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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第31回

『上海林内有限公司 木村 章一 生産本部本部長 インタビュー!』2015/11/18


 
上海林内有限公司
木村 章一 生産本部本部長


  ●  海外展開好調の秘訣は、「3つのこだわり」にある

  ●  その国の市場に合わせて製品を工夫

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

1920年の創業以来、「熱と暮らし」に貢献する総合熱エネルギー機器メーカーとして日本国内だけでなく海外の消費者からも高い評価を得ているリンナイ株式会社。その中国法人である上海林内有限公司で工場管理の責任者としてリンナイブランドの品質を支える木村生産本部長にインタビューしました。

 

◆  【世界中の人々の「熱と暮らし」に貢献する総合熱エネルギー機器メーカー】  ◆

(弊社)

まずは、御社の沿革と事業内容についてお聞かせ下さい。

(木村本部長)

当社は、1920年に内藤秀次郎と林健吉の両名により「林内商会」として設立されたことに始まります。「林内商会」は、加圧式石油コンロの製造・販売から始まり、昭和初期までにはガステーブルコンロ、ガスレンジ、ガスストーブ、ガス湯沸器などのガス機器にいちはやく取組み、高い信頼と実績を築いてきました。現在は、給湯器や給湯暖房機などの給湯機器をはじめ、厨房機器や空調、業務用機器など様々な分野の商品を、最新鋭の技術で生み出しています。

(弊社)

御社は早くから海外展開をされているそうですが。

(木村本部長)

1970年に台湾で現地法人の設立にはじまり、アメリカ、オーストラリア、韓国、中国、インドネシア、ブラジル、イタリアなど、世界16の国・地域に展開しています。現在グループ会社41社のうち海外法人が25社、日本国内が14社と海外の方が多くなっています。そしてここ数年のうちに、リンナイグループ全体の売上げの半分は海外になる見込みです。

 

◆  【海外展開の目的は、現地の人々の生活文化の向上に貢献すること】  ◆

(弊社)

好調な海外事業ですが、中国事業についてご紹介下さい。

(木村本部長)

上海林内有限公司は、1993年に設立されました。当社の出資比率は、日本リンナイ50%、上海ガス45%、その他5%の日中合弁企業です。当社では、コンロ、ボイラー(床暖房)、給湯器を生産販売しており、売上げの8割が給湯器です。その他OEMによるレンジフード、食器消毒庫の販売にも力を入れています。売上げの94%が中国、6%が日本以外の海外となっています。

(弊社)

早くから中国へ進出され、現在は中国内販にも成功されていますが、やはり進出当初は日本への輸出をメインとしていたのでしょうか。

(木村本部長)

皆さん驚かれるのですが、当社は93年に進出した当初から日本への輸出は計画していませんでした。あくまで現地で生産して現地で販売することを目的に進出しました。

(弊社)

いまでこそ地産地消はどのメーカーも目指していますが、90年代にこの様な方針で中国に進出される企業はあまり聞いた事がありません。

(木村本部長)

これは、当時の内藤進社長(現会長)の経営方針でした。当社が創業以来、変わる事のないリンナイ精神として掲げる3つのこだわりとして「熱と暮らし」、「品質」、「現地社会への貢献」があります。つまり「熱」を通じて「快適な暮らし」を社会に提供する。「品質」にこだわりを持ち、お客様に「安全・安心」をお届けする。そして何より現地の人々の生活文化の向上に貢献する。というものです。海外展開する際もこの精神を基本としなければならいと言われました。
従って単に安く作って日本へ売るという目的での海外展開は行わない。良質なガス器具を提供することで、中国の人々の暮らしを豊かなものにしたいという方針を明確に打ち出していました。

(弊社)

そのことが現在中国市場での好調につながっているのですね。

(木村本部長)

進出時から、現地で販売して稼ぐしかないという覚悟だったので、現地の競業メーカーと戦ってどう打ち勝つか、創意工夫を重ねてきました。
おかげさまで、2010年から毎年10%以上の成長を続けており、今年は18億元の売り上げを見込んでいます。

 

◆◆◆  【現場にはルール遵守を徹底、管理職には創意工夫を要求】  ◆◆◆

(弊社)

中国に赴任され8年間、生産本部長として工場の品質管理を担当されてきましたが、どの様なご苦労がありましたか。

(木村本部長)

品質へのこだわりを徹底する事に苦労しています。生産が忙しい時はみんな一生懸命働いてくれるのですが、作業が雑になり品質が犠牲になってしまう。そこで、数よりも品質優位で仕事をするよう指導しています。そのため、現場ではルールを守り、言われた通りに作業するよう徹底しています。現場が指示を守らず勝手な行動をすると、事故や品質問題に繋がりますからね。

(弊社)

管理層の方々へはどの様な指導をされていますか。

(木村本部長)

管理層に対しては、逆にある程度権限を委譲して自ら創意工夫するよう指導しています。あまり厳しすぎると委縮して出来る事も出来なくなります。細かい事にまで口を出さないよう心がけています。

