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【判例】 離職後に当年の年休を消化していないことが判明した場合、会社側へこれを買い取らせることができるか?(2017年9月26日)

案例:

李氏は大学卒業後、2014年7月に某IT企業へソフト開発者として入社した。1ヶ月の賃金は10000元であった。

2017年2月4日、李氏は退職届を提出し、会社側の同意を経て、当月28日に離職手続きを終えた。

離職してから1週間が経ち、李氏は2016年度の年休を消化していないことを思い出し、会社側へその期間の賃金を支払うよう求めたが、会社側はこれを拒否した。

そこで李氏は仲裁庭へ、会社側に対し2016年度の有給休暇5日分の賃金4597.7元を支払うよう求めた。仲裁委委員会は審議の後、この案件を受理した。

争点: 

李氏は、在職中は非常に多忙で有給休暇を申請する暇がなかったにも関わらず、会社側は有給休暇の取得を按配しなかったとして、会社側に対し2016年度年休の5日間の賃金4597.7元(10000元/21.75*5日*200%)を支払うよう求めた。

会社側は、2017年の春節前に李氏を含む全員が参加した7日間の社内旅行に参加しており、年休は既に使い切っている。例え李氏が年休を余らせていても、自身の都合により離職したのだから、その後に年休を按配することはできないはずだと反論した。

仲裁委員会は李氏の請求を認め、会社側へ2016年度の未消化有給休暇5日間分の賃金4597.7元の支払いを命じた。

分析:  

年次有給休暇とは、一定期間以上連続して働く従業員へ、心身の健康保持を目的として毎年与えられる一定期間の有給での休暇を言う。休息権は、憲法で定められた国民の権利である。

「労働法」は全労働者に対して初めて年次有給休暇の原則を規定したものであり、すなわち年次有給休暇制度は国家により実施されている制度であると言える。労働者は連続一年間業務に従事すれば、年次有給休暇を取得できる。

その後、国務院の公布した「職工年次有給休暇条例」、人力資源社会保障部による「企業職工年次有給休暇実施辯法」により、その具体的な運用方法が定められ、全労働者の休暇権は細分化された。

本案件では、李氏が年休を取得し終えたか否か、離職後年休が余っていた場合誰の責任によって年休が処理されるかが争点となっている。

「職工年次有給休暇条例」第五条によると、使用単位は生産、業務の具体的状況または本人の希望を考慮し年次有給休暇の按配を統括する、とある。

年次有給休暇は1つの年度内に集中して取得したり、ばらばらに取得したりすることもできるが、一般的に年度をまたいで取得することができない。使用単位が生産や業務上の特性により年度を超えて年休を按配せざるを得ないときは、1年だけ年度をまたいで年休を手配することができる。

一般的に、労働者は法に基づき自主的に休暇時間及び休暇方法を決定する権利がある。したがって使用単位による研修や旅行などの団体活動は、法定外の福利に属するから、これらを混同することはできない。仮にもし使用単位に労働者へ未消化の有給休暇を使わせることが出来ない特別な事情がある場合は、双方の協議による一致が必要となる。またこの場合、労働者が自主的にこれを選択しなければならない。

本案件において、会社側は李氏が年休を消化して社内旅行へ参加したことを証明する証拠を何一つ提出しておらず、ゆえに不利な結果を招くこととなった。会社側の、李氏が社内旅行へ参加したため年休は全て消化しているという主張は、成立し得ないものとなっている。

労働者が自主的に離職した際に、使用単位は自主的に未消化分の年休を算定しその賃金を支払わなければならないのだろうか?

「企業従業員年次有給休暇実施規則」第十二条には、使用単位は従業員との労働契約が終了した際、当年の未消化分の有給休暇について当年の賃金を元にその日数分の賃金を支払わなければならない(但し算定後一日分に満たない部分の賃金は切り捨てる)と規定されている。ここには、労働者の離職原因について触れられていない。年次有給休暇は法定権利であり、労働者がこれを行使できなかったという事実があるだけで、労働関係が終了した後でもこれに関する主張ができるのである。

本案件で、李氏は1ヶ月前に離職を予告しなければならないとする労働契約上の義務を履行している。ならば会社側は、正式に離職する前に、会社側は未消化の年休を按配することができたはずである。

ゆえに、労働者が申請しなかったまたは労働者が自主的に離職したために年休を按配できなかったという会社側の主張は、仲裁庭で認められなかったのである。

本案件の分析から、使用者としては労働者の(休憩、休暇含む)業務時間の統計を取り、未消化の年休については離職前に手配するか、労働者との引継ぎの際に、法に基づき相殺すべきである。労働者については、年次有給休暇の取得など権利を主張する際には法的に保護を受けている範囲を超えないように気をつけなければ、紛争発生時に勝訴を勝ち取ることが難しくなるだろう。

仮に労働関係が終了した後に請求を行うと、使用単位との間に紛争が発生しやすくなる。訴訟は長い時間と資金を要し、その後のキャリアにも影響しかねないので、慎重になすべきである。