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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第40回

『佳能(中国)有限公司 森川 剛志 アジア人事統括責任者 インタビュー!』2016/11/4


 
佳能(中国)有限公司
森川 剛志 高級総経理


  ●  現状に安住せず、ローリングストーンになれ

  ●  人材採用の基本理念は4つのQ

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

カメラや事務機器などグローバルに事業を展開し、「感動常在」のキャッチフレーズで中国でも親しまれているキヤノン。 その中国法人である佳能(中国)有限公司で、国境や地域の枠を超えて活躍する、次世代のキヤノンを支えるグローバル人材の育成に取り組む森川剛志高級総経理にインタビューしました。

 

◆◆  【社員に色々な経験を積むチャンスを提供するのが会社の責任】  ◆◆

(弊社)

 日本本社であるキヤノン株式会社の事業内容と沿革についてお聞かせ下さい。

(森川高級総経理)

キヤノンの歴史は、1933年に東京麻布六本木で高級小型写真機の研究を目的とする精機光学研究所を開設した時から始まり、37年に精機光学工業株式会社として創業しました。60年代からは、事務機分野への本格的な取り組みを開始し、「右手にカメラ、左手に事務機」をスローガンに多角化を推進しました。2015年12月時点の従業員数が約18万9千人、売上高が3兆8千億円、連結子会社数が317社となっています。事業分野別の売上高による内訳は、オフィス機器が55.5%、カメラ・ビデオ等の映像機器が33.3%、その他産業機器が13.8%となっています。

(弊社)

中国法人である佳能(中国)有限公司についてご紹介ください。

(森川高級総経理)

当社は、1997年3月に北京で設立され、中国市場での商品販売及びサービスを行っています。従業員数は約2千人、中国全土に31の営業拠点を設けています。また、キヤノンアジアマーケティンググループの本部として、中国大陸のほか、香港、台湾、韓国、東南アジア、インド等も管轄しています。中国全体では、グループ会社が12社あり、約4万人の従業員が働いています。
 

(弊社)

人材教育について、どの様に考えていますか。

(森川高級総経理)

よく社会人としての成長に影響する要素は、経験が7割、人との繋がりが2割、教育が1割だと言われるとおり、人の成長にとって最も大切な要素は経験だと思います。 英国のことわざに、A rolling stone gathers no moss(転がる石には苔が生えない)という言葉があります。もともとの意味は、ころころ仕事を変えていると経験が積めず成功しないという意味でした。ところがアメリカでは、転がって色々な経験を積むと、人間は錆びつかないという逆と意味になります。我々は後者の考え方を重視しています。キヤノン中国でも社員に対し、どんどん挑戦し、どんどん転がって経験を積めば偉くなれる。当社の社長や多くの幹部も、色々なところを転がったから偉くなれたんだと伝えています。従って、色々な経験を積むチャンスを提供することが会社の責任であり、それに挑戦することを社員に期待しています。
 

(弊社)

中国のスタッフは、転勤や配置転換を嫌がるとよく聞きますが、御社ではどの様にして社員に納得してもらっていますか。

(森川高級総経理)

大切なのは、「風土」と「制度」だと思います。「風土」に関しては、先ほどお話ししたとおりです。「制度」に関しては、転勤には良い条件の手当てを出しています。どんどん転がる事を尊ぶ風土と、それを後押しする制度によって、あの人は転勤して偉くなったとか、新しい仕事にチャレンジできるといった事例を目の当たりにすることで、徐々に「じゃあ自分も!」と手を挙げる社員が増えてきます。
 

(弊社)

企業の発展に向けたHRの役割についてどの様に考えていますか。

(森川高級総経理)

人は会社にとって大切なリソースですが、その人にどれだけ投資してどれだけリターンを得られるか冷静に考えることが重要です。一方で、よく「人財」という言葉を使いますが、他の財産と違い人には心があります。お金だけでなく社員に喜んでもらう方法を考え、モチベーションを高めることが、会社の生産性アップに繋がると思います。  例えば、キヤノンでは毎朝の挨拶運動(早上好、早上好と挨拶しながら、会社を練り歩きます)や毎日2時半から始まるフラッシュモブ活動(社員全員で参加する楽しいダンスタイムです)などを通じて、社員一人ひとりのモチベーションを内面から高める活動を行っています。最近は、社員の皆さんと応援歌をつくって、社内を盛り上げています。
 

 

◆◆  【企業の成長は社員の健康と幸せな家庭生活の上にしか成り立たない】  ◆◆

(弊社)

労働と人権の取り組みとして、自己成長の支援のほか、従業員の健康管理、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティー等に取り組んでいるそうですが、具体的な取り組み例をご紹介下さい。

(森川高級総経理)

ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、医師であった御手洗毅 初代社長が唱えた企業風土にその原点があります。「企業の成長は社員の健康と幸せな家庭生活の上にしか成り立たない」というその想いから健康第一主義を掲げ、全社員の健康診断や日本では週休1日が一般的だった時代に、いち早く週休二日制を取り入れるなど、「仕事と生活の調和」の実現に向けた取り組みを行ってきました。中国でも、工会と協力しながら「仕事と生活の調和」に向けた取り組みを推進しており、例えば定期的な健康診断だけでなく、EAPを取り入れるなどメンタル面からの支援にも積極的に取り組んでいます。  ダイバーシティーに関しては、社員の男女比は、5:5、管理職レベルでも男女比が6:4となっています。能力さえあれば、性別や国籍、宗教に関係なく昇進できる制度となっています。

(弊社)

中国では、90年代生まれの従業員は個性的だが、忍耐力に欠け、わがままだと言われています。森川様は90年代の従業員と接してどの様に感じますか。

(森川高級総経理)

