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【判例】労働契約期間中に外国人就業許可証の期限が過ぎた場合、労働関係はどう処理されるか?

【判例】労働契約期間中に外国人就業許可証の期限が過ぎた場合、外国人労働者との労働関係はどのように処理されるか? (2015年10月21日)

案例:

 ジャクソン氏(英国籍)は2012年12月1日より科学技術会社であるA社の技術総監として、2012年12月1日より2013年11月30日までの労働契約を締結した。北京市人力資源社会保障局は2012年1月1日付でジャクソン氏へ2013年11月30日期限の「外国人就業証」を発給した。ジャクソン氏は2013年11月1日、病気のために病院の診察を受け、病院より2013年12月31日までの療養を必要とするとの診断証明書を受け取った。A社はジャクソン氏へ2013年10月31日までの賃金を支払い、2013年11月30日を持って同氏との労働契約を満了させる旨を伝えた。

 しかしジャクソン氏は、法律の規定する疾病療養期間内であったためA社が労働契約を終了させることができないことを理由として、労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、労働契約を2013年12月31日まで履行すること、2013年11月1日から2013年12月31日までの疾病療養期間中の賃金を支払うことを求めた。

争点:

 中国で就業している外国人の労働契約が就業許可証の期限を越える場合、どのような法的問題が生ずるか?

判决:

 仲裁庭は、A社が2013年11月30日にジャクソン氏との労働契約を終了させる際、ジャクソン氏は疾病療養期間であったから、「労働契約法」第四十二条、四十五条の規定により「労働契約期間が終了したとき、労働者が疾病及び業務によらない負傷をしており、疾病療養期間内にあるときは、その状況が終了した時点で労働契約が終了」させなければならない。もし自国の労働者であるならば労働契約は2013年12月31日まで延長されるが、外国人であるジャクソン氏と就業許可証の期限である2013年11月30日を過ぎて労働契約を延長するには、労働契約履行のための条件が整っていないとし、ジャクソン氏の請求を全面的に棄却した。

分析:

 

 中国が世界的な貿易組織への加入と改革開放を絶え間なく拡大深化させている現在、中国というチャンスとチャレンジに満ち溢れた大舞台は多くの外国人を引き寄せている。外国人が中国で就業(定住権を取得していない外国人が中国国内で法に基づき社会的労働に従事し労働の対価として報酬を受け取る行為)するには必ず行政法規に則った相応の手続が必要となる。これが一般的労働者の法律適用との間に一定の差異を生んでいる。

 「渉外民事関係法律適用法」 第四十三条には、「労働契約には、労働者が労働する地点の法律を適用する」とある。この規定によれば、外国人が中国で就業する際の労働契約に関する問題には自然に「労働契約法」が適用される。しかし、外国人労働者については本国の一般的労働者と違い、国家主権の尊厳という点からはもちろん、国内就業秩序の管理という点からも、一定の特殊な制限をかけなければならない。「外国人在中国就業管理規定」には、外国人が中国国内で就業する際に必ず注意しなければならないこととして、まず年齢、専門技能、業務経験、証明書の有効性、犯罪記録の有無から、招聘単位の規定条件に符合しなければならないこと、ビザや就業証、就業許可証、外国人居留証などの証書を揃えていること、国家及び地方の規定する条件に該当する外国人の場合は就業許可証が免除されること、を挙げている。就業証及びその他の就業許可証を取得していない外国人が中国国内で就業した場合については、「出境入境管理法」第四十三条に「規定の就業許可証及び就業に関する居留証を取得せず、又は就業許可の範囲を超えて中国国内で就業した外国人は全て不法就業とする」との規定がある。ゆえに、使用者と就業証を取得していない外国人が労働契約を締結した場合、「労働契約法」第二十六条第一項第(三)により無効な契約となる。

 実際の外国人労働者の使用において、就業証の有効期限と労働契約の期限は往々にして一致しないものである。このように労働契約期間と就業証の期限が一致していない場合、どのような法律を適用して国内の就業秩序と使用者、外国人労働者三者の利益均衡を図るべきか?関連規定では、外国人就業証の手続(延長含む)では使用者側が関連行政主管部門へ申請しなければならないこととなっている。使用者と外国人との労働契約期限が満了する前に、就業証の期間が過ぎることはあり得る。もし使用者がその外国人の就業証を延長を望んでいるが、外国人自身の客観的要因により就業証を延長できないときは、「労働契約法」第四十四条第六項の「その他法律、行政法規の規定により労働契約が終了するとき」に該当する。すなわち外国人自身の原因により「出境入境管理法」の規定する就業条件を満たさないということで、双方の労働契約は終了する。では、もし使用者がその外国人の就業証延長を拒んだ場合、その行為はどのような法的結果がもたらすと見做されるだろうか?使用者が外国人の就業証延長を拒んだ場合、それは一方的な労働契約解除の意思表示と見做される。この時、労働契約法の関連規定に基づきその合法性が審査される。もし合法ではないときは、その外国人は「労働契約法」第四十八条の規定に基づき不当解雇による損害賠償を請求する権利を有する。但しその外国人が労働契約の継続的履行を主張した場合は、就業証を延長できないため労働契約を継続履行する客観的条件を満たすことができないことから、これが認められることはないが、不当解雇による損害賠償に変えて請求することは可能である。

 ここで我々は、労働契約の終了及び解除の定義を明確にしておかなければならない。労働契約の終了とは、すなわち法律及び約款で定めた事実が現れ、労働契約が終結し、双方に労働契約上の権利義務を履行することが無くなった状態を言う。労働契約の解除とは双方及び一方の意思表示により、契約期間中の労働契約の継続的履行を阻却することを指す。なので、外国人自身の客観的原因により就業証を延長することができないということは、中国で就業するための主体的資格を具えていないということとなり、労働契約終了の法定要件を満たすため、労働関係が終了したと見做されるのである。また使用者がそのような(外国人就業証の延長を拒む)行為をもって、契約期間中の労働契約の継続的履行をできなくする場合は、使用者が当該外国人との労働契約を一方的に解除する意思を表示したものであると見做される。