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【判例】企業内部の組織再編は「客観的に見て重大な状況の変化」に該当するか?(2017年3月29日)

案例:

王氏は2013年5月13日、南京市内にある電子科学技術有限公司の総務部へ入社し、総務課で事務員として働いていた。

2014年6月27日、会社側は王氏に対し配置転換を持ちかけ、併せて組織調整通知書と職位調整通知書を提示したが、王氏はこれに明確に同意しなかった。会社側はその当日、王氏の社会保険料納付停止の手続きを取った。その後、会社側は王氏と話し合いの末、労働契約を解除する点で一致を見たが、経済補償金の支払いについては合意に至らなかった。

2014年7月1日、会社側は王氏へ書面を送達し、職位の調整が不調に終わり、労働契約を履行できなくなったとして、双方間の労働契約を解除した。

2014年7月2日、王氏は南京市雨花台区労働争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へ違法な労働契約の解除に対する経済補償金の支払いを求めた。2014年8月14日、王氏は仲裁庭が45日間の審議期日を経ても採決しないことを理由として、雨花台区労働争議仲裁委員会が(会社側の主張を)認めたものとし、南京市雨花台区人民法院へ提訴した。

王氏側は、2014年7月1日に会社側から労働契約解除を言い渡された。この時会社側からは何ら説明が為されず、当日中に離職するよう求められたと主張した。

会社側は、王氏が配置転換に同意しなかったことに基づく合意の上での解雇であり違法ではない。したがって不当解雇による経済保証金を支払う必要は無いと反論した。

争点: 

企業内の組織再編は「客観的に見て重大な状況の変化」に該当するのか?

判決: 

「労働契約法」第四十条第三項には、「労働契約の締結時に依拠した客観的な状況に重大な変化が起こり、労働契約の履行が不可能となり、使用者と労働者が協議を経ても労働契約の内容変更について合意できなかった場合」(に労働契約を解除できる)との記載がある。この規定で言う客観的な状況の変化とは、当事者間が労働契約を締結した際に予見することができず、かつ契約当事者の一方の責によらない状況により、この客観的状況の発生により元の労働契約を履行できなくなった、または元の労働契約の履行に際し明らかに公平な結果を生み出さなくなったことを言う。会社側の「関連部署組織機構調整に関する通知」を精査するに、会社側が社内の基礎整備を終えたことにより、総務部の職能を調整する必要があったことは明白である。この通知にある記載事項の内容は、法で言うところの「労働契約の締結時に依拠した客観的な状況に重大な変化が起こった」ものではない。ゆえに、会社側の王氏に対する労働契約解除は何ら法的根拠を持たないものであると言える。

分析: 

この案例を通して、「客観的に見て重大な状況の変化」について考えてみたい。

1、「『労働法』に関する若干条文の説明」第二十六条第三項には、労働契約の締結時に依拠した客観的状況に重大な変化が起こり、労働契約の履行が不可能となり、使用者と労働者が協議を経ても労働契約の内容変更について合意できなかったときは、使用者は労働契約を解除できる、としている。本条文の「客観的状況」とは、 不可抗力及び労働契約の全部または一部を履行できなくなる状況が発生することを言う。会社の移転や吸収合併、企業資産の移動などがそれに該当する。 

2、実際の人事において、その実践はやや複雑だ。一般的には、使用単位の閉店、事務所や支社の閉鎖などが客観的状況の重大な変化と認められるが、組織機構の調整の場合には必ずしも認められるとは限らない。 もし使用者側が親会社の求めに従って組織機構の調整を行ったのならば、客観的状況の重大な変化だと言えるだろう。しかし自社職能機関の再編となると、客観的状況の重大な変化があったか否かは、その具体的な内容によって判断が分かれてくる。 

3、本案件において、 会社側は組織機構の再編が終わり、総務部の職能調整が必要になったことを客観的状況の重大な変化だと主張していた。しかし法院は、職能調整は予見し得ない原因により引き起こされたものではなく、日常の経営管理の一環であるとして、これを客観的状況の重大な変化だとは認めなかったのである。