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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第26回

『一般社団法人 日中経済貿易センター上海事務所  小林 和暁 所長 インタビュー!』2015/5/6


 
一般社団法人 日中経済貿易センター上海事務所
小林 和暁 所長


  ●  日中企業のビジネスマッチングを積極的に展開

  ●  今後も日中両国の経済を盛り上げていきたい

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

1954年から60年以上にわたり、日中経済交流の架け橋として活動を続け、“最初に井戸を掘った”経済民間団体として広く知られる日中経済貿易センター。2003年には上海事務所を開設し、中国で活動する日本企業に現場の視点に立ったアドバイスを行っています。2012年に上海事務所へ着任し、今年の6月に帰任される小林所長に、これまでのご経験を伺いました。

 

◆◆◆  【日系企業だけでなく、中国企業も受け入れ経済交流を支援】  ◆◆◆

(弊社)

現在の活動状況、及び上海事務所の位置付けについて教えて下さい。

(小林 所長)

当センターでは、コンサルティングサービスとそれに付随する情報サービス、展示会やセミナーなど各種イベントの開催、技能実習生の受け入れの三つが主な業務となっています。このうち上海事務所では、コンサルティング業務を中心にセミナー開催、展示会出展等の活動を行っています。

(弊社)

会員企業からは、どの様な相談が多いでしょうか。

(小林 所長)

コンサルティングサービスに関して、以前は中国への投資に関する相談が多くを占めていましたが、2012年9月以降は、中国への投資に関する相談が激減し、現在は日常業務に関する相談が中心となっています。
最近ではとくに昨年来から政策上の動きがあったビザに関する相談をはじめ、中国での販売に関する相談、調達先紹介依頼や各種規制、法務等に関する相談等を頂いています。
また、当センターでは中国企業にも入会して頂いており、中国企業の会員からは、日系メーカーの部品調達先を紹介してほしいという相談が寄せられています。その他、合弁や技術協力をしてくれる日系メーカーを紹介してほしいという相談もあります。変わったところでは、最近、ある中国系建設会社から、日本の安全管理技術を学ぶため、実際に日本の建築現場を見学させてほしいという相談がありました。

(弊社)

中国から大阪に来る商談ミッションを多く受け入れられているそうですが、どの様な商談が多いですか。

(小林 所長)

毎年東京と大阪で「アジアファッションフェア」を開催しています。以前は「チャイナファッションフェア」という名称でしたが、近年アパレル業界は中国以外のアジア地域に広がりを見せていることから、現在の名称に変更されました。毎回400社近くの企業に参加して頂いています。この他山東省や江蘇省政府が開催する展示会の開催も行っています。

 

◆◆◆  【注目のネット販売ビジネスは環境整備の段階】  ◆◆◆

(弊社)

日本企業の中国進出について、これまでの変化をどうご覧になっていますか。

(小林 所長)

私が上海に着任した当初は、中国への進出に関する相談が多く寄せられていましたが、先ほども触れたとおり、2012年9月以降は、残念ながら日本から中国への投資に関する相談は激減しています。しかし、中国へ既に進出している企業の事業拡大に伴う投資に関する相談は引き続き頂いています。

(弊社)

最近、インターネットを使ったビジネス、特に越境ECが注目を集めていますが、これらに関する相談はありますか。

(小林 所長)

中国のオンラインショッピングで行われた「双十一(独身の日)」セールが日本でも話題となるなど、インターネット販売に注目する企業も増えてきている印象を強く感じます。しかし、現実にはインターネットでのビジネスが軌道に乗っている企業はまだそれほど多くないようです。本当にネットビジネスが成功するかどうかは、もう少し様子を見守る必要があります。また、越境ECに関しても、自由貿易試験区に専用のプラットフォームが開設されるなど、日系企業の間でも徐々に関心の高まりを見せていますが、肝心の中国人の方への知名度が低く、発展途上という印象です。現在、日本の大手企業も越境ECビジネスの環境を整えていますが、中小企業にとっては、まだまだこれからという段階です。

(弊社)

これまで多くの企業の方々から相談を受けたりお話を伺ってきた中で、中国で成功されている企業の特徴は何だと思いますか。

(小林 所長)

現場が一番最前線なので、本社の指示どおりに行っているだけではうまくいかない場合が多いようです。現地で判断して本社を説得できるようでないと難しい。現場が判断し、本社の同意を得て経営していく事ができるか、つまりは、稟議と結果だと思います。本社は現地法人を信頼して任せる事が必要ですし、現地法人は自らの責任で判断する覚悟が必要だと思います。

 

◆◆◆  【中国留学がきっかけで日中経済貿易センターに入所】  ◆◆◆

(弊社)

小林所長と中国の関わりをお聞かせ下さい。

(小林 所長)

