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【寄稿】年次報酬調整の進め方(2015年6月11日)

 多くの企業が年次報酬調整を行う時に、さまざまな問題に直面しています。例えば、報酬調整の参考要素をどうすればいいか、報酬調整水準はどのように確定すればいいのか、報酬調整の予算はどのように分配すればいいのか、というような問題をよく聞きます。そして、中智日本企業倶楽部が主催した数回のセミナーでも、参加者の皆様がそれに関しての強い興味を持っていることが明らかでした。これを踏まえて、今回は、年次報酬調整に関しての経験を分かち合いたいと思います。

年次調整の参考要素は三つの方面から考慮 

 まず、年次報酬調整の参考要素について、一般的には、『外部経済環境』、『企業自身の要因』及び『従業員個人の要因』という主に三つの方面から考慮しなければなりません。外部経済環境という要素に関して、GDP成長率、CPI指数及び外部事情の報酬増加幅などのデータが含まれています。特に、同じ業界における日系企業の報酬増加幅のデータが最も参考価値があるといえます。

 二つ目の要素は、企業自身の要因に関するもので、前年度の実際経営業績と将来の経営業績予測、及び企業の人材戦略などを含みます。経営業績は企業の支給能力を表しており、人材戦略による報酬のポジショニングを行うことができます。

 三つ目の要素は、従業員個人の要因に関するもので、『職位による報酬調整』及び『業績による報酬調整』という二つの角度から考えなければなりません。中智が日系企業を対象に行った調査結果によると、日系企業が報酬調整を行う時に、『会社業績』、『市場報酬調整データ』及び『CPI』という三つの要素を最優先に考慮し、これらが上位三位を占め、『個人業績』は第五位にとどまっています。これは日系企業が報酬調整を行う時に、『平均主義』を重視し、業績がよい従業員を重視することを中心に置いていないことの表れといえます。

報酬調整の仕組みは四つで構成される 

 次は、報酬調整の仕組みについて考えます。報酬調整の仕組みは『、一般報酬調整』、『職位転換による報酬調整』、『業績による報酬調整』及び『特殊な報酬調整』の四つから構成されます。一般報酬調整は一つ目の仕組みとして、当地の物価指数、当地の市場または業界の報酬水準による全体の報酬を調整する形であり、「一般特恵」と呼ばれます。また、この報酬調整は全従業員向けの調整ですが、報酬調整用の予算が足りない場合には、報酬調整を行わなくても構わないでしょう。

 二つ目の仕組みは職位転換による報酬調整のことであり、つまり職位を転換すると共に報酬調整を行うことです。例えば、上位の職位等級に昇格する場合は、原則として、報酬も上昇します。下位の職位等級に降格する場合は、原則として、報酬も減少します(長くなるのでここでは、報酬減少に関する作業の方法は深く議論しません)。従業員が同じ階級クラスに転換する場合は、報酬調整を行わなくても構いません。作業の面では、職位昇進(キャリアパス)に対して、3ヶ月の観察期間を設置することができ、観察期間の状況を考慮して、報酬を改めて調整します。

 業績による報酬調整は三つ目の仕組みとして、最もよく利用されている方法です。当年度の業績等級の結果によりそれぞれの報酬調整幅を確定することができ、優秀な社員の激励に一定の効果がある方法といえるでしょう。但し、日系企業について言うと、各業績等級の間での格差が相対的に小さく、業績がよい従業員への激励効果が著しく低くなっています。

 四つ目の仕組みとしては、特殊な報酬調整による会社経営と管理に重大な貢献をした従業員を奨励する仕組みです。通常現象ではなく、利用の頻度も比較的小さいといえます。

「四歩法」により報酬調整案を設計

 さて、企業が実際の報酬調整方案を設計する時に、「四歩法」(四つのステップ)により実施する方法を紹介しましょう。具体的なステップは下記の通りです。

 1.報酬調整の予算を確定します。通常は、企業の前年度の経営業績及び外部市場報酬増加幅の調査結果に基づき予算を確定します。但し、会社の支払い能力も考慮しなければなりません。

 2.報酬調整の予算の分配を確定します。一般的には、予算の分配を行う時に、職位昇進による報酬調整の金額、特殊な報酬調整の金額、前年度中途採用者の「年化収入増加分」(月給から年収に換算する時に、収入の増加部分のこと)、及び一般報酬調整用の金額などのことを確定した上で、残りの部分を業績による報酬調整の分として使います。

 3.業績による報酬調整に関しての分配を確定します。業績による報酬を調整する時に、企業が設定している業績等級と結び付け、分配を行います。通常は、中レベルの業績を基準とし、報酬調整比率または昇給用の号俸を設定し、業績等級が上昇すると共に、昇給比率または昇給用の号俸も上昇します。逆に、業績等級が下落すると共に、昇給比率または昇給用の号俸も減少します。

 4.シミュレーションと検証を行います。上記の分配原則に基づき方案設計が完了した後に、報酬調整に関してのシミュレーションを行うことによって、報酬調整の金額が予算範囲内にコントロールできているかどうかを検証する必要があります。同時に、業績等級ごと、クラスごと、職位序列ごとの従業員の報酬調整幅が会社の報酬激励戦略と一致しているかどうか、ということも検証する必要があります。総額をコントロールするだけでなく、激励の方向性が正しい報酬調整方案であってこそ企業が期待している効果を達成することができるからです。

 以上の内容は、長期間的にコンサルティングを行ってきた経験をもとに、中智日系コンサルティングチームがまとめた考え方です。報酬調整方法の設計は、技術的にかなり複雑であることが課題となります。

 次回は「どのように融通性が高い報酬調整の仕組みを構築するか」という話題を紹介したいと思いますので、ご期待ください。


   寄稿——中智人力資源管理諮詢有限公司 日系企業事業部
コンサルティングディレクター 総監 李 暁青