まずはイオンという店舗のブランド力をつけ、プライベートブランドであるトップバリュを売り込み、競争力につなげていくことがイオンチャイナにとって今後の成長のカギとなるのではないでしょうか。

なお、チャイナ・プラス・ワンというように、人件費の高騰を受け、製造業者がカンボジアやミャンマー、ラオスなど東南アジア各国にどんどんシフトしていくとなると、今後は輸入による商品の調達機会が増えていくなど、弊社の業容や体制も変化してことになるかも知れませんね。

 

◆◆◆  【グループ連携で人材育成と活用に道開く】  ◆◆◆

(弊社)

会社名が変更になるなど、従業員にとっても昨年は激動の1年だったといえそうですが、影響はいかがでしょうか。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

商号変更が従業員に与える影響というのはとくにないでしょう。ただ、アイクは商社でしたからイオンとは異なるDNAを引き継いできた職場だったといえます。それゆえスムーズにイオン風の文化を浸透させていくことができるかどうかがリスクといえばリスクといえるでしょう。

もちろん、雇用環境の整備はどんどん進めています。これまで派遣社員というかたちで受け入れていたものを直接雇用に切り替えましたし、組合(「工会」)もつくりました。

こうした変化を良しとするかどうかは個人個人によってとらえかたは違うでしょうが、外部企業の支援を得ながら労働環境の見直しを図るとともに、評価のあり方や研修など教育制度の整備にも着手しています。

 

(弊社)

評価制度においてはどのような工夫をされましたか。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

自分がどのように評価されているのか、まさか上司の好き嫌いで決められてはいないだろうかというのは、中国人ならずとも従業員にとって非常に気になることであるはずです。

大事なのはやはり「公正」な評価。適材適所の方針のもと、評価体系が明確になり、より客観的に点数で評価され、「公正」な配分がなされれば、社員にもやりがいを持ってもらえることでしょう。

それには、たしかな経営方針のもと、会社が個々の社員に「求めている成果」が何であるかをはっきりさせ、上司と相談のもとで業務目標を設定し、それをどれだけ達成したかで評価を決めていくのです。

 

(弊社)

人材育成についてはいかがでしょうか?

(岩本 董事長兼総公司総経理)

イオングループ全体の教育制度が中国にもできあがっており、そこに組み入れて育てていくことを基本としています。

グループによる教育投資は拡大しています。海外研修制度もあり、日本に最大2年間派遣させ、セミナー費用も含めて従業員ひとりに年間17万元を投じるケースさえあります。そういう勉强を通してステップアップしていくことで、従業員が学んだことを業務に反映してくれれば、それは会社のためになるわけで、まさしく従業員の力が高まることが会社の成長につながるのだといえます。一方、従業員にとっても、もっと自分たちで勉强しないとキャッチアップしていけないという、良い意味でのプレッシャーとなっているのではないでしょうか。

なお、育てた人材が流出してしまうのは会社にとって大きな損失となりますが、その点でも、イオングループは「公募制」というシステムを設け、 意欲ある優秀な人材を新たな事業に積極的に配置することで人材の成長を支援する道を開いています。

これは新規事業にまつわる人材募集をグループ全体で行うものであり、必ずしも生え抜きが会社のトップになるというのではなく、いわば優れた人材が仕事や役職を自らつかむことを可能にする制度だといえます。

弊社はこれまで転勤がないことを前提に従業員を雇ってきた背景がありますが、今後、この公募制を背景に、イオン華南などの事業会社とも人材交流を始めようとしています。

 

(弊社)

人材の抜擢や育成にグループ全体で取り組んでいるというわけですね。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

折しもイオン・チャイナの総裁に女性が就任しました。新体制による事業展開が着手したことで、人材活用にはいままで以上にダイバーシティー(多様性)が重視されていくことになるでしょう。弊社でも従業員全体の6割を女性が占めていますが、すでに副総経理をはじめマネージャー職に女性が就くケースは珍しくありません。

なお、イオングループには65歳定年制度が導入されているため、じつはベテラン社員も少なくありません。私をふくめて「高齢者」には、記憶力等のスペックが落ちているとはいえ(笑)、豊かなノウハウを有しているというバックグラウンドがあり、海外の新会社に出向いてカルチャーの啓蒙役を担うことを期待されているのだとといえます。

それにしても、昨年8月の上海赴任により、これまでの引っ越し回数の記録がとうとう15回を数えてしまったというのは何ともいえない気持ちです(笑)。

 

(弊社)

商号が変わって間もない今だからこそ、イオン文化の伝承や啓蒙が必要というグループの配慮なのですね。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

社内のコミュニケーションを活性化させるために、社内報の発行にも携わっています。「総編集長」は私ですが、基本的に従業員が自ら考え工夫して編集をしていくように、社員間のコミュニケーションツールに仕上げています。

たとえばツイッターのリツイートの要領で、発言者が他の社員にバトンをわたしていくリレー コメント欄も設け、従業員全員の参加意識を高める工夫もしています。

これは、マックスバリュ西日本で社長職に就任していたときの経験で、当時の従業員の発案によるものです。

 