大阪経済大学在学中、1年間休学し、北京の首都経済貿易大学に語学留学したのが始まりでした。しかしながら、英語が苦手だったので英語以外に何か外国語を話せるようになりたいという単純な発想がきっかけでした(笑)。1998年当時の為替が一万元で五百数十元、現地の平均月収が千元程度だったので、一ヶ月二万円あれば十分生活ができると考えていましたが、ちょうど留学する前年にアジア通貨危機があり、為替が大幅な円高となり、当初の計画よりだいぶ金銭的に余裕が出来ました。そこで留学中はあまり真面目に勉強せず、中国全土を旅行して回っていましたね(笑)。その中でも最も印象深かったのは、往復2週間かけてチベットを旅行し、チョモランマの麓まで行ったことです。中国に来て間もない留学生と旅行し、旅先では見知らぬ外国人と車をチャーターしての移動や現地の方々との交流など、今でもいつ何処に行って何をしたか、鮮明に覚えています。

(弊社)

卒業後、日中経済貿易センターに入所されるきっかけは。

(小林 所長)

大学卒業後、いちど物流会社に就職しましたが、体調を崩し退職する事になりました。その後体調が回復し、転職先を考える際、中国に留学していた事もあり、中国と関わる仕事がやりたいと考えて探していると、日中経済貿易センターの求人を見つけ応募しました。入社試験で出された中国語の問題が驚くほど難しく、まさか合格するとは思っていませんでしたが、幸運にも内定を頂きました。後日、内定の理由を尋ねると、話す中国語が自然だったと言われました。私の留学した大学は規模が小さかったこともあり、日本人のコミュニティだけでなく、韓国人など他国の留学生のコミュニティにもよく加っていました。当然その中では中国語でコミュニケーションを取ることになるので、その中で中国語のコミュニケーション能力が上達したのだと思います。

 

◆◆◆  【今後も日中の経済交流を盛り上げていきたい】  ◆◆◆

(弊社)

中国のコスト上昇によるチャイナ+1の動き、最近では中国経済が「新常態」の段階に入り、大きな変革期を迎えている事などが大きく報じられていますが、これらの状況についてどの様に見ていますか。

(小林 所長)

業績の良い企業、あまり良くない企業と様々ですが、日本で報道されるような撤退が大きな流れとして定着しているとは感じていません。確かに撤退に関する相談も受ける事はありますが、それは、あくまで市場競争の範囲内での問題であり、競争の中で業績不振の企業が出てくるのは、中国でも日本でも変わらないと思います。むしろ中国に進出している大部分の日系企業は、引き続き中国で頑張っていこうと考えており、日中間の経済交流が薄まるという心配はしていません。しかしながら、「新常態」の段階に入った中国経済は緩やかに減速していくものと予想されますので、その中で今後も経営が厳しくなる企業も出てくる心配はあると思います。

(弊社)

2011年の大連事務所を含め中国で4年間駐在され、今年6月に日本へ帰任されますが、中国駐在で一番印象深かったことは何ですか。

(小林 所長)

やはり、たくさんの方々と出会えた事でしょうか。名刺を携帯電話のアプリで管理しており、枚数を確認してみたところ、上海での3年間で2200名近くの方と名刺交換させて頂いておりました。この中には、一度しかお会いしていない方や何度もお会いさせて頂いた方、プライベートでもお付き合いさせて頂いた方など様々ですが、これだけ多くの方々と出会う事ができたのは、非常に印象深く感じます。日本人や中国人、欧米の方など国籍も業界も様々な方々のお話を聞く事が出来たのは、私にとっては、お金には換えることが出来ない一番の報酬だと思います。

(弊社)

最後に、去年60周年を迎えて、今後の展望をお聞かせ下さい。

(小林 所長)

最近、日中関係は改善の兆しが見え始めていますが、日本と中国は、多少喧嘩をしても絶対に別れることが出来ない関係です。そして近い将来アメリカに並ぶ経済規模になると言われている大きな国であり、今後も貿易や経済交流の促進のお手伝いをして参りたいと思います。また、中国の法制度も、徐々に整備されてきていますが、まだまだ分かりにくい部分もたくさんあり、この様な点を整理して皆様に提供していくことも我々の務めであると考えています。そのほか、中国企業にも、日本の事に興味を持って頂き、日中それぞれの経済を盛り上げていくお手伝いをしていきたいと思います。

(弊社)

本日は、小林所長が駐在中の4年間に見てこられた日中ビジネス最前線の生きた情報を伺うことができました。お忙しい中、長時間にわたり有難うございました。

 

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 【小林 和暁(こばやし かずあき) 氏のプロフィール】

 1977年生まれ。大阪経済大学経営学部卒業。在学中に首都経済貿易大学へ語学留学。福山通運株式会社勤務を経て、日中経済貿易センターに入所。入所後は会員サービス、日中間のイベント・展示会の企画運営等を担当する。2011年に大連代表処代表、12年に上海事務所代表、13年に副所長を経て2014年から上海事務所所長に就任し、2015年6月に帰任予定。

 

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 【一般社団法人 日中経済貿易センター上海事務所 様 会社情報】

一般社団法人 日中経済貿易センター上海事務所
上海市婁山関路83号新虹橋中心大厦
Tel(021)6236‐8033
FAX(021)6236‐8090
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