90年代生まれだからといって他の世代との違いは特に感じません。日本でもよく世代間ギャップが言われますが、あまり違いを意識しすぎる事は良くありません。むしろ最近の若い社員たちは皆さん優秀で、IQだけでなくEQも高いと感心しています。

(弊社)

いま、日系企業は現地化に関心を持つ企業が増えてきています。管理職教育など現地化のための取り組みはされていますか。

(森川高級総経理)

現地化は常に意識しています。一方で、実力主義を尊重し、その結果が現地化であることが望ましいと考えています。優秀であれば、国籍を問わず重要なポジションを任せています。すでに部長クラスでは現地化が進み、幹部間での定期的なコミュニケーションの機会を設けるなど管理職育成に力を入れています。管理職を育てるためには単一な経験だけではなく、多様な経験を積ませることが大切です。転勤や部門間の異動を通じて様々な経験を積むことで、意思決定や判断基準の物差しが増え、難しい問題が解決できるようになると考えています。要するに場数を踏んでもらう事が、一番の管理職育成法です。

 

◆◆  【高校時代に感じた自由への疑問から海外に関心を持つ】  ◆◆

(弊社)

学生時代から海外に関心があったようですが。

(森川高級総経理)

私の通っていた高校は、校則がほとんど無くて良く言えば自由な校風、悪く言えば少々荒れていたこともあり、自由とはいったい何だろうと考えるようになりました。そこで自由の国といえばアメリカだろうと思い、大学ではアメリカ政治を専攻しました。当時はアルバイトでお金を貯めてはアメリカ旅行へ行き、自由について考え、自由には責任が伴うという事を学びました。

(弊社)

キヤノンに入社した理由を教えて下さい。

(森川高級総経理)

私が入社した1990年には、既に積極的な海外展開をしており、海外と関わるチャンスが多いことからキヤノンに入社しました。入社時の配属面接で希望部署を尋ねられた時に、「国際」と名の付く部署を希望すると、たまたま人事部国際人事課に配属された事が、HRとしてのキャリアのスタートになりました(笑い)。

(弊社)

その後、イギリスやオランダ勤務を経て、2010年から現職に就かれましたが、日本や欧米、中国を比べて、従業員の働き方や仕事への姿勢に違いは感じますか。

(森川高級総経理)

それぞれの国には固有の歴史や文化があり、それをベースに生き方や働き方があるので、当然に国によって仕事との距離や家族とのあり方は異なります。日本国内でも、地域によって異なります。中国について言えば、皆さん勤勉で仕事に対する態度も非常に真面目だと感じます。

(弊社)

 在中日系企業の立場から、御社が求める社員像をお聞かせ下さい。

(森川高級総経理)

日系企業というより、グローバル企業の立場としていうと、当社では4つのQを人材採用の基本理念としています。4つのQとは、IQ(知能指数)、EQ(心の知能指数)、GQ(グローバル指数)、そしてAQ(逆境指数)です。AQとは、挑戦を厭わず困難に直面しても立ち向かう気持ちのことです。これら4つのQを高める事を社員に求めています。

 

◆◆  【社員がカラフルな人生を送れるカラフルな会社にしたい】  ◆◆

(弊社)

御社日本法人では、ボランティアやスポーツ文化支援、環境保全活動など積極的なCSR活動に取り組まれています。中国法人でもこの様なCSR活動に取り組まれていますか。

(森川高級総経理)

低炭素社会実現への貢献として、製品開発からお客さまにおける使用、使用後のリサイクルに至るまで、製品ライフサイクル全体でのCO2排出削減に取り組んでいます。社会貢献では、中国各地の貴重な伝統文化を映像として記録に残したり、植林などの環境保全活動や、カメラを通じた教育活動、医療機器の提供など人道援助にも力を入れています。

(弊社)

最後に、2017年のビジョンと将来の展望をお聞かせください。

(森川高級総経理)

会社も社員もお互いに成長できるような取り組みを引き続き進めたいと思います。これからも社員に対して多様な経験を得る機会を提供できるカラフルな会社にし、社員がカラフルな人生を送れるよう努力したいと思います。

(弊社)

長時間ありがとうございました。インタビューを通じて、森川様の人的資源分野での豊富なご経験や優れた見識は大変参考になりました。「風土」と「制度」のバランスや「4Q」など人材採用や育成の理念は、キヤノンが中国で成功しているコツだと感じました。

Canon応援歌《感動常在歌》

⇒【中国語版】を見る

⇒【英語版】を見る

 

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 【森川 刚志(もりかわ たけし) 氏のプロフィール】

慶応義塾大学法学部卒。90年キヤノン株式会社に入社。入社後は人事部国際人事課、93年にキヤノンUK(英国)、96年にキヤノンヨーロッパ(オランダ)を経て、98年にキヤノン株式会社の人事部に異動。その後、キヤノン化成総務課、キヤノン株式会社秘書室を経て、2010年より現職に就任。

 

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 【佳能(中国)有限公司 様 会社情報】

北京市東城区金宝街89号金宝大厦2层
TEL 010-8513-9999
FAX 010-8513-9913

 

佳能(中国)有限公司 森川高級総経理
佳能(中国)有限公司
森川高級総経理

インタビュー風景
インタビュー風景

  

森川高級総経理と上海分公司荣奕文副总

佳能(中国)有限公司
森川高級総経理

森川高級総経理と上海分公司荣奕文副总

森川高級総経理と
华东总务部 上海人力资源课
副总经理 荣奕文

森川アジア人事(統括)責任者と上海分公司荣奕文副总

佳能(中国)有限公司上海分公司
华东总务部 上海人力资源课
副总经理 荣奕文

中智上海と記念写真

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