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聞いてみなければ解らない!人物インタビューシリーズ 第55回

『瑞穗信息系統(上海)有限公司 渡辺 伸 董事総経理 インタビュー!』2018/10/26


 

瑞穗信息系統(上海)有限公司
 渡辺 伸 董事総経理


  ●  本社を巻き込んだ社員の一体感づくりで定着度アップ

  ●  社員同士や取引企業と積極的にノウハウを共有

 

(弊社インタビュアー)(以下中智)

瑞穗信息系統(上海)有限公司は、みずほフィナンシャルグループの一員である、みずほ情報総研の中国現地法人として2011年に設立されました。人件費の上昇が続く中国の中でも、IT業界の人件費の上昇率、離職率は他の業界に比べて高い水準で推移しています。今回は、限られた予算の中で、優秀な人材を確保し、雇用の安定を実現する取り組みで効果を上げている瑞穗信息系統の渡辺伸総経理に、その取り組みを伺いました。

 

◆◆◆  本社を巻き込んだ社員の一体感づくり   ◆◆◆

(中智)

本社である、みずほ情報総研株式会社の沿革と業務内容をご紹介下さい。

(渡辺総経理)

みずほ情報総研は、みずほフィナンシャルグループの一員として、コンサルティングの高い専門性と先端IT の融合により、新たな価値を生み出し、お客さまに提供しています。みずほグループをはじめ、同グループのお客様以外にもIT開発を含めた幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

(中智)

中国法人の事業内容と沿革についてご紹介下さい。

(渡辺総経理)

弊社では、みずほ情報総研の中国でのオフショア委託先の管理、中国市場でのITコンサルティング、システム構築支援、ソリューションの提供を行っています。他のIT会社と違いグループ銀行の情報を扱っているため、日本と同じレベルの厳重な情報セキュリティ管理体制を構築しています。


渡辺董事総経理 インタビュー風景

(中智)

一般的にIT企業の離職率は高く、社員の安定に悩んでいる会社が多いです。御社では、社員の安定のためにどの様な取り組みをされていますか。

(渡辺総経理)

業務の性質上、エンジニアの半数以上は客先に常駐して勤務することが多く、どうしてもストレスがたまり易くなります。そこで、定期的に私を含めた経営層が客先を訪問し、直接に常駐している社員達に、悩みや困りごとをヒアリングして可能な限り要望に応じるようにしています。待遇面では、昼食手当ての増額や、夏には高温慰問を行い、飲み物の差し入れ等を行っています。

(中智)

総経理はじめ、経営層の方々がわざわざ社員を訪問するというのはあまり聞きません。まさに社員に対する“関愛”ですね。

(渡辺総経理)

社員数が少ないから出来ることです(笑)。ほかには社員としての一体感を醸成するため、客先常駐の社員には事ある毎に会社に戻って来られる機会を作っています。

(中智)

具体的にはどうされているのでしょうか。

(渡辺総経理)

業務管理部の張穎部長が中心となり社員の誕生日会、本社ビデオ鑑賞会等のイベントを企画し、イベント開催の際には、客先に常駐している社員達にも可能な限り会社に戻って来てもらうようにしています。そのほかには、毎月「穂歳念」という社内誌を作成し、社内の出来事を社外で働く社員達や本社の社員と情報共有できるようにしています。また、社員旅行や忘年会は、間接部門だけではなく、客先に常駐している社員も含めて一緒にチームで企画し、常に会社との繋がりを感じられるよう配慮しています。


社内誌「穂歳念」

(中智)

本社との交流も積極的に行っているそうですね。

(渡辺総経理)

社員同士で業務を助けてもらったり手伝ってもらったりした際に、感謝カードを送る制度を設けていますが、当社ではそれを、日本本社を含めてやり取りをしています。例えば、本社の社員から「出張の時、説明がすごく分かり易かった。」「急な要求に対応してくれてありがとう。」等のコメントを添えて感謝カードが送られることで、本社とのつながりを感じることができます。

(中智)

本社グループ部署の紹介ビデオにも中国上海法人の紹介がありました。本社と上海とは一体の存在であって、そのかけ橋の裏には渡辺総経理の本社と上海との両方に対する愛情の絆を感じました。


本社グループ部署紹介のビデオ


感謝カード

 

◆◆◆  教える事も立派な教育   ◆◆◆

(中智)

社内教育制度でもユニークな取り組みをされているそうですが。

(渡辺総経理)

外部の講師を招くだけではなく、社員が講師となってノウハウを共有しています。例えばエクセルやパワーポイントが得意な社員が講師となり、他の社員に教えています。また、我々は銀行系のシステム開発が多いため、エンジニアにもある程度の会計知識が必要です。そこで、財務部門の社員に講師になってもらい、エンジニアと会計知識も共有しています。

(中智)

中国では、社員が自分のノウハウを他の社員と共有したがらないという話をよく聞きますが、講師になってもらうというのは良い方法ですね。

(渡辺総経理)

