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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第42回

『三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司 堀越 秀一 董事 行長 インタビュー!』2017/1/19


 
三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司
堀越 秀一 董事 行長


  ●  優秀な人材の引留めにはキャリアパスが大切

  ●  ハイブリッドな企業文化が会社を強くする

 

(弊社インタビュアー)(以下弊社)

経営ビジョンの「中長期的にめざす姿」として、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を掲げ、日本はもとよりアジア、そして世界に選ばれる存在となることをめざしている三菱東京UFJ銀行。その中国法人である三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司の堀越秀一董事 行長にインタビューしました。

 

◆◆  日中国交正常化前から常に外銀の先頭に立つ中国業務のパイオニア   ◆◆

(弊社)

三菱東京UFJ銀行の沿革についてお聞かせ下さい。

(堀越董事 行長)

当行は、もともと四つの銀行(東京銀行、三菱銀行、三和銀行、東海銀行)の流れをくむ銀行が合併して2006年に誕生した新しい銀行です。しかし、そのルーツは古く、1880年に設立された横浜正金銀行(東京銀行の前身)や三菱為換店(三菱銀行の前身)など、どれも100年以上の歴史がある銀行です。

(弊社)

横浜正金銀行は、貿易金融・外国為替に特化した銀行で、海外にも多くの拠点を構えていたそうです。また、過去には頭取から日銀総裁も輩出している名門銀行と聞いています。

(堀越董事 行長)

横浜正金銀行は、中国との縁が深く戦前の中国に33の拠点がありました。当時の上海支店のビルが外灘(バンド)にあり、現在は中国工商銀行の支店になっています。

(弊社)

 続いて中国法人の沿革と業務内容についてお聞かせください。

(堀越董事 行長)

当行の中国業務は、日中国交回復前の1958年、日中間初のコルレス契約締結に遡り、80年に北京駐在員事務所開設(外資商業銀行初の事務所)、86年に邦銀として初めて深圳支店を開設、そして2007年には三菱東京UFJ(中国)有限公司設立と、常に当地において邦銀のみならず外銀の先頭に立ち、中国業務の強化に努めてまいりました。今では非日系のお客様の割合も着実に増えています。
現在、中国本土に13支店、7出張所を設けており、2017年上半期には14店目となる杭州支店を開設予定です。これにより中国本土のネットワークは21拠点となり、邦銀最大のネットワークと2500名を超える体制でお客様の中国ビジネスをサポートしています。

(弊社)

これだけのネットワークと行員をひとつに纏めるには、共通の理念や目標が必要になると思いますが、どの様な理念や目標を定めていますか。

(堀越董事 行長)

中国法人だけでなく、MUFGグループが共有する価値観として、①信頼・信用、②プロフェッショナリズムとチームワーク、③成長と挑戦の三つを柱として実践しています。
また、中長期的に目指す姿として「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を目標に、行員一人ひとりがモチベーションを高めて取り組んでいます。

 

◆◆  従業員の定着にはキャリアパスを用意してあげることが大切  ◆◆

(弊社)

昨年の12月に弊社は、在上海日本領事館、上海理工大学と協力し、日系企業向けの就職説明会を開催しました。参加した学生たちに希望する業界を尋ねると、金融業界の人気が非常に高かったです。新卒生を採用する際に、学生からの人気の高さは実感しますか。また、新入行員を採用する際には、どの様な資質を重視していますか。

(堀越董事 行長)

上海地区だけでも五千人を超える応募があったと聞いています。中国では全般的に金融業界の人気が高いようで、日系企業の中でも銀行が良いとみて頂いているのかもしれません。 新入行員を採用する際には、金融の知識や銀行でのインターン経験は、あまり重視していません。それよりも本人のやる気や銀行に入って何をやりたいかを自分の言葉で明確に語ることのできる人物を求めています。銀行は形のある商品を売っている訳ではないので信用、つまり人が最大の財産になります。従って、知識だけではなく人柄を重視した採用を心がけています。

(弊社)

