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【判例】業務を原因とする同僚同士での殴り合いで受けた傷は労災に認定されるか?(2017年5月25日)

案例:

曽氏と康氏は某社工場で働いていたが、2017年2月、二人は上司である李氏の業務分配が原因で対立し、口論の末殴り合いの喧嘩となった。結果、曽氏は左手を骨折し、治療費約1万元を支払った。

判決: 

本案件において、曽氏が同僚である康氏との殴り合いにより負傷した場合、それが労災となるか否かについて、意見が分かれた。

一つは、曽氏は労働時間内に就業場所で、職責の遂行を原因とする暴力行為により負傷したのであるから、「工傷保険条例」第十四条の規定により労災となる、とするものである。

もう一つは、曽氏の負傷の真の原因は同僚との喧嘩であり、殴り合いは業務ではなく、また業務を原因としなくても発生する可能性があるものであった。曽氏が負傷した事実と職責の遂行には何ら因果関係が見られないため、労災とは認められない、とするものである。

分析: 

筆者は以下の理由から、後者を支持する。

まず、「工傷保険条例」第十四条には、「職工が以下の状態にあるときには、労災と認める(略)…就業時間内に、就業場所で、職責の履行のために暴力などにより想定外の傷害を受けたとき」との記述がある。

職責の履行のために暴力などにより傷害を受けたとき、という文言は、傷害と職責の履行に必然的な因果関係を要することを意味している。本案件において曽氏が受けた傷害は確かに業務の事情によって引き起こされているものの、殴り合いによって解決するものではない。互いのコミュニケーションを通じて上司に報告するのが正当な解決方法であり、殴り合いは職責の履行に必要なものではないのである。

更に、「工傷保険条例」第十四条に規定する想定外の傷害とは、予測し得ず突発的に発生したものを言う。曽氏と康氏は健常者であり、互いに殴り合うことによってどのような結果をもたらすかは当然認知していたと思われるため、曽氏の同僚との殴り合いに意外性は認められない。

総じて、本案件において曽氏が傷害を受けた事実と職責の履行には何ら因果関係がなく、また想定外の傷害でもないため、労災と認めるべきではないと、筆者は考える。