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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第25回

『帝人商事(上海)有限公司  鳥居 睦洋 部長 インタビュー!』2015/4/24


 
帝人商事(上海)有限公司
鳥居 睦洋 部長


  ●  管理の仕事は喜んでもらえてこそ価値がある

  ●  本社を超える人財と組織力を中国法人に残したい

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

繊維専門商社として用途を問わずあらゆる繊維製品を扱う帝人フロンティア100%子会社の帝人商事(上海)有限公司。2008年から現地法人の管理部門責任者として着任し、組織改革に取り組んでこられた鳥居部長に、これまでの経験や知見、今後の課題や展望について伺いました。

 

◆◆◆  【帝人グループ商社部門の中核として中国市場を攻略】  ◆◆◆

(弊社)

御社の現地法人の事業内容と中国での位置付けをお聞かせ下さい。

(鳥居 部長)

親会社である帝人フロンティアは帝人株式会社の製品事業グループの中核会社であり、当社は、帝人フロンティアの100%子会社という位置付けになります。中国内販が全体の6割を超える状態で、プロフィットセンターとして、この世界最大の市場を攻略すべく、営業部は邁進しています。   

(弊社)

御社は1996年に中国へ進出されましたが、どの様な製品を扱っていますか。

(鳥居 部長)

設立当初は、衣料部門の対日コミッション取引(中国の工場から日本本社への輸出取引に際し、当社が工場サイドに対しての品質、納期管理等を行い、日本本社から役務料を受取る取引)から始まり、今では衣料部門はカジュアル製品、スポーツ、アウトドアまで扱いを増やしており、内販に軸を移してきています。

当社のもう一つの軸として、衣料品以外の繊維製品を取り扱う産業資材部門があります。例えば、カーテン、自動車の内装用の生地、タイヤにエンジンの動力を伝えるベルト基布、工場の煙突のばい煙を浄化する不織布など、一般の目に触れない部分の繊維製品を扱っています。

この部門は、5年前くらいから、自動車メーカーの工場や部品メーカーの進出の増加に伴い現地での取引が増えてきており、現在は、衣料部門と産業資材部門が両輪となっています。

(弊社)

近年の円安による影響はありますか?

(鳥居 部長)

大きな影響を受けています。対日輸出ビジネスは、いわゆる量販店向けが多く利ざやが小さい商品が多いので、円安の影響だけでなく、労働コストの上昇も考慮すると、商品によってはアセアンシフトにより取引量が減少してきています。

 

◆◆◆  【公平性と全社の統一性ある人事制度の構築】  ◆◆◆

(弊社)

現在の従業員数を教えて下さい。

(鳥居 部長)

当社は、上海に本社があり、その他に大連、青島、広州に拠点を設置しています。従業員数は、上海本社に130名程度、その他の拠点に合計30名あまりが在籍しています。そのうち日本人出向者は15名となっています。

当然のことながら、扱う商品は、時代の変遷で移り変わりますので、各営業の人員構成は、会社の人事政策として見直していく必要がでてくると思います。

(弊社)

2012年に新しい人事制度システムを構築されたそうですが。

(鳥居 部長)

それまでは、全社的な統一された基準や給与テーブルがなく、給与を決める際、各部署の部長が金額を決め、それを総経理が全体のバランスを考慮して決裁する方式を採っていました。この方式だと、人数が少ないうちは良いが、人数が増えてくると機能しなくなると思ったので、当時の総経理に何度も掛け合い、制度の全容を説明し、厳しい質問を受けたうえで、基準の公平性、客観性を確保できる給与テーブルを作ることに同意して頂きました。その際、社員に頑張ればここまで昇進できるという事が励みになると思い、董事までの給与テーブルを作りました。

(弊社)

また、人員構成見直し政策の一環として、人材の流動化策を検討されているそうですが、これはどの様なものでしょうか。

(鳥居 部長)

日本の場合、新卒一括採用を行い、その後に所属部署を決めますが、中国では、まず人材が必要な部署があれば採用し、基本的に採用後に部署の異動は行わないのが一般的です。しかし例えば、ある部署で人材が必要になった際に、いきなり外部で募集するのではなく、まず社内で手を挙げる人材がいるかどうか確認する、あるいは逆にある事業が廃止縮小となり、人材に余剰が生じた場合、今まで頑張ってきた従業員をそのまま辞めて頂くのではなく、他の部署で活躍の場を与えるような仕組みを作りたいと考えています。

(弊社)

去年ご回答頂きましたヒアリングシートでは、経営における重点項目の第1位に商品及びサービスの向上を挙げておられました。これらについて、人事面から何か対策は検討されていますか。

(鳥居 部長)

当社では、グループ会社が一括して行っている、管理職研修及びマーケティング研修に加え、次世代育成のための中堅社員研修、基本的な会社ルールを定着させるための新入社員研修を年間スケジュールに基づき行っています。

しかし、ただ研修を行うだけでは効果は薄く、その研修効果を最大化し、本人の  成長に結びつけ、そしてどの様に人事評価に繋げていくか今後の課題です。

(弊社)

また同様に人事の重点項目として、人事法務整備、就業規則及び労使問題対応を挙げておられました。

(鳥居 部長)

まず、就業規則については、今年の4月に時代の流れで陳腐化した部分を改定し、規則上の罰則条項を具体的に記載する等、従業員にとって分かり易い内容に改定しました。その他に、少ない原資ではありますが、自主的に選択できる福利厚生制度を導入したり、社員旅行をひとつの研修と捉え、若い社員に細部の運用を任せるなど、自主性の育成を試みています。

