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【判例】一部門の発した「契約満了」通告は労働契約の解除とみなされるか?(2016年9月28日)

案例:

任氏は2015年3月24日至緑緑物業服務有限公司のA区不動産事業部で顧客サービス主管の任に就いていた。会社側は2015年6月から11月まで任氏の社会保険費を納付していた。2015年11月13日、緑緑物業公司は任氏を職責に堪えないとして、同社B区不動産事業部の顧客サービス一般従業員に降格させた。その後B区同事業部は、任氏が顧客サービスに携わるのは好ましくないという理由で、同氏を不動産管理課へ異動させ、双方間に紛争が発生した。

 2015年11月25日、任氏は不動産事業部の発行した「契約満了」通告を受け取った。通告には不動産事業部の印章が捺印されていた。そこで任氏は労働争議仲裁を申請し、緑緑物業服務有限公司へ違法な契約解除の損害賠償金7000元の支払いを求めた。

争点: 

不動産事業部の発行した「契約満了」通告は労働契約解除の手続きとみなされるか?

分析: 

不動産事業部の発行した「契約満了」通告は、緑緑物業服務有限公司の労働契約解除手続きとみなされるのだろうか?

仲裁委の意見は二つに分かれた。まず一つは、会社側との労働契約は解除されていないとする見方である。任氏の労働契約は緑緑物業公司と締結したものであるから、任氏は不動産事業部の通告後会社へ戻り、新たな異動命令に従うべきとするものである。

もう一つは、緑緑物業公司は任氏との労働契約を解除したとするものである。その理由は、会社側と任氏との労働契約は双方間の合意に基づくものであることと、会社側は2015年11月以降任氏の社会保険費を納めておらず、任氏との雇用契約を継続する意思が無いことが見て取れることの二点である。

筆者は、 会社側が労働契約を解除したか否かは、①不動産事業部の管理権限、②不動産事業部の印章の効力、③会社側の真意の3つの視点から決定すべきであると考える。まず、緑緑公司当該地区の不動産事業部が直接労働者を管理し「契約満了」通告を出した行為については、越権行為及び無権代理か、表見代理か、という問題がある。もし不動産事業部が事前に授権された上でこのような行為を行い、会社側が授権を撤回していない場合、この通告は有効となるし、不動産事業部が発した「契約満了」通告が、会社側の意見でないことが明らかであるときは、会社側への確認が必要となる。また、もし「契約満了」通告の後、任氏がある理由によりこれが労働契約の解除であるとした場合、これは会社側の表見代理となる。

次に社印については、「国務院国家行政機関及び企業単位等社会団体における印章管理に関する規定」によると、社印は法に基づく手続き及び審査の後、企業責任者の批准を経て、当地公安機関の指定する刻印業者によって作成されて初めて合法的な法的効力を有するものであるから、公安部へ印鑑登録する必要は無いのである。 

第三に 会社側の真意について、任氏は仲裁を申し立てた際、会社側の社会保険納付記録を提出しているが、仲裁委は調査の結果、会社側は任氏の社会保険費の納付を契約解除の一ヶ月以上前にストップしていることが分かった。不動産事業部は任氏へ「契約満了」を通告した際これが事業部の総意であると明言していないため、これは表見代理行為であると言える。会社側が任氏の社会保険費の納付を止めた点を考慮すると、捺印のある「契約満了」通知は会社側が任氏との労働契約を解除するという真意の表明であると言え、会社側は労働契約解除への責任を負うこととなる。ゆえに、会社側が任氏へ労働契約解除の合法的根拠を示していないことから、仲裁庭は最終的にこの契約解除を違法と認め、会社側へ損害賠償金7000元の支払いを命じた。

実務の上では、一部使用単位、特に本部と現場が離れている職場にあって、故意に部署の署名と捺印がある書面で「契約満了」手続きを行い、労働者と行政の目を胡麻化す行為が見られる。一旦紛争が発生すると、使用者は労働者との契約を解除した事実をすべて否定し、事実確認に追われるという泥沼にはまってしまう為、このような行為は慎むべきである。使用者が部署の署名捺印のある書面でこのような手続きを行ったことが故意であろうとなかろうと、使用者はその立証責任を負う。何故なら労働者にその立証責任を負わせれば、客観的に見ても労働者の注意義務を過剰に重くなり、信義誠実の原則に反するからである。もしこの間違った手続きの結果、労働者が正常な失業登録や求職の申込を行えなくなったときは、使用者は相応の法的責任を取らされることとなるのである。