(弊社)

御社は日本リンナイと上海ガスの日中合弁企業ですが、合弁企業の難しさはありますか。

(木村本部長)

率直に言って合弁先には恵まれていると思います。上海ガスはガス器具の製造はせず、主にガスの供給を行っています。我々は逆にガス器具だけを製造しており、まったく競業関係になく経営は我々に任せて頂いています。一方で日本リンナイからは、リンナイブランドで売る限りは、品質面で妥協しないよう厳しく指導されています。もし製品に不良品があると、お客様の命にかかわる重大事故に繋がりますからね。

(弊社)

中国で販売するうえで、中国市場特有の事情はありますか。

(木村本部長)

中国でもコンロを生産販売していますが、日本では生産販売していないレンジフードや食器消毒庫も販売しています。中国では、コンロを購入する際、レンジフード、食器消毒庫もセットで購入する方が多いので、OEM供給により自社ブランドで販売しています。
一方で給湯器に関しては、その国特有の仕様というものは特に存在しないため、中国を含む新興国のニーズに合わせ基本仕様を統一した「グローバル給湯器」を、日本の設計支援を得る中、上海林内で開発し上海工場を皮切りに生産を開始する予定です。
また、日本と違い中国では、給湯器とコンロの販売を両立させるのが難しいですね。日本だと同じガス器具という認識なので同じ企業が製造販売していても違和感を感じないのですが、中国の消費者は、あくまで給湯器とコンロは別物だという認識なので、同じ企業が製造販売していると、違和感を感じるそうです。日本ではもともとコンロが強いこともあり、何でコンロが売れないのかとよく本社から怒られます(笑い)。

(弊社)

中国では、11月11日のいわゆる「双11」のイベントなどインターネット販売が盛り上がっています。御社もネット販売に力を入れていますか。

(木村本部長)

日本人の感覚だと意外に思われるでしょうが、当社もネット販売が好調なんですよ。ものすごい勢いで売り上げが伸びており、毎年200%、300%という勢いで成長しています。今年の「双11」では、4千万元以上の売り上げがあったと聞いています。全体でも既に売上げの10%強をネット販売が占めています。

 

◆◆◆  【上海に最新工場を建設し、生産力を2倍へ 】  ◆◆◆

(弊社)

今年、上海市の奉賢区に新工場を設立されたそうですが。

(木村本部長)

今後も、中国では経済成長による所得の増加やインフラ整備が進むことによりガス機器の需要拡大が予想されることから、新工場を建設し現在の工場から生産拠点を移転することを決定しました。新工場の稼動により、中国での生産能力は現在と比較して約2倍となり、給湯器120万台、コンロ50万台となる見通しです。既に工場は完成しており、今年の12月末から一部の稼働を開始する予定です。

(弊社)

上海からは、撤退や縮小する工場が多い中、よりコストの安い外地ではなく上海に新工場を建設された理由は何でしょうか。

(木村本部長)

上海に進出して以来、22年かけて人材を育ててきました。外地に移転してしまうと、彼らの多くは辞めることになります。一から人材を育てる時間とコストを考えると、上海で新工場を建設するのがベストだと判断しました。人件費の面については、新工場の生産能力は現在の工場と比べ約2倍に引き上げますが、最新設備を導入して自動化を進める事により対応します。

(弊社)

最後に、これからの抱負をお聞かせ下さい。

(木村本部長)

中国では、まだまだガスのインフラが整備されておらず、電気湯沸器でシャワーを浴びている方々が多くいます。ガスのインフラが広がり、ひとりでも多くの方々に暖かいシャワーをいつでも好きなだけ浴びることが出来る快適なガス給湯器を提供したいですね。 そのためにも、新工場は中国有数の最先端工場にしたいと思います。

(弊社)

御社は、中国進出以来、売り方や製品を工夫することで、中国の消費者に受け入れられる製品を作り上げてきました。中国がまだまだ貧しかった93年当時から、現地社会への貢献を本気で考えてこられた事が、現在の成功に繋がっているのだと感じました。

 

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 【木村 章一(きむら しょういち) 氏のプロフィール】

名古屋工業大学工学部機械工学科専攻。1992年にリンナイ株式会社へ入社し、開発技術本部・空調チームにてガス衣類乾燥機の設計業務を担当。1997年から生産本部瀬戸工場生産準備課にてガス給湯器の新製品量産準備業務、生産管理課にてトヨタ生産方式をベースとしたカンバンによる部品調達、棚卸理論在庫計上、協力工場出荷改善支援等に従事し、2006年には生産本部瀬戸工場副工場長に就任し統括管理業務に従事する。2007年から上海林内有限公司へ赴任、現在に至る。

 

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 【上海林内有限公司 様 会社情報】

上海林内有限公司
上海市浦東北路1520号
Tel(021)6846‐6528
FAX(021)6846‐7179

 

上海林内有限公司  木村 章一 生産本部本部長
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