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【寄稿】職位昇進制度の設計(2015年5月6日)

 ここ数年間の中智コンサルティングの調査データによれば、キャリアアップが妨げられることを理由とする退職率がますます高くなっており、報酬水準を理由とした退職率とほぼ並んでいます。

  調査の中身を詳しく見ると、自分自身のキャリアアップに関心を持っているのは「熟練従業員」であり、つまり、ある程度の資格や経験を持ち、業務を独立して担当できる従業員です。こうしてみると、企業が従業員を自社に引き付けたり、激励したり、引き留めたりするためには、社内でのキャリアアップの仕組みを構築することが重要となっています。

 日系企業でよく見られるキャリアアップの仕組みは日本の方法をそのまま利用した職務昇進を主とするものです。製造業現場従業員を例にとると、一般的には、作業員、班組長、係長というような昇進ルートを辿ります。しかしながら、班組長と係長というような基礎管理職のポストが不足する中で、多くの現場作業員が昇進・昇給を熱望している場合に、どのようにすればシンプルで、有効な昇進の仕組みを構築できるでしょうか。

 そこで、中智コンサルティングでは、どのようにキャリアアップの仕組みを設計するのか、ということを簡単にご紹介します。一般的には、キャリアアップの仕組みを設計する際に、①職位序列の分類、②職位発展ルート(キャリアアップルート)の設計、③職位昇進基準の設計、④職位昇進制度の作成という四つのステップに分けて展開されます。

ステップ1:は職位序列の分類

 まず、社内での職位について整理を行い、業務の性質が似ている職位に関しては、同じ序列に分類します。製造業型日系企業を例にすると、職位系列(一級)の分類を行うことが最優先となり、通常は、管理職と専門職に分けられます。次に、職位系列の分類結果に基づき職位階層を区別します。例えば、管理職に関しては「高層管理職」、「中層管理職(部長・課長)」、「基礎管理職(係長・班組長)」に分けられ、専門職に関しては「作業職」、「技術職」、「事務職」などに分けられます。この段階において、社内でのすべての職位がそれぞれの所属する職位系列と職位階層に対応しなければなりません。

ステップ2:職位発展ルートの設計

 企業は職位階層ごとに職位発展ルートを設計する必要があります。一般的には、「五段階評価モデル」を採用しており、即ち、初心者、経験者、中堅者、専門家及びオーソリティーというような低いレベルから高いレベルまでの発展パターンで表します。各職位階層に関して、同じ評価等級を設計する必要はありませんが、職位階層の重要度に配慮する必要があります。通常は、製造業型日系企業は技術職の職位と現場作業職の職位にある程度重点を置きます。この際、職位階層ごとのの発展ルートを設計する際に、専門職間のバランス及び専門職と管理職間のバランスを考慮しなければならず、必要のない矛盾を引き起こさないように注意しなければなりません。

ステップ3:職位昇進基準の設計

 職位昇進基準の設計は職位昇進制度の重点となっています。実は、多くの企業が昇進ルートを設置していますが、その基準が明確ではなく、運用の透明性に欠け、最終的には昇進ルートの利用が難しくなっています。

 今回は、二つの設計方法を紹介します。一つ目の方法は「審議制」です。「審議制」を利用する時に、各職位類別での各等級の職能基準を設計しなければなりません。また、その基準は常に定量と定性を結び付けます。例えば、学歴、勤続年数、同一職位での勤続年数、会社での勤続年数、過去の業績考課結果などの定量指標、および態度、能力などの定性指標を使って、最終的に、内部管理層からなる審議チームは従業員が昇進できるかどうか、ということを判断します。「審議制」のメリットは会社がコントロールできることです。二つ目の方法は「ポイント制」です。従業員は業績考課結果または他の方法でポイントを積み重ね、一つ上の等級のポイント基準を満たしさえすれば、昇進できます。「ポイント制」のメリットは客観性が比較高く、従業員が昇進できるかどうか、自分自身の勤務態度により決められることです。この二つの方法の出発点はそれぞれ異なるので、企業は管理特性及び管理文化により相応しい方法を採用することになります。

ステップ4:職位昇進制度の作成

 制度の作成はそれほど難しいものではなく、上記の三つのステップ内容を書面化、制度化し、実施中の職責と権限を明確にします。

 これらが中智コンサルティングが職位昇進制度を構築する際の設計構想および方法です。

 しかしながら、企業の状況が異なるため、実際状況に合わせて最適な制度設計を展開することになります。

 中智コンサルティングの方法が日系企業の人事責任者の方々のお役にたてる事を願っています。


   寄稿——中智人力資源管理諮詢有限公司 日系企業事業部
コンサルティングディレクター 総監 李 暁青