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【判例】使用者が批准した労働者の離職は、協議離職と自己都合離職のどちらに該当するか?(2016年4月27日)

案例:

向氏は広州市にあるA科学技術有限公司の上級業務経理であったが、彼の担当する部署は市場の縮小により、次第に損益を出すようになった。度重なる努力も空しく、向氏は損益の拡大を止めることが出来ず、そこで彼は、新たな仕事を探そうと決心した。あるとき、向氏は長年会っていなかった同級生の孫氏と偶然出会った。孫氏は自身で会社を立ち上げていたが、人手が足りず、向氏を自分の会社へ招聘したいと申し出た。向氏ははっきりYESと答え、会社へ戻った後、人事部経理へ思うように業績が伸ばせないことを理由として労働契約を解除する用意をしている風の態度を見せた。人事経理は向氏へ、会社側が彼の部署を閉鎖することを告げ、向氏がたいへんな苦労をしていることは皆が知っている、向氏が次の活躍の場を探すことを支持する旨発言した。そこで、向氏は会社へ辞表を提出し、人事担当経理がA社を代表してこれを批准した後、両者は労働契約を解除した。

 その後向氏は、会社側が離職協議に批准した場合には、どんな場合でも経済補償金を請求できることを人づてに知った。そこで向氏はA社へ経済補償金の支払を求めたが、A社人事部はこれを拒否した。人事担当経理は、向氏の離職は自己都合退職であり、経済補償金の支払は発生しないとの認識を示している。

争点: 

 使用者が労働者の離職を批准した場合、協議離職と自己都合退職のどちらに該当するか?

分析: 

この案件は、労働者と使用者が同意の上で労働契約を解除した場合の典型例である。「労働契約法」第三十六条には、使用者と労働者が協議により合意したときは、労働契約を解除できるとある。注目に値するのは、労働者が離職を申し出た後使用者が離職を認めた場合、これは双方の協議による離職となるのか否か?という点である。もしこの離職行為が一方的な労働契約解除であるならば、何を以て協議離職とするのか?現在では、多くの企業が規則を明文化すると共に、離職届の書式を統一し離職者の署名欄と批准者の記載欄を設けている。このような状況下で、一部の悪意ある労働者が、批准者の記載欄に文章を記し、あたかも使用者側の意向による離職であるかのように見せかけた場合、もし使用者側がこれに同意すると、双方同意による離職であると見做されてしまう。更に悪質なものでは離職後に経済補償金を要求し、ある案件ではその申し立てが認められている。企業側からは労働者の離職が自己都合退職なのか双方同意による離職なのかの区別がつかず、これがリスクを発生させ争いを生む要因となっている。「労働契約法」ではこの問題の存在を考慮し、使用者は労働者本人の申し出による労働契約の解除に対し、経済補償金を支払わなくても良いとしている。すなわち、企業側が労働者との契約を解除したことを証明すれば、それは話し合いによる契約解除という事になるが、労働者側の自己都合退職の場合は、経済補償金を支払わなくとも良いのである。

労働者の離職の分類は単なる学術的検討や立法主旨の問題であるだけではなく、具体的な法的責任と結果に関する問題なのである。使用者側が離職問題を取り扱うとき、特に証拠意識がある場合には、実際に法的に影響を与える意思表示とあおれに関する事実を書面により確認、保管し、法的リスクを避けようとする。これについて、我々は三つの点について提起しておきたい。

 1、自己都合退職の場合は書面による文書を残さなければならない。自己都合退職は、労働者が自主的に労働契約を解除するものであるから、使用者側の法的リスクは一般的に低く、予告や経済補償金の支払いも必要ない。この時、使用者側は自己都合退職の証拠を残し、その後の紛争のリスクを避けるべきである。労働者の自己都合退職に対しては、書面で辞表を提出させ、自己都合退職であることを明記させなければならない。

2、離職理由に注意を払う。労働者の離職理由の大半は個人的なものであるから、辞表の離職理由には使用者側の違法行為や強迫といった内容はまず記載されない。もし離職理由にこのような内容が記載されていたときは、労働者側へその訂正を求めるべきである。さもなくば自己都合退職が会社都合退職となり、労働者へ経済補償金を支払うこととなる。使用者は特にこの点を注意しておかなければならない。

3、労働契約解除協議書に自己都合退職であることを明記する。話し合いによる契約解除の場合、使用者側から申し出た契約解除は会社都合退職となるため、「労働契約法」では労働者へ経済補償金を支払うよう明記している。しかし労働者側から離職を申し出た場合は、経済補償金の支払義務は発生しない。ゆえに話し合いによる契約解除の際には、その協議書に署名した上で、これが労働者の自己都合退職であることを明記しなければならない。