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【判例】 試用期間の従業員との労働契約を解除できる場合とは?(2017年12月28日)

案例:

李さんは大学卒業後、2016年8月1日某ソフトウェア開発会社へ入社し、IOS開発職に就いていた。李さんは入社後、会社側と2年間の労働契約を締結し、試用期間を2ヶ月と定めていた。

2016年9月20日、会社側は李さんを呼び出し、入植後の考課成績が下位に低迷しており、試用期間後に正職員へと登用できないとして、李さんへ協議による労働契約を持ちかけたが、合意には達しなかった。

2016年9月25日、会社側は李さんへ郵送で「労働契約解除通知書」を送付し、同時にこのことを工会へ通知した。

李さんは会社側の決定を不服として労働仲裁を申し立て、違法な労働契約解除に対する損害賠償金の支払いを求めた。

李さんは、自身は会社側の求めた仕事を行っただけで、会社側へ何ら意見を述べたわけではない。正社員への登用要件に考課の成績が下位の場合は登用できないという約款はなく、確かに成績は下位であったが労働契約解除の根拠に乏しい、と主張した。

争点:

会社側の一方的な労働契約解除は合法か?

判決:

仲裁委員会は、会社側へ小李さんに違法な労働契約解除による損害賠償金の支払いを命じた。

解説:

「中華人民共和国労働契約法」などの関連法規によれば、使用者は労働者が職務に堪えないことを証明すれば、試用期間内に労働契約を解除できるとしている。

一旦労働争議は発生してしまうと、使用者は労働契約解除の事実と理由についてこれを証明する責任を負うことになる。本案件において、会社側は「労働契約解除通知書」中に「考課成績が下位であったから」と理由お記しているが、正社員への登用要件にこのような要求は見られなかった。

このことから、この理由による会社側と李さんの試用期間中の労働契約解除は成立せず、また労働契約解除の理由を証明できなかったかったことから、会社側は李さんへ違法な労働契約解除による損害賠償金を支払うこととなったのである。

関連事項:

一部使用単位は、試用期間内であるならばいつでも労働者との労働契約を解除することができ、何ら法的責任を負わなくて良いと考えているようだが、これは誤りである。

合法的な労働契約の解除は、使用者が労働者側に報で定める一方的な労働契約解除が可能な状況にあることを証明し、かつ法に基づいた手続きをとらなければならない。これらはどちらが欠けても無効になる。

現在は、試用期間にある労働者が以下の状態にあるとき、使用者側はその労働契約を解除できるとされている。

1.労働者が試用期間内に登用要件を満たさないことを証明できたとき

登用要件とは、使用単位が試用期間中の労働者との労働契約を解除する際の重要な証拠となるもので、使用者はこれを制定するときは、各職位の性質、業務内容などによってそれぞれ分量や考課基準などを定めなければならない。この基準は合理的でなければならず、法律上の強制規定に反することはできないほか、招聘及び労働者の入社時に書面で告知しなければならない、とされている。

2.労働者に重大な過失があったとき。これは、以下の状況が該当する。

(1)使用者の規定制度に著しく違反したとき
(2) 重大な失敗や業務の私物化などにより、使用者へ著しい損害を与えたとき。
(3)使用者との労働関係がある労働者のために、使用者の業務に著しい支障が起こり、注意勧告をもってしても改善がなされなかったとき
(4)労働者が詐欺、脅迫または「乗人之危(弱みにつけ込む、の意)」により、自身の意思に反して使用者との労働契約を締結または変更したとき
(5)労働者が刑事責任を追われたとき

3.労働者が疾病及び業務の原因によらない負傷を負ったとき

規定の医療期間を過ぎてなお復職できず、また他の職位へ配置転換できないときは、労働契約解除が認められる。

4.労働者が職位に堪えず、教育訓練及び配置転換によっても改善されなかったとき

労働契約の解除において注意しなければならないのは、当該労働者を3,4の理由で労働契約を解除する場合、労働者へ30日前に書面による通知を出すか、1ヶ月分の賃金を支払う、という法で定める手続きを取らなければならない点である。

もちろんいかなる状況であろうと、使用者は労働者との労働契約を解除する際は、労働者へその理由を説明し上で、使用単位及び地区の工会へ通知しなければならない。