【判例】個人名義口座へ支払われた金銭は賃金となるか?(2015年5月4日)
【判例】個人名義口座へ支払われた金銭は賃金となるか?(2015年5月4日)
案情:
唐さんはA社の株主であり、規定により経理職に就いている。2010年5月24日より前の段階で、A社の社印は唐さんの預かるところとなっていた。2010年5月12日、A社は唐さんと2010年5月1日から2012年4月30日まで月賃金5000元での労働契約を締結し、契約期間満了後は2014年4月30日まで契約を延長させた。A社の法定代表人である茅さんは2010年6月より唐さんへ毎月期間を定めて17770元を支払っていた。2011年2月1日、A社は唐さんの夫である韓さんと賃貸契約を締結し、毎月17770元を支払うことを約定していたが、この契約が履行されることはなかった。
2012年6月20日、茅さんは唐さんへ7月より每月17770元を支払わないことを告知した。唐さんは賃金の全額(5000+17770=22770元)が受け取れない以上仕事はしないとして、7月20日より出勤しなくなった。
2012年9月6日、A社は唐さんが2012年7月21日より出勤しなかったことは厳重な就業規則違反であるとして唐さんを即日解雇し、離職手続を行った。
2012年9月、唐さんは労働仲裁委員会に仲裁を申立て、A社へ2012年6月から9月までの賃金を支払うよう求めたが、仲裁庭はこれを棄却した。唐さんはこれを不服として、人民法院へ提訴した。なお、審議中、A社は毎月の17770元について株金元利であると主張している。
争点:
茅さんが每月唐さんへ支払った17770元は賃金収入、家賃、株金元利のいずれに該当するか?
判决:
法院は、唐さんが2010年5月1日よりA社で業務に就いた翌月から法定代表人茅さんより支払われた每月17770元について、A社がこれを唐さんの株金元利の返還であるとしていることについて、法律違反であると認めた。唐さんは2012年7月21日よりA社へ労働を提供しなくなったため、ゆえに法院は判决A社へ唐さんに対し2012年6月から7月的までの賃金35540元【(22770-5000)*2=35540元】を支払うよう命じた。
分析:
本案件の争点は唐さんの主張する17770元が株金元利なのか、家賃なのか、賃金なのかという点である。この点について、唐さんとA社は互いに譲らなかった。
仲裁庭は唐さんとA社が2010年6月から2012年6月の間家賃名義で支払われていた17770元の項目に拘泥し、証拠の不一致から、唐さんの訴えを退ける事となった。しかし訴訟の段階になって、法院は労働者保護の立場から唐さんの請求を認めたものである。
労働紛争処理の証拠能力に関する規則によれば、唐さんが賃金であると主張した17770元について、もしA社がこれを証明できなければ、法的に不利な結果を招くこととなる。A社との賃貸契約は確かに有効ではあるけれども、実際には履行されていない為、これを家賃だとすることは不可能である。その後A社法定代表人はこの毎月支払われていた17770元について、唐さん株金元利返還の求めに応じたもので、双方間にこれに関する合意が無いものの、会社側からは毎月実際に履行されているものである。この金銭は同社の法定代表人から2012年6月まで支払われており、返還を終えたため支払を終えたと主張した。しかしこれは違法行為であり、またこれが賃金でないと証明するには不足である。
では何を以て賃金であるか否かを判断するのか?まず、この金額は每月期日を定めて唐さんの個人口座に支払われていた。唐さん曰く、この金銭は税金逃れの為に個人名義の口座へ振り込ませており、会社側は納税せずにこの額を支払っていた。このことから、言い換えれば、この金額は賃金の計算形式に符合するということになる。次に、高級管理者の賃金として每月5000元の賃金を労務の提供と引き換えに得ていた事実を見て、ゆえに法院は17770元を賃金の一部と認める合理性があると判断したのである。
使用者は其々の事情を考慮して会社側が税金を支払う以外の賃金支払い方法を提案及び同意することができるが、その際には法的リスクに気を配るべきである。書面による同意だけに基づいてこれを行えば、後日労働報酬に関する紛争が発生する可能性を孕むのである。