ホーム > HRニュース > 中国HRニュース >【判例】ボーナス支払の在籍要件を事前に約定していた場合、離職した従業員はボーナスを 受け取ることができるか? (2015年8月2日)

【判例】ボーナス支払の在籍要件を事前に約定していた場合、離職した従業員はボーナスを受け取ることができるか?

【判例】ボーナス支払の在籍要件を事前に約定していた場合、離職した従業員はボーナスを受け取ることができるか? (2015年8月2日)

案例:

 2010年3月、蔡氏はA社と3年間の労働契約を締結した。職種は高級電気技師で、試用期間は6ヶ月、賃金は月18000元であった。双方は採用通知書において、毎年の総収入は固定収入と変動収入の二つで構成されており、変動収入として2か月分のボーナスと1か月分の業績給を支払うこと、ボーナスは当年12月31日の段階で会社に在籍している場合にのみ支払うことを約定していた。

 同年9月、A社は採用要件に満たないことを理由として、蔡氏を試用期間内に解雇した。蔡氏はこれを不服として、仲裁庭へ仲裁を申し立て、ボーナスの50%の支払などを請求したが、仲裁庭はこれを棄却したため、訴訟に踏み切った。

争点:

 労働関係が終了し、労働者が年度末に在籍していない場合でも、ボーナスを請求することができるか?

判决:

 一審では、会社側は労働者の労働意欲向上や労働者の労をねぎらう為に、賃金外のボーナスを支払うことができる。但しボーナスの支払は会社側の法定義務ではなく、会社側は自主的にその条件及び金額を設定することができる。双方の約定によれば、A社にボーナスを支払うか否かの自主的決定権があり、かつA社は2010年9月に労働契約を解除しているため、蔡氏は「当年12月31日に在籍している」条件を満たしていない。ゆえに原告の請求を棄却する、との判決を言い渡した。

 二審では、労働者がどのような形で労働関係を終えようとも、報酬を得る機会を喪失したことに変わりはない。ゆえにこの約定は不合理であると言える。また、A社は会社側の収益要因や個人の業務達成状況について具体的な証拠を挙げることができなかった。この前提に基づけば、蔡氏がA社へ2010年のボーナスの50%、すなわち18000元の支払を求めたことには合理性があり、この請求は認められる、とした。

分析:

 

法律研究の深化発展に伴い、裁判官は案件を裁く際、法律に明文化された規定に基づくだけでなく当事者間の約定の合理性を考慮するようになった。離職した労働者が年末ボーナスを受け取れるか否かについては、以下の二つの観点がある。

 

 一つは、会社側が事前に「ボーナス支給は支給時に在籍している従業員に限る」と約定し、離職後の労働者へ相応のボーナスを支払わないことは公平性を欠くとするものである。

 労働報酬の分配は公平かつ公正であり、同一労働同一賃金の原則を貫かねばならない。過去一年間において離職した労働者も、ボーナスを得た労働者と同じように労働を提供し、会社のために貢献したものであるから、会社側との労働関係が終了したとしても既に労働した分の労苦をふいにすることはできない。ゆえに、会社側が離職した労働者へ勤務期間に応じたボーナスを支払わないことは、公平公正の原則と矛盾するものである。

 もう一つは、ボーナスの支払は内部管理の問題であり労働法の強制力の範疇に無く、会社側には自主的経営権があり、ボーナスを支払うか否か、いつ支払うかは会社側の説明で事足りるとするものである。

 法律の属性から見ると、労働法は社会法であり公法と私法両方の性質を併せ持つ。公法的性質は主に最低賃金基準の設定・執行や社会保険費用の納付など労働者の生活の保護という面において見られる。これらは労働法の強制規定に当たり、使用者も労働者もこれらを厳格に履行しなければならず、もし違反があれば労働行政により強制執行される。しかし年末ボーナスに関しては全く違い、これは労働法の私法的性質に基づくものであって、労働法では労働者へ必ずボーナスを支払わなければならない、と規定されていない。ゆえに、会社側はボーナスを支払わないこともできるし、ボーナス支払の具体的基準や方法を定めることができる。

 これら二つの観点から、ボーナスは一種の特殊な奨励金であり、会社側の業績考課管理と密接に関連するものであるとする説を我々は採る。会社側は自主的にボーナスの分配案を決定する権利を有するのである。もし労働契約及び集団労働契約の約定や就業規則などに規定が無いときは、会社側は自社の経営状況からボーナス支払の有無や支払基準、範囲を決定することが出来るのである。但しボーナス支払時点での労働者の在籍をボーナス支払要件とできるか否かについてはより議論を深める価値のある点である。

 我々は、ボーナスの支払基準をより明確にすることを提案する。例えば使用者と労働者のボーナス支払条件を年間の業績考課とリンクさせ、年末一度だけ業績考課を行い一定の業務成績を収めた者に相応のボーナスを支払う、業績考課には在職日数を含む勤務状況を考慮するなど全方面から評価を行い、いくつかの角度から評価することが肝要である。