労使問題対応に関しては、頑張っている社員に対しては最大限に報いる一方で、会社環境や、他の社員へのモチベーションに悪影響を与えていると思われる場合には、中国の法律を順守する前提で、当該社員を厳しく処分していきたい。この場合、経済補償金等のソロバン勘定は関係なく、会社として断固たる措置を取りたいと考えています。信賞必罰は組織として成り立つための基本であり、筋を通したいと考えています。もちろんその前提として、日本人幹部は襟を正し、中国人スタッフの模範となる事を忘れてはなりません。

 

◆◆  【管理の仕事は問題解決だけでなく、喜んでもらえてこそ価値がある】  ◆◆

(弊社)

長く中国で働く中で文化や考え方の違いでご苦労された経験はありますか。

(鳥居 部長)

中国へ赴任した当初は、細かな部分で文化の違いの様なものを感じる事がありましたが、駐在期間が長くなればなるほど、文化の違いを感じなくなりました。結局のところ文化や考え方の違いは、中国人、日本人に関係なく、人それぞれあるのだと思います。

本当の原因は、説明したり、話し合ったりすることが足りてない事にあるのではないかと思います。真剣に説明して本音で語り合えば、必ず理解されると思います。上海法人へ着任直後に手掛けた新しい営業・会計システムの導入時には、納得できない営業マンと毎晩遅くまで話し合い、激高して胸ぐらを掴まれる経験もしましたが、冷静に粘り強く説得すれば、最終的には納得してもらうことができました。

(弊社)

2008年2月に上海法人に管理部門の責任者として着任されてから、業務を遂行する上でどの様なことに気をつけておられますか。

(鳥居 部長)

私は業務を遂行する上で、気を付けている事が三つあります。一つめは、何か問題が発生した時に、日本人対中国人という構図にはならないように気を付けることです。何か問題が発生すると、日本人はこうだと言う論陣を張る者がおり、それを真に受けてしまう者も存在します。日本人だからでなく、中国人マネージャーでも同じ判断をすると言いきり、きちんと説明すれば、納得してくれます。二つめは、私より目上の者に厳しく、部下や若い人たちには優しくすることです。特に、ナショナルスタッフを怒る時は、面子の問題もあるので、別室に呼んで注意します。それに対し、日本人出向者に対しては、公然と注意します。これは、地位に関係なく間違いがあればどんな職位の人間でも注意されることを示す意味があります。三つめは、自分なりに苦心し、正しいと判断したことは、とりあえずやってみることです。もしやってみて、手直しが必要であれば、その時に手直しすればよい。やらない理由を考えるのではなく、実行する理由を考える。何もしなければ、何も変わりません。変化の激しいこの国では、何もしない事が一番良くない事だと考えています。

(弊社)

中国人スタッフに対しては、どの様な指導を心掛けていますか。

(鳥居 部長)

私の業務に限定すると、着任時から部下に対して言い続けている事は、まず、管理スタッフのお客様は、営業部の方々であるという事です。彼らが困った時、きちんと助言し、問題を解決するだけでは足りず、喜んでもらえるようになってこそ、存在価値があるといえます。そのためには、自分の知識を高める事はもちろんですが、より大切なことは、知識を社内で共有し、会社として知識の蓄積を増やすことで初めて会社のレベルが上がる事ができるということです。従って、個人の知識の蓄積のみで評価をしない事を日頃から伝えています。中国では、自分が居なければ仕事が回らないことをアピールする為、自分で知識や情報を抱え込み、重要な部分を見せないようにする人が多い傾向にあります。

そこで、知識の共有を人事評価に加える事により防ぐように工夫しました。そして、業務を遂行するにあたって、その仕事の目的、意味を常に考えながら行うことです。そのうえで、全社的見地から改善すべき事は、意見として上司に挙げること。この様な姿勢及び行動を評価すると伝えています。

 

◆◆◆  【本社を超える規模に成長できる人財と組織を残したい】  ◆◆◆

(弊社)

最後に、これからの中国での展望をお聞かせ下さい。

(鳥居 部長)

当社としては、この世界最大の市場を目の前にする幸運を無駄にするつもりはありません。世界中のライバルを相手にする厳しい競争ではありますが、当社の得意とする きめ細かなコンバーター機能を活かし、取り扱う商品の付加価値を高め、市場に食い込んでいきたいと考えています。そして今後はより中国内販に舵を切っていく事になるでしょうから、中国人スタッフへの教育も並行して進めていきます。

最後に、これはあり得ない事かも知れませんが、私は、いつの日か上海法人が日本本社を超える規模に大きく飛躍して欲しいと願っております。その為の礎になる仕事ができれば本望です。

(弊社)

鳥居部長が上海で取り組んでこられた様々な改革は、語ることは簡単ですが、実行するには多くの困難に直面する非常に難しい改革ばかりです。実際、現地スタッフとの激しい衝突も経験されました。これを実行する事ができたのは、鳥居部長の情熱と覚悟を抜きに語ることができないと感じました。

 

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 【鳥居 睦洋(とりい むつひろ) 氏のプロフィール】

 1965年生まれ。大学卒業後、1990年に帝人商事株式会社(現帝人フロンティア)に入社。入社後、総務(株式法務関係)、人事(労務、給与計算)、経理(主計、連結会計、税務)、企画管理(管理会計制度等構築)、産業資材統括部を経て、2008年上海法人の管理部門責任者として着任し、現在に至る。

 

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 【帝人商事(上海)有限公司 様 会社情報】

帝人商事(上海)有限公司
上海市延安西路2201号上海国際貿易中心2901室
Tel(021)6275‐0400
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http://www2.teijin-frontier.com/

 

帝人商事(上海)有限公司  鳥居 睦洋 部長1
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帝人商事(上海)有限公司  鳥居 睦洋 部長2
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