最近では、社員同士で教え合うだけではなく、オフショア開発の委託先会社と共同で研修を行う取り組みを始めています。最新のシステム紹介や、プロジェクト管理の方法など、単に仕事を発注するだけではなく、パートナーとしてお互いの優れた部分を学び合うことができます。中国では、現場に近い専門業務の外部研修が少ないので、実際に業務を行っている会社とノウハウを共有できるのは大きなメリットです。


渡辺董事総経理 インタビュー風景

 

◆◆◆   昇進ルートを明確に示し、社員のやる気と責任感を引き出す   ◆◆◆

(中智)

人事制度面では、どの様な工夫をされていますか。

(渡辺総経理)

昇進のルートを確保するため、少人数の会社ですが2年半前にあえて課を設けました。それまでは、業務管理部と営業開発部の2つの部だけで、その下には明確なポジションが無く、フラットな組織でした。 そこをあえて、課を作り優秀な社員を昇進させることで、責任感やモチベーションをアップさせることが出来ました。今までホウレンソウが苦手だった社員が、課長になる事で経営の一端を担っているという自覚が湧き、タイムリーな報告が出来るようになったのではと思います。

(中智)

人数の少ない会社の場合、総経理以下はフラットな組織がよくありますが、あえて課を作る事で社員達に昇進ルートを明確に示すことができ、社員の責任感とモチベーションをアップさせる効果があるのですね。
ところで今年、上海市政府から御社へ視察に来られたそうですね。

(渡辺総経理)

今年の3月に、上海市政府から会社を視察したいと申し出がありました。市政府の方が、外資企業を視察する事はあまり多くないと聞いていたので、光栄な事と思い喜んでお受けしました。視察の際に、徐匯区人大代表の方から意見を求められ、日中の技術者交流を提案させていただきました。日本では、まだまだ自分たちの技術が上だと考えている人が多いようですが、実は中国の方が技術面で上回っている部分も多くあります。その様なことをお互い認識できる良い機会になればと思い提案しました。


上海市政府から視察のニュース

 

◆◆◆  中国人はストレート、範を示せば応えてくれる  ◆◆◆

(中智)

渡辺総経理は、みずほ銀行時代から長年システム畑を歩んでこられ、海外でも数多くのプロジェクトを担当されてきたそうですが、外国人とうまく仕事をするコツは何でしょう。

(渡辺総経理)

中国人は、日本人より仕事の態度がストレートです。この点、欧米人に近いように感じます。総経理といえども、仕事をしない人、出来ない人は社員から相手にされません。自ら先頭に立ち率先垂範すれば、社員達はついて来てくれると信じています。生活面では「郷に入っては郷に従え」で中国の普通の人たちと同じ様に生活するよう心がけています。移動には地下鉄以外にバスもよく利用するのですが、バスを待っているところを若い社員が見かけ、「総経理がなぜバスに乗るのですか」と、驚かれたことがあります。また、うちの社員に目的地までのバスの乗り継ぎ方を教えてあげた事もあります(笑)。

(中智)

すっかり中国の生活に馴染んでおられますね。ところで現地法人の総経理として苦労する事、やりがいを感じる事は何でしょうか。

(渡辺総経理)

日本で正しいやり方であったとしても、中国でも正しいとは限りません。また仮に中国では正しいやり方であったとしても、日本の商習慣に合わない事もあります。このような場合に日本の本社へ説明し理解してもらうことに苦労します。やりがいを感じるのは、社員達がお客様や本社から褒められた時や、社員が喜んでいるのを見た時ですね。

(中智)

最後に、今後のビジネスの展望についてお聞かせください。

(渡辺総経理)

新しい技術も取り入れながら、当社のシステム導入によりお客様の業務改善に貢献してまいります。中国は人件費が上がり、オフショア開発のコストメリットが出にくくなっているのは確かです。そこで、これからは、日本とそん色のない高品質と、中国の強みであるスピードもアピールして継続的なオフショア開発の活用を目指してまいります。

(中智)

金融ITサービス業界の特性もあり、社員がオフィスに集まることの少ない中で、企業の一体感を保つために、きめ細かな取り組みをされています。中国上海法人と東京本社、社員と会社との交流を積極的に行うことで、社員の帰属感を高め、企業文化を育成しておられるのは、渡辺総経理の貴重なリーダーシップと魅力によるものと感じました。報酬以外にどの様に優秀な社員を会社に引き留めるか、“関愛”の実践を学ばせていただきました。本日は、長時間のインタビューにご協力いただき有難うございました。


従業員活動掲示板

 

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【渡辺 伸(わたなべ しん) 氏のプロフィール】

瑞穗信息系統(上海)有限公司 董事総経理

88年上智大学外国語学部卒業、同年みずほ銀行入行。91年にシステム部門に配属され、国際システム業務を担当。04年にみずほ情報総研の設立に伴い出向。11年にグローバルビジネス戦略室長に着任し、この時から本格的に中国とのビジネスに関わる。14年より現職に就任し現在に至る。

 

渡辺 董事総経理
渡辺 董事総経理

瑞穂信息従業員と中智の記念写真
瑞穂信息従業員と中智の記念写真