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日・中の企業高層幹部が語る グローバル人材の育成、挑戦の軌跡(2017年11月7日)

 マネジメント層の現地化が日系企業の課題とされて久しい一方、中国市場で勝ち抜くため、専門の知識・技術を持つ高級人材の需要も高まっている。では、そうした人材を惹きつけ活躍させるため、日系企業はどのように取り組んでいるのか。国有人材サービス大手・中智上海経済技術合作公司のフォーラムで、日本人と中国人、双方の高層幹部が課題と展望を語り合った。

人材戦略別、企業3タイプ 

「人材戦略の面で、最近の日系企業は3種類に大別できる」と、中智日本企業倶楽部部長の馮串紅氏は語る。①役職者も意思決定権も日本人に集中 ②役職は現地人材に委譲しているが、意思決定権は日本本社が保有 ③企業戦略に基づき、役職も権限も適正本位で付与──の3種類で、企業数はどれも同じくらいという。

 このうち③は新しい傾向で、専門の知識やスキルを重視して現地人材を採用・育成する企業も見られる。世界で活躍する中国系企業が増えた今、外資系というだけでは、国際的な競争力に寄与する人材を確保しづらくなっているためだ。

 中智はこの傾向に注目し、9月に上海市内で開いた「中国人力資本論壇2017 日系企業分科会」で、日系企業の高層幹部を集めたパネル討議を実施。日本人だけでなく中国人高層幹部もパネリストに招き、在中日系企業幹部ら230人の参加者を前に、双方の視点から日系企業の人材戦略を語り合った。司会は馮氏、コメンテーターは日経BP中国社董事長総経理の谷口徹也氏が務めた。

日・中、双方が感じる“壁” 

 人事における“日中の壁”については、富士フイルム(中国)投資人力資源部部長の姚遠氏が「権限委譲の壁が依然大きく、中国人社員のやる気にも影響しかねない。日本品質を守るため駐在員は必要としても、その役割は要考察」、新日鉄住金軟件(上海)事業支援総括部総括部長の鄭浩峰氏が「中国人側からはトップ人事に“壁”を感じることがあり、優秀な人材の離職を招きかねない」と問題提起した。また、三井金属(上海)企業管理董事・総経理の境克也氏が「日本側の管理部門の新入社員全員が中国に研修に来る制度をつくったところ、最初は嫌がっていた社員からも中国赴任希望者が現れている」と、“日本側が感じる壁”を壊す取り組みを紹介した。

 人材のグローバル化については、キヤノン(中国)アジア人力資源本部高級総経理の森川剛志氏が、世界規模で人材をローテーションしているキヤノンの制度を紹介し、「部署間異動に抵抗感の強い中国でも、インセンティブの制度化と成長メリットを実感できる風土を作ることで、同意してもらいやすくなる」、江蘇王子製紙営業本部長の岩永栄次郎氏が「江蘇王子製紙のトップは中国人で、中国総代表もカナダ系中国人。大胆な人事だったが、決断力に富む社風に変化した」と語った。

  

BIZCHINA VOL.183 2017.11より