金融業界は、比較的転職が多いイメージですが、御行の離職率は低いと聞いています。従業員に長く働いてもらうために必要な事は何だと思いますか。

(堀越董事 行長)

やはり従業員の皆さんが一番考えることはキャリアパスでしょう。今の会社では将来の展望が見えないから転職を考えるのだと思います。逆に、この会社で頑張って働けばキャリアアップができると従業員に理解してもらえれば、優秀な人材は会社に残ってくれると思います。
当行では、階層別に分かれた豊富な研修プログラムのほか、世界に出て仕事をしたい行員たちに対して、様々な制度を利用して海外で働くチャンスを提供しています。本人にやる気があれば、中国国外で勤務する事も可能です。

(弊社)

海外で勤務できるなんて憧れますね。さすがは世界有数のグローバル金融グループです。グローバル化に関して、御行では、社内の英語化も促進されているそうですが。

(堀越董事 行長)

当行は日本の銀行なので、日本語を話せる行員が多く非常に便利ではあります。しかし、これまで世界でビジネスをしてきた経験から、やはりグローバルな視野を持って仕事をするには、英語のコミュニケーション能力が不可欠です。そこで、一部の会議を英語化する等の取り組みを進めています。
そうすると、日本語が堪能な人材として入行した行員たちも、若手やシニアを問わず、独学で英語を勉強したり、英会話学校に通うなどして、英語が話せるようになっています。中国人行員の真面目さや熱意は素晴らしいですね。今では日本人の派遣行員の方が負けない様に英語を勉強しなければならない状況です(笑)。

 

◆◆  海外業務を希望し、東京銀行に入行  ◆◆

(弊社)

続いて、堀越行長のご経歴をお聞かせ下さい。一橋大学経済学部を卒業後、東京銀行を志望した動機は何でしょうか。

(堀越董事 行長)

学生時代から、海外で業務をしたいという想いが強かったものですから、就職先には銀行か商社を考えていました。そこでOBの先輩方から、銀行は様々な業界のお客様とお付き合いが出来ると聞いたことが魅力的に感じ、銀行を志望しました。その中でも、当時から海外のネットワークを一番持っていた東京銀行を選びました。

(弊社)

東京銀行入行後、世界各地で勤務されてきたそうですが。

(堀越董事 行長)

1984年に東京銀行に入行後、2000年から08年までニューヨークで勤務し企画の仕事をしていました。その後2年ほど日本勤務を経て、10年から欧州本部のあるロンドンで勤務しました。ロンドン勤務時代は、欧州領域全体の非日系取引部署の部長として、ロシアから南アフリカまで担当し、2年間で25カ国以上に訪問しました。民族や文化の異なる様々な国の方々と触れあう機会をいただけたのは、とても良い勉強になりました。その後、2012年からは香港、そして2014年から上海で勤務しています。

(弊社)

これまで、日本、米国、欧州、香港、そして上海と多くの国と地域で勤務を経験されましたが、それぞれ従業員の仕事へ取り組み方や考え方など、違いを感じましたか。また、彼・彼女らを指導する際に、特別な配慮や注意することはありましたか。

(堀越董事 行長)

国や地域により仕事に対する考え方は異なります。例えば、欧米人は仕事とプライベートを明確に分けている人が多く感じました。一方、香港や上海では、皆さん非常に勤勉で仕事熱心、我々日本人に通じるものを感じます。
外国人の部下を指導する際には、常に文化の違いを頭に置いておく必要があります。ある発言に対して、日本人なら普通こう解釈するだとうと考えても、国が違うと異なった受け取り方をする可能性を常に意識して、発言には気をつけなければなりません。
それに、日本的なやり方を当然のように押し付けるのは通用しません。日本的な経営にもその国に合う部分と合わない部分があると思いますが、その国に合う良い部分はきちんと教えれば必ず理解してくれます。しかし、その国に合わない部分は直していく必要があります。これによって、ハイブリッドな企業文化が出来上がるのだと思います。そうなるとその会社はものすごく強いですよね。

