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【判例】在宅勤務の労働者が日勤制へした場合、労働者は補償を受けることができるのか?(2017年6月28日)

かつて、ハイテク産業の巨頭であったIBMでは、「在宅勤務」という人も羨む「福利厚生」を有していたが、それも過去のものとなった。

海外メディアの報道によると、IBMは近日中に在宅勤務制度を廃止し、家庭内オフィスにあるノートブックを全て回収した上で、労働者へ日勤制で勤務するか退職するかを選択させるとのことである。

この決定は、大きな物議を醸し出した。もしあなたの会社が突然元々の業務内容や福利厚生を突然変更したら、あなたはどのような選択をするだろうか?会社側の決定に従うだろうか、それとも違う仕事を探すだろうか?

在宅勤務者の日勤制への変更は、労働契約の変更に該当するのか? 

労使の話し合いによる一致は必要となるのだろうか?  

「労働契約法」第十七条には、「労働契約では以下の約款を定めなければならない…(四)勤務内容及び勤務場所」との条文があり、労働契約では必ず「勤務内容及び勤務場所」を定めなければならない。

ゆえに、もし労働者と使用者が締結した労働契約に在宅勤務であることが明記されているのならば、日勤制への変更は労働契約の変更ということになる。

また、「労働契約法」第三十五条によれば、「使用者と労働者による話し合いの一致があれば、労働契約の内容を変更することができる。変更した労働契約の締結は、書面をもって行わなければならない」とされている。

この場合、労働者は使用者へ通勤手当等を求めることができるのか?もし使用者がこれを拒否した場合、労働者は如何にして自身の権利を守るべきか?  

在宅勤務から日勤制へ労働契約を変更した場合、労働者は毎日オフィスへ勤務し仕事を行わなければならない。そうなれば、労働者は朝のラッシュの中出退勤しなければならないだけでなく、毎日の交通費も支払わなければならなくなる。かつての在宅勤務ならば交通費を支払う必要がなかったのに、だ。

この場合、使用者は労働者へ通勤手当を支払わなければならないのか?通勤手当は使用者が労働者の出退勤の為に一定額を補償する手当であり、強制的なものではない。

上述の通り、もし労働契約の内容を在宅勤務から日勤制へ変更するのならば、これは労働契約の変更に該当し、双方間での話し合いが必要になる。協議しなければならない内容は勤務場所、勤務時間、賃金など多岐に渡るが、出勤及び退勤時の手当の支払いについても、当然話し合わなければならない。

このとき、労働者が通勤手当を求めるのは、我々から見ても非常に合理的な要求である。労働者が交通費を支払わなければならないのは、すなわち使用者が勤務形態変えたからであり、労働者側が更なる出費をしなければならなくなった以上、使用者側へ適切な通勤手当の支払いを求めるのは妥当であると言える。もし使用者が通勤手当の支払いを拒否した場合、これは一種の賃金の不利益変更に該当するであろう。

もし労働者が日勤制への変更に同意しなかった場合、何らかの補償が得られるか?

「労働契約法」第四十条には、「次の場合、使用者は30日前に労働者へ書面により予告するか、労働者へ一ヶ月分の賃金を支払うことで、労働契約を解除できる。…(三)労働契約締結時から客観的に見て重大な状況の変化が生じ、労働契約の履行が不可能になり、使用者と労働者との協議によっても労働契約の内容を変更するに至らなかったとき」とある。

使用者がある労働者を在宅勤務から日勤制とすることは、「客観的に見て重大な状況の変化」と呼べるだろうか?

この問題を一概に結論付けることはできないが、この変更が労働者の労働契約履行に実質的な影響を与えるかどうかを見る必要があるだろう。

労働者の居住地と使用者の就業場所が非常に離れている場合、双方は「距離」に基づき在宅勤務による労働契約を締結したと言うことができるだろう。このような場合、もし労働者を日勤制にした場合は、労働契約の履行に実質的な影響が出ることになる。このケースで、双方の協議の末、もし労働契約の変更に至らなかったときは、使用者は解雇予告手当と経済保証金を支払い労働者との契約を解除することができる。

労働者の居住地が使用者の就業場所が(通勤に)合理的範囲内にある場合は、勤務形態の変更が労働契約の履行に実質的な影響を与えるものであるとは言えない。

前述の通り、確かに労働契約は双方協議の一致を見て変更する必要があるが、このように業務方法を調整するだけならば、労働者が労働契約を履行するに当たって実質的に何ら影響が無い。またこの場合、使用者が労働者へ相応の手当を支払うのならば、使用者が自主的経営権を行使しただけであると言える。特殊な状況でない限り、労働者はこれに従うべきであろう。