◆◆◆  【地域に密着した商品開発を目指して】  ◆◆◆

(弊社)

日本企業の対中投資は近年減少に転じていますが、イオングループの中国展開はひるむことがありません。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

イオングループの理念は平和、地域、人間の尊重であり、そこに国境はありません。お客さま第一に徹し、 アジアナンバーワンのスーパーリージョナル リテイラーとなることがグループの目標です。

4月25日にイオンモール蘇州呉中店(※3)がオープンしました。来年には同市園区にも2号店が開業する見込みのほか、杭州や武漢でも店舗展開が進められていきます。

もともと、「たぬきも狐も出る」立地環境に店舗を開設してきたのがイオン、すなわち旧ジャスコの手法ですが、中国でもモータリゼーションをにらんだ大型店舗を展開してていくことになります。もちろん中国には13億人もいますから、エリアによってニーズも違いますしマーケットの事情も異なってきます。したがいまして、シルバー世代に対応した郊外型モールとしてコンテンツの充実を続けてきた日本のような現象が中国でも再現するかどうかは予断が許されませんが、広大な敷地と地域集中で面を押さえていく戦略が基本になっていきそうです。

 

(弊社)

グループ全体が成長していくうえで、御社が果たす機能もより重要なものになっていきそうですね。

(岩本 董事長兼総公司総経理)

価格競争に陥っていては小売業の未来はなく、カギをにぎるのはプライベートブランドです。トップバリュという消費者に役立つ商品を開発していることが社員一人ひとりにとって誇りになることは素晴らしいことです。社会に貢献している、お客様の暮らしに役立っている、そんな実感をもって従業員が働いていける職場にしていきたいと思っています。

 

(弊社)

本日は、アジアNO1めざし、4月の蘇州呉中店オープンを皮切りに大型店舗展開の快進撃を続けるイオングループの、中国でのバイタリティに富んだ貴重なお話を伺うことができました。お忙しい中、大変有難うございました。

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◆注釈◆

※1 アイク
1979年にGMSチェーンストア5社――ジャスコ(現イオン)、ユニー、イズミヤ、忠実屋、ユニード――の共同出資によって設立し、専門商社として海外商品の共同仕入れを事業内容としていたが、出資企業の経営方針の変更や合併や業界再編などの波を受けて2007年にイオンの完全子会社化。

 

※2 プライベートブランド(PB)「トップバリュ」(TOPVALU)シリーズ
トップバリュチャイナが手がけるプライベートブランド商品。
 ⇒ 「トップバリュ」(TOPVALU)シリーズの御紹介 (クリックして下さい)

イオンモール蘇州呉中店の店頭を飾るTOPVALU商品

TOPVALU商品

TOPVALU商品

TOPVALU商品

TOPVALU商品

TOPVALU商品

 

※3 永旺夢楽城蘇州呉中店
イオンは4月25日、江蘇省蘇州市に華東地区で初めてとなるショッピングセンター(SC)「永旺夢楽城蘇州呉中(イオンモール蘇州呉中)」を開業した。イオンのSCとしては中国13カ所目、イオンモール(千葉県千葉市)が運営する店舗では5カ所目。イオンの店舗としては中国最大の面積で、初年度の来客数1,000万人を目標に掲げた。 (NNA 2014年4月28日付報道から抜粋)

住所:蘇州市呉中区越渓蘇震桃路188号
電話:0512-6262-0180 休日:全年無休 営業面積:112,000㎡ 駐車場:3100
 ⇒ 永旺夢楽城蘇州呉中店の御紹介 (クリックして下さい)

永旺夢楽城蘇州呉中店

永旺夢楽城蘇州呉中店
(クリックすると拡大されます)

永旺夢楽城蘇州呉中店地図

永旺夢楽城蘇州呉中店地図
(クリックすると拡大されます)

永旺夢楽城蘇州呉中店

永旺夢楽城蘇州呉中店
  

 

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 【岩本隆雄(いわもと・たかお) 氏のプロフィール】

 永旺特慧優國際貿易(上海)有限公司(イオントップバリュチャイナ)董事長兼総公司総経理。
大阪市出身。1976年にジャスコ(現イオン(株))に入社後、関東以南の各店舗に勤務。店舗勤務は4年で主に商品部(仕入れ)畑を歩む。
1999年琉球ジャスコ取締役、2002年(株)マイカル商品企画部部長などへの出向を経て、07年にイオングローバルSCM(株) 代表取締役社長、11年 マックスバリュ西日本(株) 代表取締役社長を歴任。2013年8月より現職。

 

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 【永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司 様 会社情報】

永旺特慧優国際貿易上海有限公司 (イオントップバリュ チャイナ)
上海市閘北区共和新路1898號5棟5楼
Tel (021)3387-0707 FAX (021) 3387-1918
http://www.aeonchina.com.cn/

 

永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司   岩本董事長兼総公司総経理 1
永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司
岩本 董事長兼総公司総経理様1

永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司   岩本董事長兼総公司総経理 2
永旺特慧优國際貿易(上海)有限公司
岩本 董事長兼総公司総経理様2