(弊社)

日系企業で働いている中国人社員にアドバイスをお願いします。

(堀越董事 行長)

日系企業で働いている人や働きたいと思っている人は、日本に興味がある人が大半だと思います。日本企業には日本の文化があるので、その良さをしっかり見て積極的に取り込んで欲しいと思います。ところが、いざ日系企業に入ると、イメージと違う部分もあるはずです。しかし、これに対してがっかりせずに、中国に合わない部分は自分たちの手でハイブリッドな企業文化に作り変えて欲しいと思います。日系企業で働く皆さんには、良い意味で日系企業を変えていってほしいと考えています。

(弊社)

 昨年1年間、上海商工倶楽部の理事長を務められました。具体的にどの様な活動をされましたか。

(堀越董事 行長)

昨年、上海商工倶楽部の理事長として様々な活動に参加し、多くの人々と交流する機会を頂きました。日本留学経験者の団体である上海留日同学会との交流会、魯迅公園で毎年行われているサクラの植樹会などを通して日本と中国の関係の深さを実感しました。また、日本人学校の入学式や卒業式に出席し、新入生たちのさわやかで初々しい姿や、卒業式での感動的な場面などを見て、本当に懐かしく貴重な経験をさせてもらいました。

 

◆◆  少年少女サッカー大会「COPA MUFG」を支援  ◆◆

(弊社)

御行では、CSR活動に積極的に取り組んでおられます。

(堀越董事 行長)

年に3回開催される「COPA MUFG」という少年少女サッカー大会を支援しています。私もスケジュールが合えば出席し、決勝戦を観戦して閉会式で挨拶をしています。
去年からは中国の少年少女チームも参加するようになり、前回の決勝戦は日本と中国のチームで行われ、非常に白熱した良い試合になりました。他には、三菱グループの一員として障害者の方々の民間サッカー大会も支援しています。去年は28省・市から42チームが参加しました。
この他にも、世紀公園での清掃活動や、中国日本商会と協力して中国の大学生が日本の企業や大学を訪問する活動のサポートをさせて頂いています。

 

◆◆  人民元ビジネス拡大に貢献したい  ◆◆

(弊社)

最後に、2017年の目標と、将来の展望についてお聞かせ下さい。

(堀越董事 行長)

今年は、2015年から始まった中期経営計画(3年)の最終年度にあたります。目標である外銀トップ3を目指して邁進してまいります。
将来の展望に関しては、昨年10月に人民元がSDRに採用され、国際的にも人民元の注目度が高まっています。当行は、MUFGのグローバルなネットワークを活かして人民元ビジネスの拡大に貢献してまいります。
また、中国政府が打ち出した「走出去」政策により、中国企業による海外投資の動きがますます活発になることも予想されます。当行も、中国から世界へ進出する企業に対し積極的にサポートしていきたいと考えています。

(弊社)

御行と中国の関係がこれほど長くて深いものとは知りませんでした。また、グローバル企業として英語化を促進したり、日本の企業文化を押し付けるのではなく、当地に合ったハイブリッドな企業文化の創造を目指すなど、堀越行長の海外における豊富なビジネス経験が中国でも活かされていると感じました。本日は長時間有難うございました。

 

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 【堀越 秀一 (ほりこし ひでかず)氏のプロフィール】

84年一橋大学経済学部卒。同年東京銀行(当時)入行。その後、米州本部米州企画室企画グループ次長兼国際企画部上席調査役、国際企画部副部長、執行役員欧州本部欧州法人事業部部長、執行役員香港総支配人兼香港支店長などを経て、14年より執行役員三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司の董事 行長に就任。15年には常務執行役員、16年からは東アジア本部長を兼務し現在に至る。

 

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 【三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司 様 会社情報】

上海市浦東新区陸家嘴環路1233号匯亜大厦20楼
TEL 021-6888-1666
FAX 021-6888-1665


三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司
堀越 秀一 董事 行長

  
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堀越 秀一 董事 行長

中智上海と記念写真
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