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【判例】 離職した労働者は年末賞与を受け取ることができるか?(2017年12月28日)

案例:

2007年3月1日、陳氏は某建筑公司へ建築士として入社した。2009年12月、陳氏と会社側は期間の定めのない労働契約を締結し、毎年年末にボーナスを支払うことを約定していた。労働契約には、「会社側は従業員の業務パフォーマンス及び社内の各要素を総合的に判断し、年末賞与を支払うものとする。但し従業員は会社側の考課に合格しなければならず、会社側は業務パフォーマンスが芳しくない従業員の賞与を減額、取り消す権利を有するものとする。従業員が重大な労働紀律違反により解雇されたり、また会社側の同意なく辞職、離職したときは、賞与を受け取ることができない」と規定されていた。

2015年7月、会社側は陳氏へ賃金調整通知を送り、年末賞与の額を30000元で調整したことを伝えたが、2015年11月、会社側と陳氏の間に仕事を巡って問題が発生し、双方は話し合いの結果、労働契約を解除することで合意した。

2015年11月30日、陳氏は離職手続きを始めたが、2015年の年末賞与については何ら話し合いが行われていなかった。2015年12月、陳氏は年末賞与を受け取れなかったのは会社側がこれついて話をしなかったからだとして、会社側へ年末賞与の支払いを求めたが、会社側は年末賞与の支払い要件を満たしていないとして、これを拒否した。そこで陳氏は、労働争議仲裁庭へ申し立てを行い、2015年の年末賞与30000元の支払いを求めた。

判決:

会社側へ陳氏に対し2015年の年末賞与27500元を支払うよう命じた。

分析:

本案件は年末報奨金の法的性質と賞与の支払いの根拠が争点となっている。

年末賞与の法的性質について、仲裁庭では以下3つの法令を参照している。

1「『中華人民共和国労働法』貫徹執行に関する若干問題についての意見」(労部発〔1995〕309号)

2「賃金総額組成に関する規定」(国家統計局令〔1990〕1号)

3「『賃金総額組成に関する規定』における具体的範囲の若干解釈」

「労部発〔1995〕309号文件第五十三条には、「『労働法』に規定する『賃金』とは、使用単位が国家関連規定及び労働契約の約定に基づき、通貨により直接支払われる使用単位の労働者への労働報酬を言い、これには一般的に時間給、出来高、賞与、手当及び補助、時間外労働の賃金など特殊な状況下にあって支払われる賃金も含む…」とある。

「賃金総額組成に関する規定」第四条規定では、賃金の構成部分を6つに分類している。
(1)時間給
(2)出来高給
(3)賞与
(4)手当及び補助
(5)時間外労働の賃金
(6)特殊な情况下にあって支払われる賃金

また、同第七条には、賞与とは職工へ労働報酬と臨時増収額を超えて支払われる労働報酬であると規定している。

(1)生産賞与
  (2)節制賞与
  (3)(業績優秀者への)労働賞与
  (4)機関、事業単位の賞与賃金
  (5)その他の賞与

「『賃金総額組成に関する規定』における具体的範囲の若干解釈」第二条には、「生産(業務)賞与は大量生産賞与、品質賞与、安全(無事故)賞与、考課など各経済指標による賞与、早期竣工賞与、早期到達賞与、年末賞与(労働に対する報酬)等がある」とある。

これらの規定から、年末賞与は賞与の一種であり、すなわち賃金であると言える。ゆえに、本案件において建筑公司は年末賞与を労働報酬ではないと主張したが、年末賞与は労働報酬ではないから、仲裁庭はこの主張を合法ではないとした上で、陳氏は年末賞与を受け取れるとしたものである。

現行の労働法においては使用単位が労働者へ賞与を支払わなければならないとする規定はない。年末賞与は、その特性から「規定があれば支払わなければならないが、規定が無ければ支払わなくてよい」ことを原則としている。

本案件において、陳氏は会社側と年末賞与の基準、支払時間、支払要件、賞与を支払わないケース等において、双方の合意の下労働契約中に具体的に定めている。これらには強制規定に違反する約定は無いから、双方はこの合意を履行しなければならない。建筑公司は労働者の考課及び管理を行う者として、陳氏の業務パフォーマンスが労働契約に定める年末賞与の支払いに値するか否かや、他の労働者の年末賞与水準との比較などの状況について証明する責任を負っているのである。

本案件で、建筑公司は仲裁庭へ何ら証拠を提出していない。「中華人民共和国労働争議調整仲裁法」第六条により、建筑公司は証拠未提出による不利な結果を被ることとなったのである。

この他、双方の締結した労働契約においては、勤務期間が年度末に満たなかった者へ年末賞与を支払わないという規定はなく、ただ「従業員が重大な労働紀律違反により解雇されたり、また会社側の同意なく辞職、離職したときは、賞与を受け取ることができない」とだけ規定されている。陳氏は双方による話し合いの一致を見て離職したのだから、これには該当しない。

まとめると、仲裁庭の採決は「中華人民共和国労働契約法」第三十条第一項「使用者は、労働契約及び国家規定に基づき、労働者へ定められたときに労働報酬の全額を支払う」との規定を、双方の約定した基準に基づく陳某への賞与の支払いにそのまま当てはめたものであると言えるだろう。

但し、もし陳氏が2015年の段階で勤続年数が一年に満たなかったときは、仲裁庭は陳氏の実際の勤続月数に併せて年末賞与を算定することになる。