「先進性」と「スピード」で存在感を発揮
三井住友銀行(中国)有限公司
社長 奥山 和則 氏
世界の一流プレーヤーが集まり、激しい競争を繰り広げている中国。三井住友銀行は2009年4月27日、全額出資による中国拠点の現地法人、三井住友銀行(中国)有限公司を設立、強固な顧客基盤を背景に、独自の高付加価値サービスを提供してきた。1,000人に及ぶ陣容を率いる奥山和則社長に現状と今後の展望を聞いた。(2010.9.6)
―邦銀メガバンクとして三井住友銀行(中国)の強みをどのように発揮していかれるのでしょうか。
2008年9月のリーマン・ショック以降、中国は「世界の消費地」という位置付けになりました。中国市場はこれまで高い経済成長を続けてきましたが、今後も長期にわたって成長が続くとの見方が支配的です。
我々金融機関にとっては非常にタフなマーケットではありますが、やりがいのあるマーケットでもあります。高い成長を維持していくことは間違いないので、引き続き大きくコミットしていきたいと考えています。 我々には大きな顧客基盤がありますので、そうしたお客様に高付加価値のサービスを提供させていただくのは勿論ですが、これと同時に中国市場の成長と歩調をあわせて我々が伸びていくために日系以外の企業との取引にも力を入れていきます。
キーワードは『日本』です。日本にモノを売っている、あるいは日本からモノを買っている、そうした企業様との取引を拡大していこうと考えています。
―タフなマーケットとのお話ですが、その中で具体的な取り組みとしては。
中国でもシンジケーションが定着していますが、この分野で我々は2009年に中国の金融機関中で第6位、外資系金融機関で第1位の評価を得ました。2010年上期のシンジケートローンマーケットでは全銀行中第4位、外銀で第1位の実績となっています。資金調達に際して多くの金融機関を招聘し、アレンジャーとしてお客様の大きな資金ニーズに対応できる強みがあります。
もう一つは資金回収ニーズへの対応です。消費地としてモノの売買が拡大していく中で、資金回収の効率化が求められてきます。弊行単独で差異化を図るのは難しい面があるので昨年、ICBC(中国工商銀行)と提携して資金回収システムを構築しました。これは、地場行にあるお客様の口座から弊行の口座への振替サービスで、弊行の支店がなくても、ICBCの支店にモノを売った先の口座があれば、そこから引き落として弊行のお客様の口座に集めることができます。お客様から非常に高い評価を頂戴しています。自力で難しい部分は地場行と提携してお客様にサービスを提供させていただく取り組みを展開しています。
弊行の持ち味は「先進性」と「スピード」であると自負しています。中国でも先進性とスピードをもって差異化を図る手段にしたいと思っています。
―今後の課題は。
中国現地の会社としていかに中国マーケットにコミットしていくかということに尽きると思います。日本と中国の結びつきは、さらに近くなることはあっても離れることはない。経済交流がより一層強くなっていくわけですから、人材の現地化ということも将来の大きな検討課題です。
―わたくしども中智と三井住友銀行様は2009年12月、人材ソリューションを骨子とする業務提携を行いました。中智への期待をお聞かせ下さい。
どの国・地域でも「企業は人なり」です。金融機関として我々は、シンジケーションや事業再編のアドバイザリー、さらには海外進出のお手伝いなど様々なソリューションを提供していますが、人材採用、中国に適した人事制度の構築、労務問題など「人」に関する対応は我々の守備範囲にない部分です。この面で、日系企業をはじめとする各企業が中国で発展するために、ぜひ中智さんの力を借りたい。
企業にとってもアウトソーシングできる部分は切り分けて効率化を図る必要があるわけですから、中智さんには全国ネットで企業ニーズに対応していただきたいし、各企業の人材ニーズをさらにご理解いただき、採用のお手伝いをしていただければ、と思います。採用のみならず、人事制度、労務問題の対応についても力強いアドバイスを提供していただきたい。
―長時間、ありがとうございました。
奥山 和則 氏 (おくやま かずのり)
三井住友銀行執行役員。三井住友銀行(中国)有限公司 社長。1980年3月東京大学法学部卒業。同年4月住友銀行(現三井住友銀行)に入行。東京業務部、国際企画部、国際統括部を経て95年から98年、ロンドン支店に勤務。99年4月日比谷支店長を経て同年10月国際統括部副部長として香港に勤務。06年本店営業第一部部長。08年執行役員(新宿法人営業本部長兼池袋法人営業本部長)に就任。09年4月から現職。新潟県出身。54歳。