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【判例】労働契約解除の撤回による賃金の損失額はどのように算定するか?(2016年5月27日)

案例:

李氏は1988年3月1日北京市にある星星飯店に入職し、ルームサービスに従事していた。1999年8月1日、双方は期間の定めの無い労働契約を締結した。

 2013年6月25日、星星飯店は李氏へ「従業員規律違反通知」及び「労働契約解除通知書」を送付した。その内容は、「本飯店『就業規則』第18条規定による重過失により、『労働契約法』第三十九条二項の規定を以て、労働契約を解除する」というものだった。

 その後、李氏は北京市労働人事仲裁委へ仲裁を申し立て、星星飯店との労働契約の回復を求めたが、仲裁庭はこれを棄却したため、李氏はこれを不服として法院へ提訴した。一審、二審を経て2014年3月に判決が下され、法院は「『就業規則』には、飯店の物品を私物化することは重大な規律違反であり、初犯であっても労働契約を解除するとある。

しかし本案件で李氏が私物化したものはトイレットペーパー二個であり、その価値は低い上、初犯であり、事件発生後に検討の余地があったはずである。

ゆえに、この行為は確かに飯店の規定制度に反しているけれども、法で規定する「重大」の程度とはかけ離れており、飯店の労働契約解除は明らかに不当なものである。この他、星星飯店はその「就業規則」が民主的手続に則り制定されたことを証明できておらず、この点にも瑕疵が存在する。しかし李氏が業務期間に物品を私物化した点は職責遵守に抵触するものであるから、法院はこの行為に対し懲戒を与える」との結論を下し、最終的に星星飯店と李氏の労働契約の継続履行を認めた。

2014年4月9日、李氏は仕事に復帰した。李氏が出勤していない2013年6月26日から2014年4月8日までの期間、飯店側は賃金を支払っていなかった。また飯店側は、本来支払われるべき2013年の年度末賞与7000元についても、支払いを認めなかった。

このため、李氏は再び労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、星星飯店へ2013年6月26日から2014年4月8日までの生活費(賃金)32129元と2013年のボーナス7000元、2014年の年末福利厚生費600元の支払を求めた。仲裁委は北京市最低賃金に照らし、飯店側へ李氏の生活費として14800元を支払えとの判決を言い渡した。

李氏はこれを不服として、北京市人民法院へ提訴した。

争点: 

星星飯店の不当な労働契約解除が判決によって無効とされ、双方の労働関係が回復した状況下にあって、労働契約解除から労働契約回復に至るまでの李氏の賃金の損失はどのように算定されるか?

判決: 

一審は仲裁庭の意見を合理的とみなし、これを認め、賃金に照らした生活費の請求は認められなかった。一審は、星星飯店へ李氏の2013年6月26日から2014年4月8日に至るまでの生活費(賃金)14800元を支払うよう命じ、李氏の訴えは棄却した。

李氏はこれを不服として控訴した。二審は、民事判決によって星星飯店の判決が不当であることが確定し、労働契約継続との判決が下されたとしても、李氏の行為が星星飯店の規則制度に反していた事実には変わりなく、そこに一定に瑕疵が認められるから、一審の「星星飯店は北京市最低賃金を基準として李氏へ2013年6月26日から2014年4月8日までの生活費を支払え」との判決は不当ではない。李氏の主張する2013年のボーナス及び2014年の福利厚生費についても、証拠が不足しておりこれを証明するに至らないから、一審の判決は不当ではないとして、一審判決を支持した。

分析: 

本案件のポイントは使用者による労働契約解除が不当であり、これが撤回され労働契約が回復された状況下にあって、労働契約解除後労働契約が回復するまでの間の損失をどのように算定するか、という点である。

労働者がこの間に受けた賃金や社会保険を含む損失について、社会保険の部分は使用者と労働者が法に基づき納付することとなる。賃金の賠償問題については、法律では明確な規定は無いが、案件の具体的な状況や当事者の過失を総合的に判断している。具体的には、労働契約解除の過失責任が使用者側にあるときは、労働者が在職し得た期間に得られた賃金を支払う。しかし労働者に一定の過失があり、使用者が規則の適用及び運用を誤り労働契約が解除されたときは、労働者への賠償は酌量される。賠償基準は労働者が在職し得た時期の全ての賃金ではなく、当該地域の平均賃金及び最低賃金に準拠した額とされることもあり得るのである。

本案件において、確かに星星反転の労働契約解除は無効とされ、労働契約の継続履行が判決で出されたものの、李氏が飯店の物品を私物化した点に一定の過失があるため、法院が星星反転へ北京市最低賃金基準に基づき李氏へ2013年6月26日から2014年4月8日までの生活費を支払うとすることは、本案件の実際の状況及び公平性から見て、合法的合理的に双方の問題を解決したものであると言える。